LOGIC「ヒット曲を作るのを諦めたら大ヒットした」等身大の感情を表現する強さ

 

 

ヒット曲をつくる

ということはどのようなプロセスなのだろうか?もちろん「ヒット曲をつくるぞー!」と言って、人々が気にいる「データドリブン」なヒット曲を作ることができる人もいる。しかし実際にヒットしつつ、人々の心に何十年も残り、人々の糧になるような曲はそのようなメンタリティで作られたものではないとも感じる。もちろんポップスであったり、クラブでヒットする曲はその枠に当てはまらないものも多いと思うが。

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そんななか、2017年に本人にとって今までにないレベルで「ヒット」したアーティストがLOGICである。彼の「1-800-273-8255」はダブル・プラチナ認定され、彼のキャリアのなかで最も売れた曲となった。「1-800-273-8255」とは自殺予防相談の電話番号であり、メンタルヘルスについて歌った曲である。この曲が初の大ヒット曲/ラジオスマッシュとなったLOGICであるが、彼はそうなることを意図して作ったわけではないと語った。

 

LOGIC:ここまで多くの人に聞かれている曲が、ポジティブなメッセージの曲であることが嬉しいよ。確かに楽しんで盛り上がれる曲も重要だけど、俺はもう人に認められるために音楽を作ったり、ラジオで大ヒットする曲を作ろうとすることを諦めたんだ。その結果、鬱症状との戦いであったり、メンタルヘルスについて語ったこの曲が、そういう「ヒット」になったことが驚きなんだ。これは俺だけではなく、あなただけでもなく、「俺たち全員」にとって重要なことだ。

 

ラジオヒットを作るためには「盛り上がれる」曲を作る必要があると思っていたのか、「1-800-273-8255」のような楽曲はヒットしないと思っていたらしい。そして彼は「Everybody」にて売れることを諦めて、自分が満足できる内容の曲を作った結果、今までに到達したことがなかったレベルの知名度を達成することになった。これはアーティストにとっては嬉しいことであると感じる。

「売れる」ために自分が思ってもいないことを、「多分みんなこういうものが聞きたいんだろうな〜」という机上の空論で発信して「寄せる」のがヒット曲を作ることだと思っている音楽関係者も多いだろう。しかしLOGICは自分が本当に感じていることを表現することによって、そのリアルな感情で共感を集めることができているのだ。これは実際にはアーティストの楽曲がリスナーに届くとき、以前はラジオやテレビのような「ゲートキーパー」的な役割がいたので、リスナーの趣向/流行りをある程度コントロールできたことにも通じていると感じる。そのような「ゲートキーパー」の存在がなくなった(変わってきた)今では、自分の「想い」を全面的に出すことが非常に重要になってくる。

これはLOGICだけに当てはまることではない。以前は6LACKも「ヒット曲を作ろうとするのをやめたらヒットした」と語っており、「自分の経験/等身大の感情」を表現することにより、「全員」の経験を憑依させることができるのだ。恐らくこれはケンドリック・ラマーが支持される理由の一つでもあり、彼がヒップホップという型でここまで一般的にも売れているのも、そのような「経験」と「感情」の表し方が非常に上手いからだと感じる。

そしてこれは単に売れる/売れないの話ではない。アーティストが表現として自分が納得いくものが作れたかどうか、という観点も非常に重要である。表現として自分が納得いく形であれば、それは精神的にもセラピューティックなものである。LOGICも下記で「まずは自分が幸せじゃないと周りを幸せにできない」と語っており、このアルバムのセールスも彼自身が幸せになれるようなことをした結果だと感じる。

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