LAを代表する韓国人ラッパー「Dumbfoundead」が語る。現代のアメリカにて移民であることとアジア人ラッパーであることについて

 

 

移民とヒップホップ

というテーマの記事は以前Playatunerにて紹介した。米国という国は数多くの移民によって形成されているが、音楽業界でも活躍している移民は多い。しかしアジア人系の移民として音楽業界で成功している人は非常に少ないようにも思える。近年では88Risingの活躍もあり、Rich BrianやHigher Brothersがアメリカのプラットフォームでも爆発的に人気になっているが、長いキャリアを培っているという意味ではDumbfoundeadがパイオニアと言っても過言ではないだろう。

何故このラッパーのリリックは刺さるのだろうか?【LAを代表する韓国人ラッパーDumbfoundead編】

 

以前はアジア人というマイノリティとしてLAに活動する彼、そしてコリアタウンという最大の地元をレペゼンしているが、自分が周りと違うことを受け止めて前に進む彼のリリックを紹介した。そんな彼がこの度「Rocket Man EP」をリリースした。「Rocket Man」と言うとドナルド・トランプが北朝鮮の金正恩につけたあだ名であるが、彼はどのような心境でこのEPを作ったのだろうか?DFDがこのアルバムを作る上で、この移民に対しての緊張状態が続いている時代に移民として感じたことをDJBoothにて語っているので紹介したい。Via DJBooth

 

今回の作品はある意味政治的であり、ある意味非常にパーソナルな作品となっている。確かに時代のサウンドトラックになるようなリリックが多く含まれているが、過去の作品に比べてリリカルというよりは耳障りの良い物になっている。「政治的なヒップホップ」というと、どうしても音楽から得るヴァイブスというよりはリリカルな部分に集中してしまうが、この作品はどちらかと言うと音と楽しむタイプのヴァイブスが全面的にでている。それにはとある理由があった。「Rocket Manはトランプが金正恩に与えたニックネームだが、政治的な観点でEPを作ることを元々考えていたのか?」という質問にたいしてこのように語った。

 

DFD:俺は単純に笑えるものが好きな面もあるんだ。最初にロケットマンというフレーズを聞いたとき、深く考えずにクソ笑えると感じた。こんなシリアスで危ない状況なのに、トランプはすぐにこんなニックネームを編み出した。こんな情勢のなかで、指一本でボタンを押して世界を破壊できるパワーと持った人間がいる。そんななかでこのジョークを言っているんだ。そのことが頭から離れなかった。

音楽も少し共通している部分があると思っていて、どんなシリアスでもダークな内容でも、何かを語るときには俺ら独自の方法がある。ニュース記事を読むような感じで音楽を聞きたくないという個人的な観点もあるんだ。その時代のエネルギーを捕らえたいんだ。リリックで全部語っているからと言って、それはその時代のエネルギーを表現できているというわけではない。後は自分の実態以上に頭が良いように聞こえたくないんだ。俺は自分と同じようなレベルの人たちに対して語りたいというのもある。今の事態から自動的に得る感情を表現したかった。

 

この世界の情勢のなかで、ロケットマンというあだ名を思いついて発信したトランプに対して皮肉を混ぜつつ、「笑える」と語った。彼はバトルラッパーとしてキャリアをスタートさせたときにも、笑える皮肉的なパンチラインで人気を博した。このような人物が自分の国の大統領であることにウンザリしている様子も伺える。この状況でも、皮肉を使って「面白い」を表現し、時代のエネルギーを表現したいのだろう。彼のインタビュー中のこの言葉が上手く表しているようにも思える。

多くの移民ストーリーは大体”灰から這い上がってきた”という内容だったりする。でも俺はターンアップしている、アメリカンな悪癖をしながらなんとか生き抜いている無知で不作法な移民を見せたかったんだ

非常にリアルな感情であり、作品にも現れていると感じる。移民のストーリーというと、迫害などの内容が多いが、そのなかでも「アメリカン」として生きつつも、現代の社会情勢から生まれる微妙な心の不穏/心境への悪影響を表現しているように受け取ることができる。それは彼のアイデンティティの確認からくるものでもあろう。

 

DFD:近年自分の居場所がどこなのかを理解するために、韓国で活動していたんだ。アメリカのアンチ移民な情勢もあり、母国に旅たったが、「自分の国」とされる場所でも自分は「外人」であるということに気がついた。その時にやっと自分が「韓国人」というよりは「アメリカン」であることに気がついた。すんなり受け入れられると思ってたけど。

このプロジェクトでは韓国人として、アメリカで感じたことを表現しているんだ。それはたまに「悪役」として見られることでもある。テレビをつけると北朝鮮の話題がいつもやっていて、一般的にそれを「コリア」として括る人もいる。

 

この情勢により、「韓国人」としてのアイデンティティを確かめようと思ったが、実際には自分がいかにアメリカンであるかを理解したDFD。これには私を含めた多くの人が共感するであろう。「自分の国に帰れ」と言われたとしても、その国がどこなのか、自分がどこに属しているのかがわからない状態になるのだ。私はこれを勝手に「フィジカル・マイノリティ」と「メンタル・マイノリティ」と呼んでいる。自分の国籍/ドミナント人種と違う場所で育った場合、育った場所では見た目的にフィジカル・マイノリティになるが、「自国」とされる場所では考え方的にメンタル・マイノリティになる場合が多い。さらに彼はこのように語る。

 

DFD:現代に生きる「移民」としては、凄く変な感情がある。何故かというと俺は韓国人とメキシコ人が半々というLAコリアタウンで育っているから、小さい頃は移民としてコミュニティからの心理的影響やプレッシャーを感じなかった。俺は育った環境のおかげで「コリアン・アメリカン」として自信を持てるようになった。でもこの10年で全国をツアーするなかで、「自分はコミュニティの部外者だ」と感じているアジア人の子供たちを多く見てきた。俺がライブをすると「こんなにステージで自信を持って最高のパフォーマンスをするアジア人初めて見た!ありがとう!」って言われたりするんだ。俺はコリアン・アメリカンとして、コミュニティ内のマイノリティではなかったから彼らとは違う感覚だったんだ。

だからこそ、ニュースをつける度に違和感を感じるんだ。大統領がアンチ移民マザーファッカーたち集団みたいなのを作って、少なくとも実際にアンチ移民を掲げて団結しているやつらがいる。(俺が育ったコミュニティにはいなかったけど)本当はずっとこういう人たちがたくさんいたんだって気付かされる。

 

彼が何故現代に違和感を感じているかというと、育ったコミュニティでは彼が決してマイノリティではなかったからである。コリアタウンにてアメリカンとして育った彼は、自分がアメリカというコミュニティに居場所を感じていたのだが、一歩外に出るとそれは違ったのだ。これは以前紹介した彼のTownという曲にも共通する内容であろう。実際には社会的には「移民」であることには変わりなく、それを「アメリカンな悪癖をしながらなんとか生き抜いている無知で不作法な移民」という「自分のリアルな姿」として今作品で表現しているのだろう。そんな彼は今のエンターテイメント業界についてこのように語る。

 

DFD:ツアーをしているうちに、「声なき人」がどれだけいるかを知った。中西部とかに行くと、街の唯一のアジア人の子供とかにあったりするんだけど、そのような子たちにはロールモデルになるヒーローがいないんだ。もちろんテレビも映画も音楽も徐々に変わってきている。徐々に色んな人たちがエンターテイメント業界で活躍するようになっている。その変化は見えてきているけど、少し前まではPOCがエンタメ業界で活躍できない現実があった。だからテレビとかでそういう人たちが活躍しているのを見ると嬉しいんだ。

俺はLAのヒップホップシーンで育った。Flying LotusがまだStones Throwでインターンしていたときだったし、TOKiMONSTAがクラブでDJをしているときだった。当時は皆一緒にライブとかしていたから、今彼らが超活躍しているのを見ると素晴らしい気持ちになるよ。

全てのアーティストにとって、作品が「音楽としてのヒップホップ」より大きくなる瞬間がある。作った作品が多くの人達にリーチして、その瞬間に自分がやっていることが単に「上手いラップ」をすることより重要だと気がつく。俺はその瞬間を感じたとき、自分のルーツやカルチャーから逃げ出すことはやめた。昔アジア人であることを一切口にしたくない時期があったんだけど、自分が何者なのかに気がついた。全員が俺を気に入るわけではないし、実際には人生の大きなモーメントには「見た目」が大きく関わってくるんだ。

 

音楽としてのヒップホップ」より大きくなる瞬間が現れると語ったDFD。むしろそれがファンクやヒップホップなどのブラックミュージックに込められたパワーなのだと感じる。実際に彼は上記に貼った「Every Last Drop」のなかでも、「俺はいつの間にか世代の声となっていた。最初は有名になって女にモテればいいと思ってた」と語っており、彼の1stアルバム「Fun With Dumb」から考えても、彼の思考が非常に変わったことが伝わってくる。彼のラップ的にはむしろ2ndアルバムや3rdアルバムのほうがコンシャスなものが多かったとうイメージがあるが、近年のDFDはキャッチーなサウンドに変換しつつも伝える対象と自分が伝えたいメッセージが定まってきたようにも感じる。

LAを代表するアジア人ラッパーとして、彼は私にとっても非常に大きな存在であり、気が付かずとも彼は世代を代表する声になっていたのだろう。

差別問題やテロリズムにたいして独自の目線で語るOddiseeの「You Grew Up」のメッセージは必見

Writer:渡邉航光(Kaz Skellington)
カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼、Steezy, incの代表。FUJI ROCK 2015に出演したumber session tribeのMCとしても活動をしている。

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