Flying LotusとAnderson .Paakのインタビューからアーティストとして学べる点を解説/考察

 

Anderson .PaakとFlying Lotus

現代のアーティストのなかで最も「アーティスト」として参考にすべき精神を持っている2人だと感じる。Run the Jewelsも含め、彼らの仕事/音楽にたいする向き合い方は全てのアーティストが研究すべきかもしれない。特にAnderson .Paakは以前Playatunerでも数回取り上げている通り、彼のこれまでの軌跡は映画のように、固唾を呑むような展開であった。

Anderson .Paakの軌跡PT.1 〜ホームレスからスターへ〜

そんな彼にあのThundercatも所属するBrainfeederの代表でもある鬼才、Flying Lotusがインタビューをしているのだが、とても深い内容となっているので、紹介/解説をしたい。他のメディアでもニュースとして取り上げられていたが、学べることが多いインタビューなので是非深く読み入ってほしい内容である。From: Interview Magazine

 

作業環境から学ぶ


アーティストはまずは彼の今までの作業環境から学ぶことができるだろう。彼はShafiq Husaynのアシスタントをやっていたこともあり、落ち着いた環境で作業をしたことがないと言う。

 

PAAK:長い間いつもバタバタで落ち着きがない環境で作業してたから、いつでもどんな環境でも制作ができるんだ。ShafiqのスタジオとかホーミーDumbfoundeadの寝室とか。自分の場所を持っていなかったから「才能があるね」と誰かに認められる度に作業場所を借りて、渡り歩いてたんだ。その代わりに作業を手伝ったりしてて、ずっと落ち着いて制作したことがなかったから、一度も最適な制作環境について考えたこともなかった。

 

実はグラミーノミネートされた「Malibu」もマックと凹んだマイクのみでレコーディングされているのだ。そんな彼はやっと自分の制作環境について考え始めたと語る。

 

PAAK:今年の頭(インタビューが2016年末)にはじめて自分の制作環境ってのをゲットしたんだ。カオスじゃないし、落ち着いて作業できるのが逆になんか変な感じがする。早く作業を終わらせるプレッシャーもないし、心が追い詰められてない状況で作業するのは逆に落ち着かないかもしれない。

自分には何もなくても、自分に与えてもらった少ないリソースからいかにクリエイティブなものを作れるか、ということをずっと楽しんでいたのかもしれない。だからツアーに出てるときでも制作を楽しめるんだ。ただ、俺はどこでも作業できるし、どこでも良いものを書けるよ。

 

彼は目的を達成するために手段や場所を選ばない。彼の前では「良い制作環境がないから良いものが作れない」という考えは言い訳でしか無いのである。最新の機材で良いものをつくるというアーティストももちろんいるが、誰もがそのような環境でスタートできるわけではない。そんな大切になってくるのがAnderson .Paakのような積み重ねたスキルなのだ。

 

リリックの書き方から学ぶ


次の部分ではFlying LotusがAnderson .Paakにリリックの書き方を聞く。この部分もリリックを書くのに手こずっている人は参考になるだろう。

 

FLYLO:リリックを書くプロセスはどんな感じ?常にリリックを書いている派なのか、ビートを聞いたときに書く派なのか

PAAK:俺はその時にインスパイアリングだと感じたことをその場で書く派だね。例えばただの文章や、起こったことを表すフレーズだとしても、俺は単純なことでもウィットに富んだ言い回しをすることが好きだからね。だから結構会話のなかからリリックが出てくる場合もある。

FLYLO:そういうのは覚えておかないといけないからね。

PAAK:そうそう、頭にあるうちに書いておけば、セッションするときにそれをおさらいできるからね。もし俺とセッション入って「めっちゃドープじゃん」ってビート流してくれたらその場で何か思い浮かぶかもしれないけど、今まで書いたものの感覚が参考になってるんだ。それをやっておけば、出だしから自分のイメージしていたリリックを出せるようになる。「こういうシナリオはドープ」とか「このフレーズは面白い」とかを書いておくと作る時の想像力が弾む。

 

やはりライターとしてトップレベルで評価されているアーティストは、その時の自分の感情/状況を描写することに長けていると感じる。OutKastのBig Boiも少年時代は常にノートを持ち歩き、何か思い浮かぶ度にライムを書いていたらしい。MC Jinも言っているように、「ライムブックとはただのノートではなく、自分の居場所である」ということなのかも知れない。Anderson .PaakははじめてDr. Dreに会ったときもいきなりボーカルブースに入れられたらしいが、このような経験もあり、Dr. Dreの期待を乗り越えることができたのである。

 

アーティストとして「自分」であること


アーティストをやっている人には伝わると思うが、「自分」という存在を掴むのは案外難しい。他のアーティストに憧れ、影響されるなかでいかに「自分」を意識せずに「自分」でいるかが最も重要だと感じる。そんな「自分」いることについて彼らはこう語る。

 

FLYLO:(Anderson .Paak)のスピリットが掴めたし、感じることができたよ。今自分でも「視えて」きてるよね?全てのものにポテンシャルがあって、それから全部を得ようとする感覚はとてもリスペクトするよ。長年認識されない状況で、待ち構えてた人だからそのハングリー精神を感じる。

PAAK:まじでそうだよ。本当にそれ。ただその期間にかなり色んなものを観察し、学び、吸収したから、その経験は素晴らしかったよ。俺がまだ駆け出しだった頃は他のアーティストを意識しすぎたり、真似をしたりしてたんだ。いつも「次は◯◯が来る」とか意識してたのが駄目だった。ただ水面下で観察/吸収する長年の経験のおかげで「他人の皮」を被るのではなく、「自分の肌」でいることが身につき、今はそれに凄くしっくりきている。

 

「他人の皮」を被るのではなく、「自分の肌」でいることというフレーズがとても印象的だ。さらにFLYLOはこのように自分の経験も語る。

 

FLYLO:それを理解するまで時間がかかるよな。大体の人がそうやって「他人の皮」を被ることから始めるんだ。それに気がついていない人は案外多い。そうやってしばらく「他のアーティスト」みたいなサウンドをやって、徐々に自分から溢れる特徴に気がつくんだ。それに気がついたらそれにぶっ込むだけさ。でもAnderson .Paakは良いヴァイブスを持ってるよ。ATCQやScHoolboy Qなどが君のような人をリスペクトしてるのはとてもクールだね。

PAAK:まじで驚きだよな。どんなアーティストになりたいか?って聞かれる度に「どこの誰とのコラボでも、スタジオに入って自分を出すことができるアーティスト」って考えてたのを思い出すよ。天井も枠なんてないし、自由なんだ。トム・ヨークやEarl Sweatshirtのように、誰とコラボしても自分特有のユニークなサウンドを出せるような人だ。

 

アーティストとして「自分」でいることの大切さを語った2人。「自分はこうだ!」という枠にハマるわけではなく、この2人のように「自分から溢れる特徴」を自然に、自由に出すことができるアーティストが最も強いと感じる。意識をして「差別化」などをするのではなく、「自然な個性」が最も重要視される時代になっているのだろう。Dr. Dreが言う「Anderson .Paakの声から滲む“痛み”が気に入った」とはそのようなことなのであろう。

 

2017年の抱負


FLYLO: 最後に2017年にやりたいことは?

PAAK:そうだな。FLYLOの家で、一緒に音楽作ってVRのアダルトビデオをチェックして、後はあのプールに入ることかな〜

FLYLO: (笑)そうだな。それではまた話そう。

最後はAnderson .Paakのお得意のおちゃらけ感を出し、インタビューが終わった。Flying Lotusの家にVRのアダルトビデオが本当にあるかは置いておき、とても面白いインタビューだと感じる。特にアーティストにとっては、この2人が喋っている内容がいかに真実かが理解できるだろう。「へぇFlying LotusがAnderson .Paakをインタビューしたんだ」で終わらず、このアーティストとしてのマスタリーを極めている2人の「アーティスト人生」「経験」を前に進む糧にしてほしいと感じる。

Flying LotusはStones Throwでインターンをしていた。全ては「サイクル」になっていると感じる話

ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼Playatunerの代表。umber session tribeのMCとしても活動をしている。

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