ラップレジェンドBig Daddy Kaneが伝説のプロデューサーQuincy Jonesとの思い出を語る。ジャズとラップフローと「先輩」の存在。

 

 

OGのOG

80年代に活躍をしていたラッパーたちは今では完全に大ベテランの粋に達している。Rakim、Big Daddy Kane、Chuck Dなどはヒップホップの「先生」のような存在であろう。そんな彼らにとってはMelle Melやグランドマスター・フラッシュが先輩となり、どんな人物であったとしても先輩や「OG」という存在が人生にいる。そんな彼らにとっても大先輩に当たる存在が今年84歳となった伝説のプロデューサーのQuincy Jones(クインシー・ジョーンズ)である。

伝説のプロデューサーQuincy Jonesが語る「音楽の未来を担うアーティストたち」から見る真の「ドン」の発想

上記ではマイケル・ジャクソン「Thriller」「Bad」やフランク・シナトラをプロデュースしてきたクインシーが真の「ドン」である理由について書いたが、そんな彼の「ドン」っぷりを見ることができるエピソードをもう一つ紹介したい。この記事ではBig Daddy Kaneが、彼にとって最も印象的だったスタジオセッションについて語っている。

 

BDK:俺のなかで最も印象に残っているスタジオセッションは、Quincy JonesとBirdlandのトリビュートをやったときだ。俺が知らないジャズ・ミュージシャンがいたり、彼のアシスタントが「黒人の百科事典」を持ってきたりしたんだ。その中には俺が知らないような黒人の歴史がたくさん書いてあった。様々な黒人アーティストについて書いてあって、俺はそれを読みながらクインシーに色々教えてもらったんだ。

俺は「クインシーに色々教わりながら、彼の曲のためにラップを書いている。すげぇ…」と終始驚いていた。

 

レジェンドクインシー・ジョーンズに歴史と音楽について教わりながら、ラップを書いていたと語るBig Daddy Kane。「ドン」としての人格が見えてくるエピソードである。さらに彼はこのように語った。

 

BDK:クインシーは俺のラップに驚いていたようで、彼が非常に興味深いことを言ったんだ。彼は「君がたまに早口でラップするとき、昔のジャズ・シンガーのエラ・フィッツジェラルドのスキャットを思い出す」と言ってくれた。

そして彼は俺にこのように頼んだ。「今からエラ・フィッツジェラルドに電話するから、彼女にラップを披露して欲しい」とね。俺は伝説のジャズ・シンガーと話ができることにテンションが上がったから、彼の言うとおりにやったんだ。でも彼女はもう既に老人だったし、俺は電話越しでしばらくラップした後に「え?何?」とだけ言われたんだ(笑)でも伝説的な人物とお話しが出来て楽しかったよ。

 

クインシー、そして20世紀トップジャズボーカリストと名高いElla Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)との思い出を語った。このエピソードから感じたことが2つある。まずはBDKのラップのフローからクインシーがジャズを感じたことだ。下記がエラ・フィッツジェラルドのスキャットとなっている。

ジャズアーティストからラッパーがフローのヒントを得るエピソードは珍しいことではない。以前はRakimが「コルトレーンのリズムパターンを声で再現することによって、フローを構築した」と語っており、Rakimのラップ業界を永遠に変えたあのスムーズなフローがどこから来ているのかがわかる。

さらには難解なラップのパイオニアとしても知られるファロア・モンチもPlayatunerでインタビューをした際に「コルトレーンはアートの支配者で、コルトレーンのようなアーティストのおかげで自分が存在している」と語っている。こちらに関しては精神的な話かもしれないが、彼のフローのリズムパターンは「自由」であり、ジャズが身についているのがわかる。

クインシーがBDKのラップにエラ・フィッツジェラルドを感じたのは偶然ではないだろう。例えBDKが直接影響されていなかったとしても、リズムパターンなどの要素は「人」を媒体として隔世遺伝のような形でDNAに染み込むのだろう。

 

「先輩」としてのクインシー

そしてもう一つ感じたのはクインシーの「先輩」としての振る舞いである。彼は若い世代のアーティストを巻き込みながら、先輩として自慢をし続けるのではなく、相互的な会話の機会を与えているようにも感じる。先輩として後輩に知識を託すのはもちろんであるが、一方的にいびり倒すのではない。Big Daddy Kaneのようなアーティストからも新しいものを学び、「先生」としてだけではなく、新しい世代のスタイルを見る「生徒」として、非常に上手い関係構築ができているのだろう。そして新しいものを見た後、自分の経験に基づいた知識から気がついた点を意見することにより、新しい世代はスキル的にも文化的にも前に進むことができる。前に進むために文化の新旧に共通点を見出し、機会を与えるのが「先輩」の役割なのかもしれない。そしてクインシーは学校などでは習うことのないブラックヒストリーについて教えており、歴史が途絶えないように託しているのだ。

先日書いた記事でWyclef Jeanが「俺のような「先生」と呼ばれている人が、「生徒」になって学べることは美しいことだ」と語っており、まさにクインシーはその2つの役割を全うしているからこそ、84歳になった今でも常に新しい活動をし続けることが出来ているのかもしれない。

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