ウィル・スミスの息子のジェイデン・スミス。デビューアルバムをリリースした彼が語る「アイコニックな存在」の意味とは?

 

 

二世タレント

というと誰を思い浮かべるだろうか?日本ではテレビをつけると多くの二世タレントが活躍しているが、そのような存在が活躍するのは海外でも同じだ。ヒップホップ界だと最近だとBig Punの息子であるChris Riversがメッセージフルなラップで活躍している。しかし「親が有名なラッパーだから」と言ってラップゲームに認められるわけではない。むしろ親のネームバリューが大きすぎて、必要以上にヘイトされる場合も多いだろう。

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そんな「親のネームバリュー」によって必要以上に低い評価になってしまっているアーティストがウィル・スミスの息子Jaden Smith(ジェイデン・スミス)であると感じる。彼が人々の前にでてきたときは、まだ子供だったので、もちろん過去にはあまり興味深くないことをやっていたこともあるだろう。しかし彼は多くのヘイトを受けながらも非常に成長したようにも思える。特に彼のデビュー・アルバム「SYRE」は予想していた以上にクオリティの高いアルバムであり、一皮むけた彼の姿を見ることができる。

 

そんな彼のアルバムのなかで、5thシングルとしてリリースされた楽曲が「Icon」である。この曲では「I’m just an icon living(俺は生きてるただのアイコンだ)」と語っており、自分がアイコニックな存在であることを示している。この楽曲について、彼はRapGeniusのインタビューにてこのように語っている。

 

 

Jaden:俺は今まで「アイコニック」なことをした経験はある。ルイヴィトンの広告でスカートを履いたり、自分のビデオで涙を見せたりしたことはある。これらは「誰もやらない」という意味でアイコニックであったと言える。実際には自分のことを「アイコン」と呼ぶのは、あまりにも謙虚じゃないから、そこまで乗り気じゃなかった。まぁでもこれはラップゲームだからこういう曲を作るしかなかった。

 

「誰もやらない」ということが「アイコニックな存在」になるために重要だと語るジェイデン。確かに彼は今まで多くの批判を受けてきたが、ウィル・スミスの息子であり、小さい頃からハリウッドで活躍し、ラップもし、スカートも履くという要素を考えると、ある意味「唯一無二」であろう。しかし彼の言う「アイコニック」な存在には、他の要素もある。

 

Jaden:「アイコン」であるということは、とんでもない数のヘイトや悪口を受けることだ。非常に多くの人に「こいつはクソ」と言われても、それをテイクできる心意気があるのが「アイコニック」な存在なんだ。なんでそんなヘイトを受けるかと言ったら、それは他の人が絶対にやらないことをやるからなんだ。例えばジミ・ヘンドリックスがギターに火をつけたのとかも、当時誰もやっていなかったし、理解できないことだった。でも誰もやってなかったから、「ギターに火をつける」と言ったらジミ・ヘンドリックスという「アイコニック」なことになったんだ。

他にアイコニックな人と言ったら、イーロン・マスクが思い浮かぶかな。あとはカニエ・ウェストとかFrank Ocean、Kid Cudi、ケンドリック・ラマーを思い浮かべる。後は俺の妹と親父かな。

 

アイコンであるためには、数多くのヘイトや悪口をテイクできる心を持っている必要があると語る。実際にアイコニックな人物は、常に人々の批判にさらされる。その「ヘイト」は「誰もやっていないこと」をやっているからこそ生まれるものなのである。全員が理解できることをやっていたら、アイコニックな存在にはなれない。それはAndre 3000が身をもって証明してくれたようにも感じる。「ギターを燃やす」という行為も今では誰もがジミ・ヘンドリックスを思い浮かべるので、なんとなく見たことがある光景かもしれないが、当時はその前例がなかった。そのため、ジミ・ヘンドリックスがギターを燃やしたこと、さらには右利きギターを左利きで弾くという行為も、彼がアイコニックな存在であったからこそ実行した「世間には理解できないこと」であろう。イーロン・マスクもテスラ・モーターズ、SpaceX、Paypalなどを創業した奇想天外な起業家である。

そう考えたら「アイコニック」であるということは「◯◯と言ったら誰々だよね」と一瞬で出てくるような存在のことを指すのかもしれない。ジェイデンは今まで「どうせ父親がウィル・スミスだから機会与えてもらってんだろ」と散々言われてきただろう。そして実際にウィル・スミスとジェイダ・ピンケット=スミスの間の子供であることのメリットは、彼のキャリアにて信じられないぐらいプラスで働いているだろう。しかしだからと言って、普段と違う軸で作品を評価し、「二世だから」という理由で批判するのもあまり論理的ではないように感じる。確かに彼のラップは「超リリカルで上手い」わけでもなく、どちらかと言うと楽曲全体の雰囲気を作ることにフォーカスしているようにも思えるが、19歳でこのアルバムだとしたら、今後も進化し続けるだろう。

もちろん彼は元々、一般的な家庭の子供の数百倍ものヘッドスタートをきっているが、評価すべき点の一つが「辞めなかった」ということであると感じる。彼ほどのヘイトや悪口を言われてきたら、普通のメンタルであったら辞めてしまうだろう。今まで数多くのラップ大御所の二世たちが、ちょっと音楽に手を出しては、辞めてきた。そのなかで、音楽を続けたジェイデンは、それだけでも「ヘイトを受けることができるアイコン」のようにも思えてくる。「両親が大スターの息子と言ったらジェイデン」というアイコンから、彼は徐々に「二世としても、独自としても色々成し遂げたアイコン」になるのだろうか?楽しみである。

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