Mos Defがヒップホップと現代技術のプラットフォームについて語る。カルチャーの恩恵を受けている人たち

 

 

音楽と技術

については度々Playatunerで取り上げてきた。プリンスの「技術は諸刃の剣だ」という発言から、技術を最大限に活かして、自分たちの力で世に出ていくアーティストまで、技術のメリット/デメリットを様々な側面で記事として投稿している。今や音楽と技術の関係は、切って離せるものではなく、「音楽を聞く」という行為には必ず何かしらの形で「技術」が関わっている。

プリンスが進化するテクノロジーについて語る。彼の発言から考える業界の変化

 

そんななかでHot 97のインタビューでヒップホップカルチャーと技術について語ったのがYasiin Bey(Mos Def)である。滅多にインタビューなどで表に出てこないイメージが強いモス・デフであるため、コメント欄には「Hot97はどうやってモス・デフを見つけたんだ!?」と書かれてしまっているが、彼の第三者視点とも言えるような冷静な分析を紹介をしたい。

 

インスタグラムのようなツールと人々のエゴの巨大化について、そして常に世間に対して自分を大きく見せないといけないエゴとプレッシャーが危険を呼び寄せることについて語る。

Ebro:ヒップホップがこのように成長したことをどう思う?

Mos Def:俺はこのカルチャーを愛している。でも技術的な要素が周りを囲みすぎているように見える。それがどういう意味かと言うと、実際にカルチャーの恩恵を受けて得をしているのは、そのアルゴリズムを作ったプラットフォームだけなんだ。クリエイターたちがカルチャーから恩恵を受けれていないと思う。

Ebro:サウンドクラウドも、インスタも、FBも全部クリエイティブを無料で人々に挙げているだけだ。例えばFacebookでイケてる写真をアップしたとしても、その「コンテンツ」に広告をつけて得するのはFacebookだけだ。

Mos Def:俺はそういうのに反対なんだ。例えばJay-Zの台詞を使うとしたら、彼は「Reasonable Doubtを作るのにどれぐらい時間がかかりましたか?」という質問に「今までの人生の全ての時間だ。」と答えたんだ。当時26歳の彼の人生の26年間を経験していないと作れなかった作品だ。その時間をかけて作ったものを「無料」で配信することが当たり前とされている。なんで俺は自分の人生を積み上げた全てを無料であげないといけないんだ?プラットフォームがそれでお金を稼いで、自分はアーティストであることのストレスだけを持ち帰るんだ。

技術的なプラットフォームが、「コンテンツ」とそれを作るクリエイターを凌駕する力を持っている。

 

技術によってコンテンツを作る「カルチャーの中核を担っている」人より、それを利用する人々が恩恵を受けていると語るMos Def。彼は正しいが、実際にはこれはIT時代の以前から起こっていた構図でもあると感じる。「コンテンツ」がないと何も始まらないが、そのコンテンツを作る人々が立場的に弱くなっている世の中なのだ。しかしそれは「コンテンツを届ける役割」の大きさを表しており、いつの時代も実際にその「届け役」は必要なのである。(現代のその届け役が果たして届けられているかは置いておき)さらに彼はこのように語る。

 

Mos Def:そんなプラットフォームがあるからこそ、毎日100万人ぐらいの新しいアーティストたちが出てくるし、どうやってそんな大勢のアーティストをチェックすればいいと言うんだ?俺は大人だからやらなきゃいけないことがたくさんあるんだ。だから毎日座って全部のアーティストをチェックすることなんて出来るわけがない。だから既に自分のなかで出来上がっているアーティストたちを聞き続けるんだ。たまにJ.I.Dのような最高のラッパーが出てきたりするけど、とりあえず数多くアーティストを出すんじゃなくて、J.I.Dみたいなアーティストを世に出してくれと思うね。

 

このようなプラットフォームのメリットとしては、「誰でも表に出るチャンスがある」ということであろう。今まではレーベルや音楽業界によってフィルターされていたクオリティという面も、技術的なプラットフォームによってそのフィルターが非常に薄まったと言っても過言ではない。これはアーティストによってはメリットと感じる人も多いだろう。しかしMos Defが語るようなデメリットがあるのも確かである。ちなみにJ.I.Dは「Playatuner Freshman」の1位になったり、Playatuner激推しのアーティストである。

この件について私が言えるのは、現状分析のその先に何を見出すかだと感じる。もちろん今の技術基盤、プラットフォームのなかでもBlackbearやRussのようにインデペンデントに稼ぎまくるアーティストもいる。彼らは活動のなかで「音楽的PDCAサイクル」を回しており、現状に対して言い訳を言うだけではなく、自分なりの解決策を見つけているのだ。プリンスが言うように、技術は諸刃の剣であり、上手く使わないと搾取されてしまう。しかし上手く使っている人たちの例を見ていると「搾取されるな。自分で解決しろ」と訴えかけているようにも思える。「カルチャーの恩恵を一番受けるのは私であり、それを次の世代に受け渡す」という意気込みを感じることができる。

Mos Defが上記のインタビューで言っていたのは、Drakeのような「契約する前から既に売れていたアーティスト」が何故契約をするのかが理解できないということである。そう考えるとBlackbearの「俺はインデペンデントで年間6億稼いでるから、12億の契約金じゃないとメジャーと契約しない」という発言が非常に「現代的」なのかもしれない。現代の技術というものは諸刃の剣であり、搾取されるアーティストも多く出てくる。しかしその中でも自分で何かを変えようと考え、行動したものは独自に成功できるのかもしれない。下記はIT時代を上手く乗り切っているアーティストの記事である。

水面下で帝国を築き上げるアーティストたち。「自分で全部やる」というパワーと美学

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