西海岸レジェンドKuruptがインタビュー中にブチ切れた理由とは?ケンドリックの「Control」ヴァースと東海岸の反応

 

 

西海岸のリリシスト

と聞いたとき、誰を思い浮かべるだろうか?個人的にはKurupt(クラプト)の名前が思い浮かぶ。彼が所属するTha Dogg Poundはデス・ロウ・レコードからデビューし、西海岸に多大な影響を及ぼしたヒップホップグループである。

Snoop DoggとKuruptが出会ったときのことを語る。デスロウの一員になる条件も

 

そんな彼が影響したラッパーは多い。エミネムも楽曲「Till I Collapse」にてKuruptをトップラッパーだとシャウトアウトしており、Kuruptは「嬉しい気持ちだ」と語っていた。Kuruptからの影響を感じるのは、エミネムだけではない。現在No.1アーティストのケンドリック・ラマーもKuruptの影響を受けている。

そんなケンドリックがKuruptのレファレンスをした曲で、最も有名なのは「Control」であろう。以前「Controlのケンドリックのヴァースとその一週間後に起こった出来事」という記事でも書いたが、彼のこのヴァースはヒップホップ界にて大きな話題となった。そのヴァース内で最も議論になり、NYのラッパーたちの逆鱗に触れたのは下記のラインであろう。

I’m Makaveli’s offspring, I’m the King of New York
King of the Coast; one hand, I juggle ‘em both

俺はマキャベリ(2Pac)の子孫だ。そしてニューヨークの王、コーストの王。片手でどちらもジャグリングする。

この「ニューヨークの王」というラインが東海岸のラッパーたちが怒る原因となったのだが、こちらは実はKuruptのリリックのレファレンスなのである。このラインの前の「I’m important like the Pope, I’m a Muslim on pork(俺は法王のように重要で、豚肉を食べたムスリムだ)」という「とにかく俺は超ヤバイし、バッドである」という内容の言葉遊びも、同様にKuruptの「Get Bizy」からのラインである。

そんなケンドリックがレファレンスしたリリックが原因でNYのラッパーたちが怒った件について、Kuruptがインタビューにてブチ切れているのだ。彼は何故ブチ切れたのだろうか?

 

 

➖ ケンドリックがあなたのKing of New Yorkのラインをレファレンスして、それを知らない人たちが怒ってました。

Kurupt:「King of New York」がなんなのか知ってるか?俺のラインがどのような意味だったかを知っているか?「俺は法王のように重要だ。King of New York、サウス・セントラルからライブで出てくる。俺は豚肉を食ったムスリムだ 」俺がこのラインで伝えたかったことがなんだかわかるか?それは単純に俺が最もヤバくて悪いやつだって言いたかっただけだ。法王レベルで重要で、豚肉を食ったムスリムのような罪人なんだ。俺が最凶だってことを言っていただけだ。そして「King of New York」は映画の名前だ。

 

自分が元々リリックとして書いた「King of New York」というラインがどのような意味なのかを語ったKurupt。他のラインからも分かるように、とにかく自分が「最凶の奴だ」だと言うための比喩表現なのだ。そして「King of New York」もそのための比喩表現だと語る。ここでゲージが0から100に一気に上がったように大声を出し始める。実際に感情レベルで動画を見て欲しい。

 

(ブチ切れながら)「King of New York」は映画の名前で、麻薬王のフランク・ホワイトのことだ。俺は映画のフランク・ホワイトのようにヤバイって言っただけなのに、西海岸の奴がNYの名前を出すと、NYの奴らは勝手にそれをディスだと捉えるんだ!💢 そういうのにウンザリだ!別にお前らNYにたいして問題があるわけじゃないんだよ!「King of New York」は映画なんだよ!お前らの街が欲しいとは思ってねぇんだよ!俺らには俺らのフッドがあるから、名前を出しただけでディスってると思うな!

 

サングラスを外し、拳を手のひらに叩きつけながら怒鳴ったKurupt。YouTubeのコメントでは「なんかドラッグやっているのか?」と多く書かれているが、そこは置いておき、彼がいかにそのフラストレーションを抱えていたかがわかる。Tha Dogg Poundの「New York, New York」という曲も、元々はNYトリビュートのために作った曲であったが、NYでMVを撮影をしているときに銃撃されたことがきっかけで、ディスMVに変わったのだ。そして急に落ち着き、このように語る。

 

(急に落ち着いて)そんな競争なんて存在しないんだよ。俺らはファミリーだろ。アメリカ内の街は皆ファミリーだろ?俺が言ったときには誰も気にしなかったのに、ケンドリックが言ったら急に皆彼を批判したがるんだ。間違えた理由で俺らを西海岸を起こさないでくれ。NYだって愛しているし、テキサスもニューオーリンズもアリゾナもシカゴだって愛してる。でも他の街とは、こういう問題は起きないんだよ。何を言っても、誰かが何かしらイチャモンをつけてくるという状態にウンザリしてるんだよ。

ケンドリックとあのヴァースについて話したんだけど、ケンドリックは自分が証明するべきことを証明したんだ。そしてヤバイことは、ケンドリックがKuruptをリスペクトしているということを知らない人が多かったということだ。

 

みんな自分の街を愛しているから、街同士の競争なんて存在しないと語ったKurupt。そしてケンドリックは証明するべきことを証明したのだ。Kuruptが急に大声を出したときは少し驚いたが、彼が言っていることはIce Cubeの下記の発言にも通じると感じる。

Ice Cubeがヒップホップと地域性について語る。彼が待ちに待っていた時代

Ice Cubeは西海岸を代表するラッパーとしてアメリカ全土に羽ばたいたが、NYでは彼の音楽を拒むラジオステーションなどがあったのだ。NYはヒップホップのメッカとして、ヒップホップ文化をありのままの姿で保持することに非常に敏感な人も多いのだろう。発祥の地にて文化に従事する人のなかには、その発祥の地以外を認めないという人たちもいる。非常にライトな例えをすると、これは「海外で謎の寿司を見かけたときに湧く感情」に近いのかもしれない。しかしKuruptは「メッカのNYも愛しているし、他の場所も愛しているからイチャモンつけないでくれ」と語っているのだ。寿司も謎な形で海を超えることもあるが、それがきっかけで本場の寿司に興味持つ人が増えるとも言える。特にKuruptは子供時代にフィラデルフィアに住んでいた期間も長く、元々LA出身でなかったからこそ感じる「街の多様性」の魅力を知っているのかもしれない。

その地域による多様性が、ヒップホップ文化が長年第一線を走り続けている理由の一つなのかもしれない。そのように考えると、文化と先人が作り上げた形をリスペクトし、本質的に箇所を保持しながらも、自分たちにしかできないオリジナルな旗を掲げることが重要なのかもしれない。

「Control」のケンドリック・ラマーのヴァースとその一週間後に起こった出来事。世代交代の瞬間

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