レーベルとアーティストの金銭トラブルが目立つなか、TDEは他とは一味違う。

 

レーベルとアーティストのいざこざ

特に金銭トラブルは今に始まったことではない。レーベルが金銭的サポートをし、楽曲の権利を持つという契約ではトラブルが起きるのは当たり前だと感じる。雇用のような形式では、いくらかっこいい音楽を作れたとしても、要するに最初にお金をもっている人が一番特をする形になっている。もちろんJay Zのように自分のレーベルにて、カタログを自分でコントロールできる形にしている人もいるが、そこまでのビジネススキルを発揮できる人は少ないだろう。

少し思い浮かべてみるだけで複数の例が考えられる。オールドスクールからはIce CubeやDr. DreとRuthless Recordsが有名であろう。Ruthless Records内ではもちろん会社のトップであるEazy-Eとジェリー・ヘラーが美味しい思いをし、他のメンバーは不当に扱われていたと言われている。近年ではバードマンとリル・ウェインの間で似たようなトラブルがある。HopsinとFunk Volumeも金銭トラブルやマネージメント上のトラブルが原因で解散している。

その搾取する側とアートをつくる側という構図と一味ちがうレーベルがある。それがケンドリック・ラマー、アブ・ソウル、スクールボーイQなどが所属しているTOP DAWG Entertainment(トップ・ドーグエンターテイメント 通称:TDE)である。

 

ケンドリック・ラマー “Wesley’s Theory”


To Pimp A Butterflyの1曲目に収録されている「Wesley’s Theory」にてケンドリックは「お金の教育がいかに重要か」ということを語っている。「貧困地域で育った人たちはいざお金を手にしたときに、正しい使い方がわからず、無計画で使ってしまい、税金が支払えずに捕まってしまったりする」という内容になっている。金銭的に自立することの大切さを理解しており、そのような金銭トラブルに巻き込まれないようにしているのが伝わってくる。

そんなケンドリックに補足するようにアブ・ソウルが楽曲“D.R.U.G.S.”の解説にてTDEについて少し紹介している。

 

稼いだ大金をどのようにして扱うかってことを俺たちに教えてくれる人なんていなかった。そういうことは学校のクラスなんかじゃ習わないんだ。

幸いTDEは家族のような構成だから、彼らは俺が経済的に安定できるようにアドバイスとかをくれるんだ。

 

TDEはアーティストにたいしてどのように仕事にフォーカスし、どのようにして経済的安定を得るかをきちんと教えているようだ。有名になり、見栄を張るために高級車や豪邸を買って後ほど焦るラッパーとは違い、TDEの全員が音楽にフォーカスし、クオリティの高い作品を出し続けることができるのはこのような体制がしっかりできているのだと感じる。「これはレーベルの仕事ではない」と言う人もいるかもしれないが、アーティストがロングスパンでしっかり制作をできるような環境をつくるのはレーベルの大切な仕事だと感じる。以前アブ・ソウルとTDE代表はツイッターで言い争っていたりしたが、それでもアブ・ソウルはTDEにたいしてファミリーとしてリスペクトを込めていることがわかる。

自分たちの財布を満足させるために、アーティストから搾取するようなレーベルも多いなか、最終的にはアーティストと「パートナー」として動けるレーベルが生き残るのも歴史が証明しているだろう。