Ice Cube「No Vaselineは2PacのHit Em Upより良いディストラックだ」その理由とは?
歴史に残るディストラック
というフレーズを聞いたとき、なんの曲を思い浮かべるだろうか?Nasの「Ether」、Jay-Zの「Takeover」、Eazy-Eの「Real Muthaphuckkin G’s」などを思い浮かべる人は多いだろう。しかしどんな素晴らしいディストラックよりも脳内にて速攻で思い浮かぶのがIce Cubeの「No Vaseline」と2Pacの「Hit Em Up」である。この2曲と「Ether」は「ディストラック御三家」と言っても過言ではない(今勝手にそう呼ぶことにした)。
今回はPlayatunerで書いた「ビーフにてパーソナルな領域に入るのはどうなのだろうか?」という記事の補足的な内容である。
下記はIce Cubeが「ディストラックに順位をつけるとしたら」ということについて語っているインタビューである。米メディアなどでは今発見されたようなテンションで語られているが、5月には公開されていたBill SimmonsのPodcastでのインタビューである。彼はこの1:10:00らへんからこのように語っている。
インタビュアー:ディストラックのトーナメントをやると、2Pacの「Hit Em Up」とあなたの「No Vaseline」の2択になります。
Ice Cube:No Vaselineのほうが良いディストラックだよ。何でかというと、俺らは同じグループにいたから、Hit Em upよりパーソナルな想いが込められているんだ。N.W.A.はグループで、2Pacとビギーは元友達同士だ。
インタビュアー:それは興味深い点ですね。2PacがHit Em Upを出したとき、「これは俺のスタイルだ」って思いましたか?
Ice Cube:いや、思わなかったし実際に2Pacのやつも最高だよ。でも俺のはビートもより良かった。あのBrickの「Dazz」サンプルも最高だ。まぁそれは置いておき、2Pacは最高のアーティストだよ。でももし彼が生きていたとしても「No Vaselineを越すことはできないぜ」って伝えると思う。シーンを色付けるイントロもあるし。
Hit Em UpよりNo Vaselineのほうが「パーソナル」だから良いと語ったIce Cube。これに関しては個々の好みはあると思うが、No Vaselineの素晴らしさは「元メンバー」というだけではないと私は考えている。もちろんパーソナルなのだが、その「パーソナル性」の素晴らしさは「人としての悪口」ではなく、元メンバーという立場にも関わらずあくまでも「プロフェッショナルなアーティスト」としてディスをしたこと留まったことであると感じる。
元メンバーという非常にパーソナルな立場にも関わらず内容としては、「ハードなギャングスタの日常を伝えるラップとか言っていたクセに、Michelleのソフトなバラードとかもプロデュースをしたこと」、「Eazy-Eが金持ちになった瞬間にコンプトンからストレートに出ていき白人の高級住宅街に引っ越したこと」、「結局N.W.A.と言っても白人のマネージャーに権利を握られていること」など、「プロのアーティスト」としての立場から批判をしている。パーソナルな人たちに対して、「プライベートな悪口」を送るのではなく、グループの理念と現状から論理的に納得できる内容をハードな例えでラップしている。「パーソナル」なことと、「プライベート」の違いを気づかせてくれるディストラックなのだ。
逆に「Hit Em Up」はそのリミットが外れた恐ろしく激しいディストラックである。その激しさ故にディストラックとしてトップレベルに君臨しているが、あれは2Pacの破天荒なキャラだからこそ納得させられる芸風なのかもしれない。「だからてめぇのビッチをファックしたんだよクソデブが」というどストレートなフレーズを強がり感を出さずに言えるラッパーは、多くはないだろう。
さらに彼は「2Pacとビギーどちらが好きですか?」という質問には
「シチュエーションによるな。ステージだったり、心からのMCingの場合は2Pacで、リリカルスキルであったりラッパーとしての”技”はビギーだ」と答えた。
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