ビルボードトップ50に入らずにゴールド認定されたRuss。彼の活動から音楽業界の変換を考察する。

 

インターネットの発達

により、独自のスタイルで成功するアーティストが増えてきた。2017年グラミーにて3部門受賞したChance the Rapperは今だに商業作品をリリースしていないことで有名であるが、彼以外でも音楽業界の未来を感じさせるアーティストは多い。PlayatunerではMac MillerVince StaplesRun the Jewelsなどのアーティストがいかに「個性的」であるかを紹介してきた。

そんななかで、注目すべき新世代アーティストはRussであろう。以前彼については「Russが暴露:金持ちアピールをするラッパーたち」という記事で紹介したが、彼の楽曲「Losin Control」がこの度ゴールド認定(50万枚相当)されたとのニュースが入ってきた。

この曲はRussにとって二度目のゴールド認定になるのだが、驚くことに彼の楽曲は一度もビルボードトップ50に入ったことがないのである。さらに彼は昨年にコロンビアとパートナーシップ契約を結んだが、今でもDiemonを自身のレーベルとして自身でプロデュース/ミックス/マスタリングをしている。彼は10年以上アンダーグランドにて地道な活動を続けてきたが、その地道な活動は無駄ではなかった。

 

長年の経験と深さ


彼は確かにLil YachtyやLil Uzi Vertみたいな現在「バブリー」なアーティストではないが、彼の地道な積み重ねは「深いファン」を確実に増やしたのだと感じる。彼の名前を知っている人は確かにまだ少ないかも知れないが、彼は実際現在どこにツアーをしても数千人規模のクラブ/ライブハウスを満員にできており、一夜でグッズだけで30万円ほどを稼ぐこともできている。さらには200万円ほどのギャランティーを要求できるレベルのアーティストとして2016年に成長したとForbesでは語られている。2016年の頭には50人しかいなかった観客が一年で数千人に増えたのである。しかしそれは1年で達成したわけではない。2006年から2016年の変わらない「ストラグル」があったからこそ、熱量を持ったときに爆発したのである。「熱量」に関してはJay Zの事例などからも学ぶことができるであろう。見栄えを良くするために努力し、「なんかかっこいい」だけで終わってしまう上辺の「ブランディング」をする時代は終わったのだと感じることができる。自分とコンテンツの本質を深く知ってもらうブランディングが重要になってくるのだろう。(動画は2012年)

 

「個」の時代


これはPlayatunerの他の記事でも提唱していることなのであるが、音楽業界は徐々に意図的に「差別化」をする時代から「自然な個性」をそのまま出す時代に変換していると感じる。「他で聞いたことがある」ような音楽は消費され、「他にもこういう音楽を聞きたいけど、同じようなアーティストがいないからこのアーティストをリピートをするしかない」と感じるようなアーティストが成功するのだろう。これはストリーミングがメインとなっている状態からも理解することができる。ストリーミング時代では、いかに「リスナーの時間」を自分の音楽に費やしてもらうかが肝となってくる。1日のなかで「音楽を聴く」という限られた時間のなかから、いかに皆の時間を奪うかがビジネスの本質となるのだ。そのため「瞬間的にシーンに合わせる」のではなく、自分にしかできない音楽をやることが大切になってくるのだろう。

 

Russのようなアーティストの成功を見ると、上記のような状況が見えてくる。アーティストのなかには「時代に合わせた音楽を作らないと…」と焦る人がいるが、それは決して「時代に合わせたジャンル」という意味で使われるべきではないのかもしれない。時代にあったビジネスマインド、さらにはそれを根気よく続けるコミット力が最も重要なのかもしれない。Russの「New To Me」という曲のリリックでも語られているように

「Built a fanbase without a shortcut(近道をしないでファンベースを造り上げた)」

というラインが全てを物語っている。