SZA「アーティストはJust Do It」彼女が語るアーティストとしての心得と「良い妥協」

 

 

アーティストとして

どのように毎日を乗り切って作品をリリースするか。これは全てのアーティストが違う方法を持っている。Russのように毎週曲をリリースする者もいれば、SZAのようにレーベルにハードディスクを取り上げられてやっと「完成」に向かえる者もいる。アーティストとしてのジレンマを感じる者もいれば、Jay-Zのように「あとは好きにしていいよ」というテンションで曲を完成させることができる者もいる。

SZA「アルバム完成のためにレーベルにハードディスクを奪われた」アーティストが抱えるジレンマについて考える

 

アーティストは自分のなかで湧き上がってくる感情/感覚であったり、漠然とした「何か」であったりを表現することによって欲求を満たしていると言えるが、それがなかなか難しいプロセスでもある。今回は上記の記事に関連することだが、上記で紹介したSZAの「ジレンマ」を具体的に紹介したい。SZAはピッチフォークのインタビューにて、周りの声と自分の拘りについてこのように語っている。

 

SZA:人々に音楽が批判されたりすると、無理矢理自分を見つめ直すことになって「あーもっと良くならないと」って思う。でも「良くなる」ってどういう意味?「良くなる」という意味がわからないなら、その意味を頭で理解しようとするのをやめて、色々なプロセスを見て研究しろって言われる。でも実際にそれをやっていて、私は段々怒りを覚えるようになった。

私が座って「研究」している間に多くのことが起こって、色々な人がアルバムをリリースする。その間、私は繰り返し吟味されているだけで何も起こらない。そこで「このままエーテルのように空気に蒸発してしまいそう。私はあまり重要ではない」という気持ちになった。ときには「もしかしたらもう作るの止めたほうがいいかも」って思ったけど、その怒りがコミットメントとなって前に進めた。

 

周りからの評価に自分の世界が惑わされるとこのような状態になるアーティストは実際に多いと感じる。自分の作品が認められなかったから「寄せる」という意味でも、行動に起こさないで「研究」をしはじめる。もちろんその期間にヴィジョンが成長する可能性もあるが、実際に行動に起こしていないのでアウトプットができていないのである。その状態が続くことにより、周りが自分抜きで前に進み始めて、焦ることになるのだ。しかしそのときに感じた怒りを前に進める糧にしたと語る。

自分が「研究」したり、行動を起こし続けた結果、発生するジレンマもある。それは過去の作品/感覚とどのようにして向き合えばいいのか?という点である。アーティストは成長のスピードが感が速い人が多いので、自分の過去の作品を憎む人も多い。そんな感情にたいしてSZAはこのように語る。

 

SZA:昔の自分の音源とかを聞いていると「これが低すぎる」とか「リバーブがかかりすぎている」とか毎回思う。そして自分の声が嫌いになって恐れるようになる。でも私はその「恐れ」を乗り越えるぐらい怒りでウンザリするようになっていた。「もう自分の声が鼻声みたいになってても、そんなのFuckだ!もっと良いマイクを買おう!」みたいな感じになっていた。

もし「良くなりたい」のであれば学ばないといけないし、その過程の作品はクソみたいなものになるかもしれない。クソみたいなものかも知れないけど、それでも、とにかくやらないといけないの。「Just Do it」しないといけないときに、私はそうした。

 

これは悪く言えば「妥協」のような感覚になるが、実際には妥協とは少し違うニュアンスであると感じる。過去の作品というものは、必ずしもアーティストにとって満足いくものではない場合が多い。それは常に成長しているからだ。その意識的な変化のスピードが速い場合、過去のものは既に自分にとって「クソ」みたいなものになるかもしれない。しかしだからと言ってその「良くなる」過程を「これは過程だから」と認めることができなければ、一生作品を世に出すことはできなくなるのである。意識的には成長し続けることを考えると、なおさらだ。この「良い意味での妥協」と「過程を認める」ができなければ、実際に作品を世に出せたとしても、「うわぁ、これもう好きじゃないや」と言ってすぐに非公開にすることになるだろう。彼女はそれを乗り越えたことにより、2017年に最もブレイクアウトしたアーティストのうちの一人となった。

もちろんネットに公開されている作品は自分の「ポートフォリオ」になるわけなので、あまりにも「これはありえん」レベルの黒歴史は非公開にするのがいいのかもしれない。実際に良い意味での妥協というのは、「想像で補えるレベル」の欠点を認めることなのとも言える。例えばインディーズアーティストの音源のミックスが悪かったり、デモ音源の音が悪いのは、もちろんジャンルによっては死活問題になるが、想像で補えば楽しんで聞けるものも多い。完璧主義なのは素晴らしいことであるが、リソースがない場合は、自分が今どのレベルにいるのかを正当に認識しつつ、キャリアを前に進めるのが重要なのであろう。そんな記事は下記がオススメである。

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