A Tribe Called Questの「We The People….」リリックを徹底解説

Writer: 渡邉航光(Kaz Skellington)


 

18年ぶりにアルバムを発表したA Tribe Called Quest(ア・トライブ・コールド・クエスト)。ここ数日間メディアを賑わせたこのアルバムだが、収録曲から「We The People….」のリリックビデオが公開された。

この曲はかなりタイムリーな内容となっており、リリックを追うことで現代社会において彼らが伝えたいことが見えてくる。

 

We The Peopleに込められた想い


constitution_we_the_people

From: Wikipedia

 

We The People….」という言葉はアメリカ憲法の一文目に出てくる文章である。「アメリカ合衆国は国民(People)に尽くすために存在している」という内容を宣言した憲法のイントロである。この一文を使用したこの曲のメインテーマは、サビの歌詞を見れば一目瞭然であろう。

All you Black folks, you must go
All you Mexicans, you must go
And all you poor folks, you must go
Muslims and gays, boy, we hate your ways
So all you bad folks, you must go

君たち黒人たちはもう出ていかないと駄目だよ
君たちメキシコ人たちじゃもう出ていかないと駄目だよ
君たち貧乏人はもう出ていかないと駄目だよ
ムスリムとゲイ、君たちの考えは嫌いだ
だから悪人はみんな出ていかないと駄目だよ

というサビとなっている。これは憲法にて宣言されていることと、アメリカの実際の姿の「理想と現実」を明らかに皮肉っている内容である。憲法では国の立ち位置として、国民のために「人々の平等と権利を守る」という内容でスタートされているにも関わらず、「出て行け」という言葉を投げかけられてきた人々の想いを代弁している。恐らくこれは選挙キャンペーン中のトランプや彼の過激なサポーターに向けた言葉の可能性が高い。

またメディアは「被害者」としての姿を人々に刷り込もうとしており、自分たちは「ラップができるただの黒人」ではないと語っている。この曲を解説したQティップのインタビューでも「メディアは常に対立の構図を作ろうとする。加害者/被害者、新/旧など、グループ分けをして先入観をつけるんだ。」と語っている。このような差別的な出来事が起きたときに大切なのは「被害者/加害者」と、さらなるグループわけをすることではなく「人」としてイコールに取り上げるという解釈もすることができる。Qティップの人格者としてのリリックが読み取れる。

When we get hungry we eat the same fucking food, The ramen noodle

我々が全員空腹になったら全員同じものを食べる、ラーメンヌードルを

日本語に訳すと割りと意味のわからないリリックになるが、この部分も「平等」をテーマにしているのがわかる。特にアメリカでは「ラーメン」というと、基本的にカップラーメンや袋ラーメンのことを指しており、「安くて誰でも食べることができるもの」の例えだ。さらには「ラーメン」の発音の仕方に「Rhymin’(ライミン:韻を踏むこと)」という言葉がかかっており、「ラップというアートを取り入れる」という二重の言葉遊びとなっている可能性が高い。

さらにこう続く

Your simple voodoo is so maniacal, we’re liable to pull a juju

あなたのVoodooは熱狂的で、俺たちはJujuをやらないといけないかもしれない

このVoodooとはハイチの「精霊の魔法(良き魔法)」という意味であり、それとは裏腹にJujuには「呪術」という意味がある。それだけだと普通の攻めたリリックなのだが、英語で考えると「良き魔法」は「White Magic」「呪術」は「Black Magic」という訳になる。ここでも現代社会の「白人と黒人」の関係性を「魔術で攻撃される」という例えで落とし込んでいる。またもやQティップの天才的に深いリリシズムが炸裂しているのである。

しかしリリシストとして天才的なのはQティップだけではない。今年、44歳で糖尿病の合併症で亡くなってしまったPhife Dawg(ファイフ・ドーグ)も中々攻めている。Qティップが現代の人種、不平等問題をメインテーマとしてラップしているなか、ファイフは「ストリート」のラッパーとして、現代の音楽シーンに物申している。

You bastards overlooking street art
Better yet, street smarts but you keep us off the charts
So motherfuck your numbers and your statisticians
Fuck y’all know about true competition?

入りでいきなり、攻めている。ストリートアートの価値がわからない人が多く、自分たちのストリートスマートさにも関わらず、トップチャートなどには載らない、と語る。本当の競争は、売上枚数や数字じゃないと示している。Qティップとは違い、ストリートアーティストとしての立ち位置を全うしている。Qティップとファイフのこのようなコントラストを聞くのもこれが最後だと考えると、心にくるものがある。

このような曲を聞き、ただ「カッコいい」で終わるのではなく、彼らがどのような「想い」でリリックを書いていて、リリックの裏に込められたアートを知るとさらに曲が楽しめるのでオススメである。