「Master Pが俺の人生を救った」スヌープ・ドッグが語るMaster Pに教わった「ビジネス」

 

 

レーベルとアーティストの関係

については今まで何度もPlayatunerでは取り上げてきた。世にはTDEのように素晴らしいレーベルもあるが、特に「レーベルとアーティストの関係」がネガティブな方向に進んだ事例はメディアでは注目される。

TDEの代表TOP DAWGとケンドリック・ラマーが語る。レーベルの姿勢やアーティストとの関係性について。

そんななか、90年代のレーベルVSアーティストビーフと言ったら、西海岸で最もインパクトのあったデスロウを思い浮かべるだろう。Dr. DreやSnoop DoggはCEOシュグ・ナイトと戦い、やっと自由を得たアーティストであった。結果的にシュグ・ナイトとデスロウは衰退へと向かったわけであるが、スヌープがデスロウを抜けるために動いた人物がニューオーリンズのヒップホップビジネスマンMaster Pであった。彼はデスロウを抜けたいが、なかなか抜けることができないスヌープを自身のNo Limit Recordsに移籍させ、彼に新たなアーティスト人生を与えたのだ。

#CRWNシリーズにて、スヌープは当時の思い出について語っているのだが、彼は「Master Pが俺の人生を救った」と語っている。当時業界内では、シュグ・ナイトは恐れられていたため、スヌープを手助けするものがいなかったのである。2Pacが亡くなったあと、スヌープはデスロウから抜けたいという想い強まっていた。怒りを全面的に出していたデスロウとシュグ・ナイトと一緒にいたら、次は自分の身が危ないと感じたのだろう。そんなとき彼の前に現れたのがMaster Pであった。

スヌープはこのように語っている。

 

Snoop:そこで立ち上がったのがMaster Pであった。彼は「俺はシュグ・ナイトと交渉する。スヌープがどうしたいかを教えてくれ」と言った。だから俺は自分にとって重要なことを彼に伝えた。そして彼は皆が恐れていたシュグ・ナイトに自ら交渉しにいった。

 

Master Pはスヌープを手助けしたいという気持ちと、当時のサウスの王であった自分のレーベルにスヌープを迎えたら相当話題になるという観点でシュグ・ナイトからスヌープを解放する役を自ら務めたのである。Jay-ZがLil Wayneのことを手助けしたがっているのと同じように、素晴らしいアーティストがよろしくない状況にハマってしまっていたら手助けするのがMaster PやJay-Zのようなトップビジネスマンの役割なのだろう。さらにMaster Pは、交渉するだけでなく、生き残る知識をスヌープに与えたのだ。

 

Snoop:彼は俺にお金を渡してくれ、家も車も2つ買ってくれた。しかも全部俺名義で買ってくれたんだ。これは俺がはじめて自分名義でゲットしたものだった。それまでは、俺のものは全てシュグ・ナイト名義だった。そして家族をニューオーリンズにつれてきた。彼は俺に落ち着いて、腰を据えてビジネスをやる方法を教えてくれたんだ。

彼は自分のビジネスを自分でコントロールすることを教えてくれた。全員に何かを与え、それに対しての責任を持たせる。単に物をあげるのではなく、与えるべきものを与える。与えられたものをは自分名義になるから、それをゲットするのも、維持するのも、失うのも自分の責任なんだ。どのようにしたらゲットできるか、そしてどのようにしたら失うのか、それを教えてくれた。

 

Master Pはスヌープをシュグ・ナイトの手から解放しただけではなく、色々と失った彼に多くの物を与え、それを維持するための「ビジネス」を教えてくれたのだ。ある意味新人研修の大規模版とも言えるかもしれない。ゲットするのも、それを維持するのも自分の責任という立場になってはじめてスヌープは腰を据えて自分の責任について考えるようになったのかも知れない。これは彼の人生においてかなり大きなきっかけになったようで、Dre以外のデスロウメンバーとの差がついた期間でもあったようにも感じる。

Dreもケンドリックの「Wesley’s Theory」にて同じようなことを言っている。Dreの家を見て広さに驚いたケンドリックとTop Dawgに対して、彼は「これをゲットするのは簡単なんだ。難しいのはこれを維持することだ」と語っている。一度はアーティストとして成功したが、そこから知名度もコンシステンシーも落ちていくアーティストは多い。しかしスヌープはMaster Pに生き残る術を教えてもらったから、今でもトップビジネスマンとして第一線で活躍できているのだろう。だから彼は今では逆に若手に頻繁にアドバイスをしている。

若手にアドバイスをするアンクル・スヌープにとって、アンクルとなった存在は?Snoop Doggの若手へのアドバイス

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