Cardi Bの発言から見るソーシャルメディアとアーティストの関係性。ヘイターたちに応対する彼女とその精神性

 

 

技術とアーティスト

の関係性については今まで何度かPlayatunerにて取り上げてきた。主にインターネットを活用してインディペンデントに成功したアーティストたちの事例を紹介しており、0から何かを作り上げる作業のなかで技術というものは非常に重要になってくる。以前Steve Lacyの記事で書いたように技術によって様々な「クリエイティブ」が一般化し、今まで特定の人しかできなかった活動へのハードルがさらに下がったのである。そのようなメリットがありつつも、プリンスのように「技術は諸刃の剣だ」と言うアーティストもおり、もちろんデメリットもある。

プリンスが進化するテクノロジーについて語る。彼の発言から考える業界の変化

 

そんななか、アーティストにとって諸刃の剣となるのはツイッターやインスタグラムのようなソーシャルメディアだ。ソーシャルメディアはインディペンデントアーティストはもちろん、多くのアーティストが直接ファンと繋がれる場所として、販促活動の重要な要素として役に立ってきた。実際にソーシャルメディアがなければ多くのインディペンデントアーティストが今も表に出る機会を探して彷徨っていたかもしれない。

しかしソーシャルメディアはメンタルにとってデメリットがあるという研究結果もでており、ソーシャルメディアを見る時間と鬱症状には相関があるとの情報を医療の名門ピッツバーグ大学が発表している。そんなソーシャルメディアであるが、自分の「作品」を多くの人に「評価」されることを仕事としているアーティストが受ける影響も大きい。作品が評価されているだけであればマシであるが、多くのは場合はゴシップや作品とは全く関係のない有る事無い事が「自由」に発言される。そんななか、ソーシャルメディアから影響を受けているアーティストの事例を紹介したい。

2017年のMVPでもあるCardi Bもソーシャルメディアについて語っている。どこにいても「自分」という存在を擁して、臆することなく自分を表現するラッパーであるが、彼女は頻繁にSNSにて自分の意見を言っている。

 

➖ 自分が悪く言われることを慣れていないということを頻繁に語っていますが。

Cardi:多くの有名人は、自分の名前をツイッターで「エゴサーチ」している。そして、皆見ていないと思うかも知れないが、大体全部のコメントを見ている。でもほとんどの有名人は「有名人だから」それに反応しない。「私はそういう人たちに反応するにはあまりにクールすぎる」とか「そういう人たちに反応しないのがクール」みたいな価値観を持っている。でも私はそんな奴らに何も言い返さないほどファッキンクールじゃないから!てめぇらは私の苦悩も知らないで何を言ってんだ!今まで簡単な道のりじゃなかったし、私のキャリアは誰かに与えてもらったわけじゃない。

そして私のことをよく知っていると思ってる人もいるけど、本当はなんも知らないんだ。いつもクレイジーな噂が流れるし、2週間に1回は「Cardi Bは妊娠している」みたいな噂が流れる。人々は得た小さな情報を大きくフリップして勝手なことを信じ始めるんだ。

 

実際にアーティストや有名人でもツイッターで人々の反応を見ていると語る。ある一定の知名度から見なくなると予想ができるが、多くの人は「有名人はクールだから」という理由で特に反応し返すことはない。「自分は成功しているから、そのままヘイターを無視して成功し続ける」という境地にいけるとまた状況が変わってくるのかもしれない。

しかしCardi Bはまだデビューアルバムも出していない状態というのもあり、自分のキャリアにたいしてまだ少し不安があるのかもしれない。恐らく多くの人は面と向かっては絶対に言わないであろうことを「見られていないから」や「面と向かっていないから」という理由で、必要以上にアグレッシブに発言したりするのだろう。このような「批判を気にする」状況が続くと、明らかに精神がすり減る可能性があることは素人の私でもわかる。以前書いた「ソーシャル時代のヒップホップと鬱症状」という記事でも触れたが、アーティストとリスナーの距離が近くなっているこのご時世だからこそ、絡みやすさとしての「身近」だけではなく、一人の人間として「身近」に感じる反応/発言をする必要があるのかもしれない。特にCardiは見た目について色々言われるのが「心にくる」と答えており、そのような作品とは関係ない面での「メディアからの描写」がいかにアーティストにとって好ましくないか、という事例も以前紹介した

彼女は「お前はワックだ」とか「スキルがない」と言われることも多いと語っており、そういうのも「心にくる」と素直に答えている。しかし「本当にワックだったらNo.1スポットはとれないし、アトランティックが私と契約したのはミックステープを独自で売ることができたからだし!」と強く言い返す彼女には、このメンタリティを忘れずに自信を持って活動し続けて欲しい。先日「Finesse」にてコラボをしたBruno Marsも彼女に「この世と音楽業界はクレイジーだけど、絶対に自分を信じてそのままの自分でいてほしい」とインスタグラムでメッセージを送っている。

建設的な批判であればウェルカムであろうが、有名になるにつれ、あまりにも汚い言葉で罵ってくる「ヘイター」も増える。そんななか、気にしなくてもいいぐらいの「ステープル・ポジション」と「自分のレーン」を確立できているか?確立できる自信があるか?が重要になってくるのかもしれない。もちろん面と向かっている時と同じような対話がソーシャルで出来れば好ましいのかもしれないが、ネットに蔓延する数々のアグレッシブな発言を見ている限りは難しいと感じる。人間には「ポジティブな意見は片耳から入ってもう片方からスッポ抜け、ネガティブな悪口だけが脳に刺さる」という習性があるのかもしれないが、Tyler, the Creatorが言うようにそれを逆にするメンタリティが重要なのだろう。J. Coleやケンドリックレベルになればソーシャルメディアに登場しないでもファンはついてくるという事例もある。

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