グラフィティを愛し、ヨーロッパならではのヒップホップをつくるスウェーデンのグループ「Looptroop」 #booze813

 

New Kaz Skellington!

 

2018年10月から2019年3月末まで放送される、Playatuner代表Kaz Skellington(渡邉航光)がナビゲーターを務める番組J-Wave「Booze House」。毎週木曜日26:00〜の30分間となっており、ブラックミュージックをはじめとする洋楽を掘り下げる番組だ。その放送の内容のリキャップを記事化し、実際にどのような内容を話していたのかを紹介したい。

 

スウェーデンを代表するヒップホップグループ「Looptroop」

2019年1月24日放送の回では、Kaz Skellingtonが昔から好きで聞いているスウェーデンのヒップホップグループ「Looptroop」について語った。現在はLooptroop Rockersという名前で活動しているが、1991年から活動しているベテランヒップホップグループである。Promoe、Supreme、CosM.I.C.とEmbeeからなる4人組であり、特にラッパーのPromoeとプロデューサーのEmbeeは、ソロ作品でも知られている。

そんな彼らはグラフィティ・ライターとしても知られているが、ヨーロッパならではの社会問題についてラップすることも多く、スウェーデンならではの「ヒップホップ」を見ることができる。1曲目は、自国の移民政策を、ドイツのベルリンの壁に例えた、彼らの代表曲をお送りした。

 

Looptroop – Fort Europa

 

元々Looptroopを知ったきっかけが、中学生のときに見たとあるスケートボードのビデオであったと語るKaz Skellington。ヨーロッパのスケートシーンを取り上げている雑誌をたまたま買ったときに、付録でついてきたDVDに使用されていたのだ。当時はShazamやiPhoneなども存在していなかったので、そのスケートビデオのクレジットから必死に 楽曲を探し、それ以来ずっと聞いていると彼は語る。(下記動画はそのときに見たスケートビデオ)

 

この楽曲は「第二次大戦が終わりベルリンの壁が壊されたあとも、ヨーロッパは格差の壁を作った」という内容となっており、西ヨーロッパの裕福な国と、それ以外の国を分け続ける移民政策についてラップをしている。

彼らはデビュー・アルバムをリリースする前から、自身のレーベル「David VS Goliath」から音源でリリースしており、2000年に1stアルバムの「Modern Day Symphony」をリリースし、2002年に2ndアルバム「The Struggle Continues」をリリースしている。2曲目にお送りした曲は、そんな2ndアルバムに収録されているアッパーな楽曲。

 

Looptroop – Musical Stampede

 

このアルバムは続く人生の苦悩と、それを乗り越えようとする精神がテーマとなっているが、この楽曲はMCとしてのセルフボーストが多く、ヒップホップの競争的な部分が描かれている。

Looptroopで4人組であるが、そのなかでもKaz Skellingtonが最も好きなメンバーが、ラッパーのPromoeである。非常に長いドレッドが印象的な彼であるが、彼のソロの楽曲も紹介した。

 

Promoe – These Walls Don’t Lie

 

 

These Walls Don’t Lie(壁は嘘をつかない)」という題名からもわかるように、この曲ほどグラフィティへの想いが詰まっている曲はない。この曲ではグラフィティライター「Bingo」の人生が語られている。BingoはLooptroopの大ファンであり、グラフィティを通して彼らの音楽を広めていた。Looptroopと同じくスウェーデン出身の彼は、頻繁にファンレターや彼のグラフィティアートを送っていたという。

グラフィティアートは深夜に高所にて作業したり、時には危険が伴うときがある。Bingoもグラフィティのピースを書いているときに、電車にはねられてしまったのだ。その知らせを受けたPromoeは、Bingoをはじめ、亡くなったライターたちへのトリビュートソングとしてこの曲を作った。この楽曲からKaz Skellingtonが印象に残っているリリックを紹介した。

Deep into the music and his art man, his true love
Didn’t even notice when the train pulled up
And before the bloodstains faded or the engine cooled off
That very same train hit another writer: Olaf

愛するあまり、音楽とアートに深く入りこみ
電車が近づいたことに気が付かなかった
電車のエンジンが止まるまえに、また一人のグラフィティライターが亡くなった。

Fearin’ no evil, people said we had no morals
That’s fine, their corrupt world it really wasn’t for us
悪を恐れることはしなかった、人々は俺らのことを「モラルのない奴ら」と言った
それでもいい、この汚職まみれの世界は俺らの居場所じゃなかった。

世界中のグラフィティライターたちよ、生き残れ!これはお前らへのラブソングだ。
グラフィティライターは死なない。
この壁は嘘をつかないからだ。

カルチャーを愛しているからこそ、ライターたちに生き残り、カルチャーを伝え続けてほしいという想いが込められているのだろう。

Looptroop – Ambush in the Night

 

こちらの楽曲もグラフィティ・ライターとしての楽曲であり、アンダーグラウンドの雰囲気が非常に良く伝わってくる。

 

今回のKaz Skellingtonの感想:私はスウェーデンという国に住んだこともなければ、文化についてもあまり知らないのですが、ヒップホップの4大要素というものを通じてここまで共感できるというのもあり、文化が広まる素晴らしさを実感しました。

 

メッセージコーナー

ラジオネーム、ジュンさん:先週から聞いています!グランドマスター・フラッシュのエピソードは初めて知りました。レジェンドDJ & ラッパーがいて今のヒップホップムーブメントがあることを忘れてはいけません。映画ワイルドスタイルも見てみたたいです。

Kaz:ありがとうございます。先人たち、レジェンドDJ & ラッパーたちがいて、私たちの道を作ってくれたということは絶対に忘れてはいけないな、と私も思います。

次回は1月31日(木)26:00〜に放送されたDenzel Curryのインタビューの模様をお届けます。

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