Staff Blog:DiddyがNFLチームの買収を希望しているという報道と、それを報じたスポーツニュース番組に対して感じたこと

 

 

「夢を追いかけろ」

世の中にはそのようなことを言う人もいるだろう。しかし実際の「世間の目」はどうだろうか?Playatunerでは世間の目を気にせずに活動したことによって、自分の理想を掴み取ったアーティストたちを多く紹介してきた。Run the Jewelsの「他人の目なんてFuckだ」という記事から、Tyler, the Creatorの「”失敗するから“って言ってくる人たちを人生から排除している」という台詞まで、ヒップホップのイノベーターたちを紹介してきた。

Tyler, the Creatorが「創造」し続けるモチベーションについて語る。「本当に信じていればどんなことだって可能だ」

 

上記のように「世間の目なんてFuckだ」というメンタリティで活動できればいいが、実際には世の中はそのような人ばかりではない。そのような内容を絡めて、今回はDiddyとNFLとニュース番組の関係を紹介したい。

Diddyがアメリカンフットボールのチームであるノースカロライナ・パンサーズを買収しようとしているというニュースはご存知だろうか?こちらは今ホットなニュースとして様々なところで取り上げられている。こちらの経緯としては、かなり話題になっていたので知っている方も多いと思うが、NFLスターのコリン・キャパニックが人種差別と、警察の黒人に対する不当な扱いに対してプロテストしたことからはじまった。アメリカ国歌の斉唱中に両腕を組んでひざまずき、人種の不平等と、警察の暴力に対して抗議を続けたのだ。こちらの行為は賞賛の声も集めたが、同時に「国と国旗をディスリスペクトしている」という批判も非常に多かった。その結果、彼は2017年シーズンの契約更新ができず、現在はフリーエージェントとして活動している。詳しくは外部サイトのこちらの記事でまとまっています

私は個人的にNFLやスポーツの世界について超疎いので、実際どのような構図になっている業界なのかは定かではないが、この件と「黒人チームオーナーがいない」ということを受けて、Diddyがパンサーズの買収をしようと投資家を集めているのだ。NFLビジネスに多様性をもたらすことを目的に、自分が最高のチームを作るとインスタグラムにて語った。

ブレイキング・ニュースだ。ノースカロライナ・パンサーズが新しいオーナーを探している。ノースカロライナの人たち、俺は最高のオーナーになるし、すぐにコリン・キャパニックの件について声明を出す。そして彼をクオーターバックとして契約する。そして最高のハーフタイムショーを作るし、最高の音楽のセレクションもする。スーパーボウルを次々に優勝する。

 

彼はこのようにインスタグラムにて、パンサーズのオーナーになって「最高のチーム」を作ると語った。これを受けてヒップホップコミュニティや、コリン・キャパニックのプロテストに賛同していた人たちは、彼を応援する声を挙げている。しかし逆にサンフランシスコのKRON 4というスポーツニュース番組のHenry WoofordとDarya Folsomは彼を馬鹿にしたような口調でこのように語った。

Henry Wooford:これを真面目に受け取るなんて無理でしょ(笑)だって彼はウィード吸って40 ozを飲んでハイになってるみたいな顔してるじゃん(笑)真面目に受け取ることなんてできないよ!

Darya Folsom:今Diddyって何をやってるの?彼は今もなんか凄いことやってるの?

Henry:Diddyは酒のんでスモークしているんだよ!このビデオを見れば彼が別の世界にイッていることが伝わってくる(笑)自分の得意分野にステイしないと駄目だよ。

 

コリン・キャパニックのプロテストについて賛同か反対かは、スポーツに対する価値観や政治観によって様々な意見が出てくるだろう。しかしこの記事では他のNFLやコリン・キャパニックの記事とは全く別の切り口から語りたい。私は実際にこのニュース番組のシーンの全編を見たわけではないので、なんとも言えないのだが、自分の感情に素直になるとしたら、このシーンに憤りを覚えた。それはDiddyのようなヒップホップ界のレジェンドが馬鹿にされたからではない。何かを改善するために、自分の夢やヴィジョンを語っている人を、明らかに馬鹿にするように笑ったからである。初っ端から相手にしていないように、真面目に人のポテンシャルを考えもせずに否定し、レイシャル・ステレオタイプ丸出しで幼稚なジョークで相手の心にマウントでもとったかのような態度が気になった。

実際にはDiddyは気にしていないだろう。Run the Jewelsが気にしていないように、Tyler, the Creatorが気にしていないように、ScHoolboy Qが気にしていないように、既に自分の軸が明確に見えている大人はこのような声を無視して前に進むことができる。しかしこのような公の場では、まだ自分の軸がエスタブリッシュされていない子供たちも見ているだろう。人が掲げる大きなヴィジョンを鼻で笑って否定している大人を見た子供たちは何を思うのだろうか。何も思わない子供もいるかもしれないが、潜在的に「将来の夢を言ったら馬鹿にされる」や「自分がやりたいことをやるのは恥ずかしい」と思ってしまうのではないだろうか。

実際に「世間の目」と言うように、社会はそのように動いている。マイナーな分野で「これを本気でやりたい!」と思ったことを人に話してみると否定されたり、馬鹿にされたりすることもある。そんななか、本田圭佑選手やイチロー選手やスティーブ・ジョブズのように、上記のアーティストのようなメンタリティを持った子供であれば問題ないであろう。しかしそのまま「恥ずかしいこと」だと思い込み、潜在的に自尊心を失ったり、自信を喪失する子供ももちろんいるだろう。そして風潮として「やりたいことをやる=無理なこと」という構図ができあがるのだ。その「ヴィジョンのために本気になる=馬鹿にされる」という風潮が連鎖して、「世間の目」になっているのではないだろうか?そのような否定を基準とした「目」の下で育ったことにより「自分には何もできない」と思い込んで無気力に生きる人もいるのだろう。

少し頭に血が上って熱くなってしまったが、子供たちが生き生きと成長して、活動的になるのを望んでいるのであれば、まずは自分たちの行動を見直さないといけないのかもしれない。正直キャパニック/Diddy/NFLの本筋からはだいぶ外れてしまったが、自分が正しいと思ったことにたいして行動するDiddyを応援したいと思う。彼が本気じゃなかったとしても、失敗したとしても、その「何かを改善するために動こうとした精神」というグッドインテンションは賞賛に値するものだと個人的には感じている。しかしウォッカの会社を含めた数多くの会社を成功させ、最も稼いでいるエンターテイナー/ビジネスマンであるDiddyにたいして上記のコメントは非常に無知である。

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