業界の闇?常識?Desiignerが$200で買った「Panda」のビートとプロデューサーとの金銭トラブル

 

 

 

ヒップホップドリーム

として以前Desiignerの「Panda」のビートについて紹介したのを覚えている方はいるだろうか?Desiignerの超モンスター大ヒット曲「Panda」のビートは、元々彼がイギリスの青年からネットで買ったものであった。超偶然という意味もあり、Playatunerのヒップホップドリームシリーズで紹介をした。詳しくは下記を読んでいただきたい。

青年がネットで$200で販売したビートが2年後にDesiignerの「Panda」になった夢のような話し

 

記事では、Menaceは一役プロデューサーとして、知られるようになったという風に締めたが、実は彼のストーリーには続きがあった。米DJBoothが彼にインタビューをした際、新事実が浮かび上がってきたのである。そのインタビューにて印象的だった内容を紹介したい。これを読んで「若者から搾取する業界」と感じるのか「知らなかった彼が悪い」と感じるのか「名は広まったからこれから頑張ればいいじゃん!」と感じるのか「よくある話じゃん」と感じるのかは、あなた次第である。

 

Menace:アーティストに直接ビートを渡すわけではなく、仲介をする人を知らないといけないんだ。彼らのチームメンバーと仲良くなり、やっとヒットをつくることができる。もし自分にもっとキャリアがあったら、全てを手に入れることができただろう。俺は何も知らなかったため、またスタートラインに戻った感じだよ。また一から繋がりを作ったりしている。

 

彼は「もっと経験があったら、得るべきものを全て得ることができた」と語る。ということは得るべきものを得ることができなかったのだろうか?彼は実際にあのモンスターヒットの作曲者として、得るべき金額を得ることができたのだろうか?しかもカニエ・ウェストも「The Life of Pablo」で使用しているので、彼の得るべきチェックはかなり大きな額であろう。さらに彼はこのように語る。

 

Menace:どうやらFutureがFuck Up Some Commasに似ているということで、Pandaに対して著作権侵害を申し立てているらしい。しかもそれだけではなく、カニエ・ウェストのプロデューサーのMike Deanも、特に何もしてないのに申し立てをしているから、カニエとDesiignerからお金が入るのが非常に遅れている。恐らく来年まで入らないだろう。誰かが申し立てをすると、全ての交渉がストップするから、時間がかかるんだ。今は交渉している最中だよ。

むしろカニエは誰にもまだお金を払ってないんじゃないかな?

 

そもそもFutureのFuck Up Some Commasに似ているとは思えないが、そもそもFutureの代理人はこれは事実ではないと語っており、何かの勘違いだと思われる。しかし何かしらスケジュールを遅らせる要因はあったのだろう。まだ彼にはカニエからの使用料が払われていないのである。

さらにMike Deanはこのインタビュー得て、XXLにこのような文章を送っている。

 

Mike Dean:こいつはビートのステムを失くしたんだ。オリジナルにはなんかの映画からのサンプルが入っていたが、それを取り除くために俺がステムを作り直したんだ。俺はビートを全部作り直すつもりだったんだけど、作り直さなくても済む方法を思いついたから、そのままにしたんだ。メジャーレーベルはクリアされていないサンプルを了承しないんだよ。俺のおかげでDef Jamからリリースできたんだから感謝しろ。家電リペアの仕事をしてたなら、ファイルの管理ぐらいちゃんとやれよ。

俺の名前を出すなら正しい情報で語れよ。俺はこんな馬鹿みたいなことで争わないから、この申し立てを棄却したんだよ。せいぜい得た金をエンジョイして、俺のおかげで金をゲットできたことに感謝するんだな。俺の名前を言うときはリスペクトを込めろ。

俺があのサンプルを取り除いたことに感謝するんだな若造が。ポケットのなかから俺に少し分けるべきだ。まぁ「Panda」の金なんてなくても俺は充分稼いでるが。そしてあの曲を紹介してくれたA&Rに感謝するんだな。

 

実際に原文でもこのぐらいのキツイ口調で語っているMike Dean。彼の言っていることはごもっともである。確かにもし、そのサンプルが存在したとしたら、Mike Deanにも手柄がある。しかし感謝するのは相互的なものではないか?とも感じる。もちろん誤った情報でMike Deanに失礼なことを言ってしまったMenaceは、謝罪するべきであるが、「Panda」はMenaceのプロとしての初仕事であり、何もわからないまま物事が進んでしまったのである。さらにそのシステムもわからずに「なんかネットで公開してたビートがいきなりカニエ・ウェストに使用されて、大ヒットになってしまった…」という状態であったら、入るべきお金が支払われなかったらそれは不安にもなるだろう。むしろ今の状態だとカニエ・ウェストからの使用料が入るかもわからないので、何も知らない若者から搾取しているように見えてしまってもしょうがないことだ。

しかしMenaceはどうやらちゃんと行動ができる青年なようだ。彼はPandaが大ヒットをした後、自分でパブリッシング(出版)会社と契約し、お金を回収している。その証拠として彼は地元マンチェスターから少し離れた場所に家を購入したらしい。さらに彼はこのように語る。

 

Menace:数週間前、アメリカでScHoolboy Qとスタジオにいたんだ。飛行機から降りて、真っ先にインタースコープ・レコードに行ったら、Qが待ってた。そして俺は彼にノートPCからビートを聞かせて、彼はそのうちの2曲をアルバムに使用するかもと言って予約をした。彼が使用してくれることを願うよ。これが決まったらまたキャリアをスタートさせることができる。

Drakeの右腕であるOliver El-Khatibに送ったビートが気に入られて、これを他の人には送らないでくれと言われた。嬉しいけど、最悪なことでもある。使用されるかわからない状態で、そのアーティストのためにそのビートを予約状態にしないといけないんだ。他の人にも送れないし、もし使用されなかったと思うと不安だ。

 

このように、まだ得るべきお金は支払われいないが、徐々にキャリアを積み上げようとしているのだ。独自で動き、問題を解決しようとしている彼が、今後トッププロデューサーになれることを願う。彼のこの事例は、今後音楽業界に参入したいと感じている人にとって参考になるだろう。もちろん日本とアメリカだと業界の体質は違うが、「自分の不利にならないように、慎重にかつ大胆に行動をすることが重要」ことを彼の事例から学ぶことができるだろう。誰もが「自分が有利なポジションに」と考えている「業界」のなかで、アーティストが不利な立場になってはいけないのだ。アーティストが有利である素晴らしいレーベルについては下記がオススメである。

TDEの代表TOP DAWGとケンドリック・ラマーが語る。レーベルの姿勢やアーティストとの関係性について。

いいね!して、ちょっと「濃い」
ヒップホップ記事をチェック!