サウスがヒップホップ界に存在を示した日。東と西がメインであった時代に切り込んだ2人組

 

ヒップホップにおけるサウス

トラップなどの流れもあり、ここ15年ぐらいはサウスがヒップホップ的に最も熱い地域と言っても過言ではない。ヒップホップ界では今でもサウスのトラックは賛否両論ではあるが、アトランタやニューオーリンズは常に新しい音楽に向かって前進している地域だと言える。そんなサウスのアーティストたちがメインストリームにて大成功を収める前に、その道を作ったヒップホップデュオが「OutKast(アウトキャスト)」であろう。彼らは東と西がヒップホップ界を治めていた90年代に、アトランタ出身の初のメインストリームアーティストとして大活躍をしたのだ。

この記事はPlayatunerの「OutKast特集」シリーズの続編にとって変わるようなものになるが、ヒップホップにおいて、サウスが存在感が示した日について紹介したい。

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ヒップホップにおける西と東の関係性はあまりにも有名だろう。NYのサウスブロンクスにて生まれた音楽はやがて西海岸に渡り、過激な内容になって「進化」をしたのである。(西海岸と東海岸ビーフに関しては、以前特集したパート①パート②を参照して頂きたい)

西海岸と東海岸のビーフが公にて注目されるようになったのは1995年のSource Awardsがきっかけである。シュグ・ナイトの問題発言やスヌープのマイクパフォーマンスもあり、会場は東派と西派でかなりピリピリしていた。そのなかで、一組の新人たちが中間地点に立っており、それがOutKastであった。

なんとBest New Artistグループ編にてOutKastの名前が発表されたとき、会場からはブーイングが起きたのだ。

ヒップホップの聖地NYにて受賞し、ブーイングに見舞われたOutKastの受賞スピーチはこうだった。

 

Andre 3000:まずは神に感謝したい。でも俺は「狭い心を持ったやつら」に嫌気がさしてるんだ。デモ音源も持っていても(出身地が原因で)誰も聞いてくれない。ただ、俺が言いたいことはこれだけだ。

「サウスが言いたいことがあるから聞いとけよ。」

 

上記の動画を見るとこの発言が原因でブーイングが収まったように感じる。東や西でわけられている当時のヒップホップにおいて、確実にサウスを代表し、存在感出したのだ。それまでは皆が「敢えて」注目していなかったサウスをヒップホップファンの脳裏に焼き付けたのである。

彼のこの発言の効果は素晴らしいものであったと感じる。東/西への影響だけではなく、サウスにてヒップホップアーティストを志している人たちのマインドセットを変えたのだ。上記の動画ではKiller Mikeがこのように語っている。

NYのヒップホップに憧れ、真似事をするのではなく切り離して「自分たちしかできないことをやる」というマインドセットを作ってくれたんだ。NYに認められるためにやるのではなく、自分のスタイルを「見せつけてやる」という気持ちだ。

アトランタなどの南の街がこの20年間、常に頭角を現しているのは「自分たちのスタイルを見せつける」というマインドセットがあるからなのかも知れない。まさにRun the Jewelsがそのメンタリティを持ったアーティストであり、その後アトランタからはLudacris、2Chainz、Killer Mike、Lil Jonなど様々なアーティストが輩出されている。OutKastとAndre 3000のこのスピーチがなければ、ヒップホップ音楽史は確実に変わっていただろう。