【第二弾】グレイテストラッパーは誰だ!?ラッパーたちの偉大なポイントを解説!KRS-One、Jay-Z、J. Cole、Pharoahe Monch

 

New Kaz Skellington!

 

2018年10月から2019年3月末まで放送された、Playatuner代表Kaz Skellington(渡邉航光)がナビゲーターを務める番組J-Wave「Booze House」。毎週木曜日26:00〜の30分間となっており、ブラックミュージックをはじめとする洋楽を掘り下げる番組だ。その放送の内容のリキャップを記事化し、実際にどのような内容を話していたのかを紹介したい。今回は2019年3月21日に放送された「グレイテストラッパーは誰だ?偉大なラッパーが評価されるポイントを解説!第二弾」の内容を紹介する。

好評であった第一弾では、Rakim、Lil Wayne、Andre 3000、ケンドリック・ラマーの素晴らしいポイントを紹介したので、こちらも要チェックな内容となっている。

【第一弾】グレイテストラッパーは誰だ!?ラッパーたちの偉大なポイントを解説!Rakim、Lil Wayne、Andre 3000、ケンドリック・ラマー

 

グレイテスト・ラッパー第二弾

この回では、第二弾ということで、第一弾に引き続き4人のラッパーを紹介した。ラップを評価するときに指標として使われる5つの要素「リリシズム、フロー、ストーリーテリング、ライムスキーム、デリバリー」という観点で、今回はKRS-One、Jay-Z、J. Cole、Pharoahe Monchという偉大なラッパーの「偉大な理由」を解説した。もちろんこちらは、私Kaz Skellingtonの個人的な観点であり、紹介したラッパーは全要素100点と言っても過言ではない。そのなかでも、「このポイントは120点ぐらいいってるでしょ」という点を、愛を込めて紹介させて頂いた。

 

① KRS-One

KRS-One通称「ザ・ティーチャー」と呼ばれる、ヒップホップの先生的な大ベテランであり、ヒップホップの歴史/精神性には欠かせない人物である。彼に関しては、80年代後半に世に出てきたMCということもあり、その後に出てきたMCに比べてシンプルな言葉で韻を踏むことが多い。彼は、自分が伝えたいことを心に刺さるシンプルなライムで届けるという精神を持った「MC」である彼の好きなポイントとしては、大きくわけて2つある。

 

① セルフボースト

セルフボーストとは上手い言い回しなどを使い、ラップのスキルを示しつつ、自分を大きく見せることである。「MCとしていかに自分がイケてるか?」という、ヒップホップの競争的な部分であり、70年代にNYのサウスブロンクスにてヒップホップが生まれてから、ラップの基本的な要素の一つとして多くのラッパーがセルフボーストをする。KRSは、金や名声などではなく、単純にMCとしてのスキルをアピールするセルフボーストに長けていると私は感じている。

先程貼った「Step Into A World」も、そんなMCとしてのセルフボーストが光っている楽曲だ。

Yo, I’m strictly about skills and dope lyrical coastin’
Relying on talent, not marketing and promotion
I’m not sayin I’m number one, uhh I’m sorry, I lied
I’m number one, two, three, four and five

俺はスキルとドープなリリックを吐き出すことに厳密だ
マーケティングやプロモーションではなく、才能に頼る
俺が1番だと言ったけど、ごめん、あれは嘘だ。
1、2、3、4、5番、全部俺だ。

個人的にこのラインが気に入っている理由としては、「俺が1位だと言ったけど、ごめん、あれは嘘だ」というフレーズで、「え?違うの?」と思わせた直後に、「1位、2位、3位、4位、5位、全部俺だ」というパンチラインで、「1位」のさらに上を行くこと示しているからだ。単に「自分が一番凄い」と言うのではなく、一度逆説的に否定しておき、リスナーの意識を疑問的にキャッチしながら、「1位」のさらに上を行くパンチラインを披露するという、彼のMCとしての感性に痺れる。

 

② ヒップホップが元々押し出していたポジティブさとフリースタイル

ヒップホップは70年代にサウスブロンクスで生まれた。社会的に表現をする場を与えらてこなかった人たちが、ヒップホップを使用して表現をし自分の居場所を見つけ、コミュニティに還元してきた。ヒップホップにはそのようなポジティブな面があるが、KRSはヒップホップのそんな一面を強く押し出している。「音楽」という要素だけではない観点となってしまうが、ヒップホッパー/MCとしては不可欠な要素であろう。彼は「バイオレンスを止めろ」という活動をしていたり、フリースタイルでも多くの名言を残している。

アルバム「I Got Next」の2曲目には、そんなライブ中のフリースタイルが収録されている。そのフリースタイルで彼は、このように語る。

 

When someone says the rich gets richer
Visualize wealth and put yourselves in the picture
The rich get richer, cause they work towards rich
The poor get poorer, cause their minds can’t switch from the ghetto
Let go, it’s not a novelty
You could love your neighborhood without loving poverty

誰かが、裕福な層に富が集まると言ったら
富を想像して、そのなかに自分を入れよう
裕福な層がさらに裕福になるのは、裕福になるために行動を起こすからだ
貧民がさらに貧しくなるのは、ゲットーから意識を変えられないからだ。
その意識を手放そう、ノベルティではない

貧困を愛さなくても、自分の地元やネイバーフッドは愛せる

 

このように、彼は自分のライブという場でも、リスナーの人生が少しでも明るくなるような名言をフリースタイルとして披露しているのだ。先日亡くなってしまったNipsey Hussleも、このフレーズを体現した人物であったように感じる。このヒップホップの精神性を体現したようなリリックを、心に刺さる太い声で、自信満々にラップするKRS Oneは間違いなくグレイテスト・ラッパーのうちの一人であろう。

ヒップホップの歴史と彼の想いを語った「Just Like That」という楽曲は、私が特に気に入っている楽曲だ。トークボックス回でも紹介したKool G Rapの「All My Life」と同じく、Fania All Starsの「Cha Cha Cha」のサンプルを使用している。「ネガティブな行動ではなく、ヒップホップというもので、心の正しい使い方/表現することを教えた」という旨のリリックもあり、彼のヒップホップへの熱い想いとFania All Starsのサンプルが相まって、聞く度に涙が出てくる楽曲だ。

【関連記事】超ベテランMCKRS-ONE新アルバム「The World is Mind」リリックからアルバムのメッセージを読み解く

 

② Jay-Z

Jay-Zは現代において、影響力/財力という観点でも唯一無二であり、そのような意味ではGOATと言っても過言ではないだろう。ビジネスマンとしてのJay-Zを称賛した記事は多いが、実際に彼のMCとしてスキルを語った記事はあまりないため、今回はNasではなくJay-Zについて語った。

Jay-Zのラッパーとしての素晴らしさは言葉遊びのセンスと、リリックを書いていないのに高レベルのパンチラインを披露できることである。

 

① フローが自由

ラップを書かないでレコーディングをすることで知られているJay-Z。そのため、フローがかなり自由なのだ。ラップを書いたことがある人だとわかると思うが、ラップのフローというものは案外単調になりやすいのだ。しかし全盛期のJay-Zのフローは、音符に起こすとかなり多くのリズムパターンがあり、聞いていて面白いのだ。下記はDJ Premierがプロデュースした私の最も好きなJay-Zの曲であるが、このようなヨレているビートの上で、メトロノーム通りにラップをするとリズム的に走っているように聞こえることが多々あるのだ。しかしJay-Zは自由なフローでありつつも、決して走っているように聞こえないリズム感を持っており、初めてこの楽曲を聞いたときに感心したのを覚えている。

 

② 言葉遊び

第一弾では、Lil Wayneの言葉遊びの素晴らしさを解説したが、この回で紹介したJay-ZのパンチラインはLil Wayneの事例として紹介したものに通ずるものがある。

 

Jay-Zの「Brooklyn Go Hard」では、間違いなく彼のキャリアで一番「ヤバい」パンチラインを披露している。解説するのがかなり難しいラインであるが、このような形になっている。

I Brooklyn-Dodger them
I jack, I rob, I sin
Aw, man—I’m Jackie Robinson
‘Cept when I run base, I dodge the pen

というラインであり、こちらは直訳すると

俺はブルックリン・ドジャーする
俺は盗み、罪を犯す
あぁ、俺はジャッキーロビンソンだ
しかし類を回るときは、ペンを回避する。

という「?」と言いたくなる日本語になる。しかしこのパンチラインには、「野球の試合」と「彼のドラッグディーラーとしての経験」という複数の意味がかかっているのだ。

まずは「ブルックリン・ドジャーする」という箇所であるが、ブルックリン・ドジャースは1884年から1957年まで実在した野球チームである。そして「Dodge」という単語には、「避ける」という意味があり、ここでは野球の「ブルックリン・ドジャース」と、「ブルックリンにて警察を回避する」という2つの意味がかかっている

その次の「I jack, I rob, I sin. Aw man, I’m Jackie Robinson」が一番の解説ポイントとなる。ジャッキー・ロビンソンはメジャー・リーグで初めてプレイしたアフリカ系アメリカ人であり、スポーツにおける「平等」を象徴した歴史的偉人だ。「I jack, I rob, I sin」は「俺は盗み、罪を犯す」という意味であるが、このフレーズに使用されている言葉である「Jack」「I」「Rob」「I」「Sin」を続けて読むと、「Jack I Rob I Sin」という感じで、「ジャッキー・ロビンソン」という発音になるのだ。「俺はブルックリンを代表するアフリカ系アメリカ人のジャッキー・ロビンソンのような存在だ」ということを示しつつ、「I jack, I rob, I sin(俺は盗み、罪を犯す)」というフレーズで、「ジャッキー・ロビンソン」という発音を作り出す。その後「あぁ俺はジャッキー・ロビンソンだ」と言う。こちらも先程に引き続き、「野球」とギャング的なライフスタイルの二重の意味がかかっている。

そして最後の「‘Cept when I run base, I dodge the pen」は直訳をすると「しかし類を回るとき、ペンを回避する」であるが、「I dodge the pen」のペンは野球の場合はブルペンである。恐らくJay-Zはこのパンチライン的には、ブルペンではなくベンチという意味で使っていると予想ができる。また、ペンには牢屋という意味もあり、「牢屋を回避する」という意味でもある。「run base」は野球でいう「類を回る/走る」という意味で、「でも俺は類を走ったときも、ペンには帰ってこない」という意味が出来上がる。「run base」のもう一つの意味としては、Runには「支配する」という意味があり、Baseには「自分のテリトリー」という意味がある。そのため、先程の野球のラインと同時に「しかしテリトリーを支配するとき、俺は牢屋を回避する」という意味になる。「俺はジャッキー・ロビンソンだけど、BaseをRunするときはペンを回避するところに関しては野球選手とは違う」という意味にもなる

こちらの短いラインには、このような多くの意味がかかっており、まさに「キング・オブ・言葉遊び」とも言えるパンチラインとなっている。「ブルックリン・ドジャーズ、ジャッキーロビンソン、類を走る、ペンを回避する」という野球の意味合いと、「元ドラッグディーラーとして、盗みなどの罪を犯したが、自分の島を支配するときは牢屋を回避している」という意味合いがバチッとかかっているのだ。

「盗み、罪を犯す」という意味の「I jack I rob I sin」で、ジャッキー・ロビンソンという発音を作っていると気がついたとき、誰もが衝撃を受けるであろう。「俺はジャッキー・ロビンソンだけど、BaseRunするときはペンを回避するところに関しては、野球選手とは違うけどな!」というウィットに富んだジョークのようなラインを披露しつつ、自分がジャッキー・ロビンソンのようにアフリカ系アメリカ人にとって大きな影響であることも示している。まさに最高峰の言葉遊びである。

 

③ J. Cole

現代の「グレイテスト」と言った時、ケンドリックと比べられることが多いJ. Cole。前回のケンドリックに引き続き、J. Coleの個人的な評価ポイントを紹介した。Coleは、もちろんフローも声も好みであるが、個人的にはストーリーテラーとして刺さることが多い。

一見地味な曲調が多いと思われがちなJ. Coleだが、彼はアルバムというものを通してストーリーを構築するようなアーティストとして、ここ数年で大幅に成長をしているように感じる。地味だと思われがちだが、私が人生にて大きく影響を受けた一枚が「4 Your Eyez Only」というアルバムである。

このアルバムはアメリカの貧民街に囚われた黒人男性のストーリーを語っている。そんな人物の目線から描かれたアルバムであるが、アルバム最後の曲で自分の友人の目線であることが明かされる。

アルバムの最後のヴァースでは、ギャング的なストリートライフから抜け出せず、22歳で亡くなってしまった友人が、愛した娘にたいして捧げたメッセージが語られており、そこまで聞いて初めてこの作品のコンセプトが鮮明に理解できるようになる。フッドではハードであり、犯罪を犯すような男が「リアル」と言われがちな風潮があるなか、「真の男」がなんなのかということを、友人と娘のエピソードから説明しているのだ。2曲目の「Immortal」には「亡くなってからしか世界は変えられない」というフレーズがある。彼の友人が亡くなって、コールのアルバムの題材になり、フッドにおける「愛することにより真の男になる」というメッセージを伝える影響力になる、というポイントとして合点がいく。アルバムを通してストーリーを伝える彼は間違いなく、現代のグレイテストの一人であろう。

彼の「4 Your Eyez Only」に関しては過去にも何度か書いているので、是非チェックしてみていただきたい。

J. Coleの「4 Your Eyez Only」から印象に残ったリリック8つを解説。映画のようなストーリーと最大のオチとは?

J. Coleのドキュメンタリー「4 Your Eyez Only」が素晴らしい。様々な地域をフィーチャーした「現実」を紹介

 

④ Pharoahe Monch(ファロア・モンチ)

ファロア・モンチは他の3人に比べると少し知名度的には劣るかも知れないが、もし彼のことを知らなかった方がいたら絶対にチェックしていただきたいラッパーである。彼はクイーンズ出身のラッパーであり、1991年にOrganized Konfusionとしてデビューを果たした。彼らのラップスタイルはフローが複雑であり、難解なラップの第一人者と言っても過言ではないだろう。

放送では、そんな彼とMos DefとNate Doggがコラボをしたクラシック「Oh No」のヴァースを紹介した。

 

こちらの楽曲はもちろんMos Defのヴァースも素晴らしいが、ファロア・モンチのフローとライムスキームが凄すぎて衝撃を受けるであろう。彼のヴァースのなかで、特に気に入っているパートを少し解説したい。

彼のヴァースの出だしの力強さは忘れられないであろう。この楽曲は、構成としてサビが毎回8小節あるのだが、その最後の2小節はNate Doggが歌っていないパートとなっている。もちろん、ここはまだサビの一部なので、Mos Defはそのサビ8小節が終わった後、ヴァースが始まる1小節目からラップを入れている。しかしファロアはサビの最後2小節に食い込み、自身のヴァースが始まる前に既に勢いを大幅につけているのだ。そして実際にヴァースが始まった頭の泊では、既にラップの3行目である「amazes」に到達をしている。

Very contagious raps should be trapped in cages
Through stages of wackness, Pharoahe’s raps are blazin
And it amazes

このように韻も多く踏み、さらに「エイ」の発音を伸ばすことにより、リズムに勢いをつけている。彼のラップの素晴らしさの一つが、「緩急」である。ライムスキームとして、連続で韻を踏みまくる箇所と、母音を伸ばし、キャッチーなリズムを作る箇所が次々と来るのだ。彼のラップも音符にしてみたらかなり面白い結果となるだろう。

例えば

hallelujah, Pharoahe Monch’ll do ya
Maintain the same frame of mind – screw ya!

という上記MVの2:01の「ハレルーヤ!」という箇所のフローでは、「エイ」で連続で踏みつつ、「u」の発音を伸ばし、耳に残るリズムを作っている。その直後に

Get the picture, sit ya, seat ya, greet ya with scriptures
I’m equipped to rip ya, reach ya
Pharoahe and Mos is verbal osmosis
Coast to coast, we boast to be the most explosive here
Ferocious, the lyrical prognosis
The dosage is leaving you mentally unfocused here

このような頻度で、連続で韻をばらまく。ここで韻をばらまいたと思ったら、その次には「・」の箇所にてリズムを跳ねさせる。

Don’t・be hesitant, sound cracks ・the sediment
It’s evident we medicine for your whole town

ここも「・」の箇所に休符を入れることにより、緩急がつき、覚えやすいリズムになっている。このように、ファロアは「ライムのバラマキ」と「母音の伸ばし」と「休符」をバランス良く使うことにより、オリジナルなフローを作っているのだ。

 

放送の感想

Kaz:前回に引き続き、KRS-One、Jay-Z、J. Cole、Pharoahe Monchの4人の素晴らしさを語らせていただきました。彼らはどの要素をとっても100点!みたいなラッパーたちですが、その中でも「このポイントは150点とかいってるかなー」ってポイントを紹介しました。このようなグレイテストを勉強することによって、アーティストとしてかなり学ぶこともあるし、彼らの偉大さを改めて確認できるな、と思います。また、彼らのようなグレイテストを研究し、「自分もいつかグレイテストになるぞ」とやる気が出したり、「いや、自分は既に自身をグレイテストなラッパーだ」と意気込んだりすることも醍醐味ですね。こういう形で、少しでも偉大なMCたちの凄さが伝わったらいいな、と思います。

 

次回は最終回である「ヒップホップのサウンドの歴史を変えたプロデューサーDr. Dre」のリキャップ記事を公開します。

【第一弾】グレイテストラッパーは誰だ!?ラッパーたちの偉大なポイントを解説!Rakim、Lil Wayne、Andre 3000、ケンドリック・ラマー

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