教育を行き渡らせるために地域に長期的な投資をするラッパーNipsey Hussle。彼のプロジェクト「Too Big to Fail」は必見

 

 

教育の重要性

についてはPlayatunerにて何度か書いてきた。基本的には「作品」を作り上げる上で重要になってくるアーティストの理念や経験を「学べること」として紹介することが多い弊メディアであるが、教育に力をいれているアーティストに関しては頻繁に紹介するようにしている。親と子供の関係という意味だけではなく、コミュニティを底上げする意味での教育は非常に重要である。近年のラッパーで、特にコミュニティを底上げする意味で「教育」と還元に力をいれている人と言えばNipsey Hussleだ。

Nipsey Hussle「俺らはストリートのサンリオになる」彼のビジネスセンスとコンテンツ・クリエイターとしての戦略から学ぶ

 

彼がいかに教育に力をいれているかは、以前上記の記事で紹介したが、彼の考え方は多くのアーティストの一歩先を行っているようにも感じる。彼は現在32歳であり、まだデビュー・アルバムもリリースしていないが(追記:リリースされました)、メンタリティレベルではJay-Zのようなベテランアーティスト並のものを持っている。彼は現在多くの事業に投資をしているが、力をいれているのが教育の架け橋となる「場所」を作ることだ。

彼はこの度ウォール・ストリート出身のDave Grossという不動産投資ビジネスマンとパートナーシップを組み、「Too Big to Fail」という施設を作ることを発表した。こちらの「Too Big to Fail」にて非常に重要になるのが「S.T.E.M.」という4文字だ。これは「Science」「Technology」「Engineering」「Math」の略であり、こちらは貧困地域の子供たちにアメリカの高給な職業と呼ばれている上記の4分野を教える施設となる。2階建ての施設であり、1階部分で子供たちに科学、IT、数学、エンジニアリングを教え、2階部分でシェアオフィス/コワーキングスペースを運営し、売上にするようだ。

まずLAのインナー・シティであるクレンショーで「Too Big to Fail」スタートさせると語るNipsey。そして徐々にアメリカ中に広めると語る。アメリカの貧困地域と富裕層の差が広がるなか、彼は貧困地域で起こる様々な問題の根本的解決が「教育」にあることを知っている人物なのだ。教育が行き渡っていないことにより、そもそも目の前にある「生きる選択肢」が非常に少なくなる現実があるなかで、次世代の子供たちが「フッドのサイクル」から抜け出せる「パイプライン」をつくるように長期的に還元/投資をするのだ。

 

Nipsey:多くの起業家が生まれるシリコンバレーには、「多様性」がないと言われている。その理由としては、貧民街やインナーシティからシリコンバレーに行くパイプラインがないことが挙げられる。そのパイプラインがない理由としては、俺たちには科学、IT、エンジニアリング、数学などのスキルがなく、それを教える環境がない場所で育った13歳の子供に、その分野に興味を持たせるのは難しい。それに触れることができる環境で育たないといけないんだ。だからそんな環境をサウス・セントラルに作りたい。

 

彼はこのように長期的にコミュニティに還元しつつ、ビジネスとしても成り立たせることを「実行」する力を持っている。貧困地域の問題について語るのも、ラップするのももちろん重要であるが、実際に実行している彼をヘイトすることはできないだろう。しかもこれを実行するのがJay-ZでもDiddyでもなく、逆にまだ経済的なピークを経験していないNipsey Hussleだからこそ、フッドの問題に「当事者」として投資することができているのかもしれない。実際に多くの起業家と話していると、どの分野の問題も、本質的に考えると根は「教育」に行き着くという話しを聞く。

「Too Big to Fail」のサイトに埋め込まれている動画では「技術の成長に追いつかずに人材不足が問題となってくるテクノロジーの業界にとっても、貧困地域に教育を与えることは中長期的に見て今後の人材確保にも大きく貢献する」という旨も語られている。Nipsey Hussleは、様々な問題の根源となる「教育が行き渡っていない」という問題に還元すべく、「ヒップホップ」なマインドで語るだけではなく「実行」をしているのだ。目的も説明されずに学校で「暗記」させられる教育ではなく、今まで見えてなかった「熱意の選択肢」に気が付かせるという意味でも、この施設は重要なものになるだろう。下記のサイトで今後の動向などをチェックできる。

https://www.toobigtofail.org/

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