イジメ問題について等身大の目線でラップする18歳ラッパーTokenのメッセージは必見。曲を聞いて感じたこと。

 

 

楽曲で何を伝えるか?

それはそのアーティストが生きてきた人生、経験を表したものであろう。「リアル」と呼ばれるものは、その等身大の経験を言葉/音楽として表し、世に出したものが多い。その「経験」と人生観というのはそのアーティストにしか出せないものであり、自分のオリジナリティの根源となる部分でもある。

そんな楽曲のメッセージであるが、直近ではOddiseeの「You Grew Up」という楽曲を紹介した。

差別問題やテロリズムにたいして独自の目線で語るOddiseeの「You Grew Up」のメッセージは必見

こちらは差別問題やテロリズムに関して独自の目線で語ったものであり、彼の経験が非常に現れている曲である。差別主義者とテロリストになる過程を描くことにより、「結果」ではなくプロセスで物事を見ているのだ。

 

19歳ラッパーToken

今回はTokenという19歳のラッパーの曲のMVを紹介したい。彼は元々インターネット上のMCコンテスト「No Sucka MCs」で話題になり、様々なネットヴァースコンテストで入賞をしている。彼の早口であるが、自分のアグレッシヴな想いを堂々と口にする姿は、ネットを介して多くのファンを獲得してきた。レーベルに所属せずに自身で「グラインド」をした結果17歳で話題になり、18歳では既に業界屈指のリリシストたちからのコーサインももらっている。今年のPlayatunerフレッシュマンのリストにも選ばれているので要チェックである。

そんな彼の曲を一言で表すと「経験からくる等身大のメッセージ」である。そのなかでも私が特に見入ってしまった楽曲が彼が18歳のときに公開した「Exception(例外)」という曲とMVである。こちらは映像としても、非常にメッセージがわかりやすいので、是非MVも見て頂きたい。(追記:最近話題になったバーガーキングのコマーシャルにも通じることですね)

 

1stヴァース

楽曲の舞台は高校である。Tokenのクラスメイトには、クラスに馴染めないアンディという少年がいた。アンディは喋るのが苦手なせいで、「変なやつ」だと思われ、クラスメイトの2人にイジられていた。Tokenは心のなかでは「アンディは別に悪いことしてないし、いちいちイジらないでほっておけばいいのに」と思っていた。しかし次第に「イジり」は「イジメ」にエスカレートしていき、Tokenは心のなかでは心配していたのだ。「次アンディに会ったら、”俺はお前の味方だからな”って言うつもりだ」という台詞で1stヴァースが終わる。

 

2ndヴァース

2ndヴァースではそのエスカレートしたイジメについて、「イジメっ子は意図的に危害を加えようとしているパターンではない場合も多い。ただ自分が一番上に立ちたくて、注目されたい”子供”たちなんだ。ただその注目のされ方を教えられてこなかった子供たちだ」と語っている。加害者となる学生2人は、その幼稚さゆえに人を傷付けるのがOKだと思ってしまっているのだ。Tokenはエスカレートするイジメをはたから見つつ、アンディにたいしてリスペクトがあると語る。「全員が無実ではないが、今目の前で起こっていることは正しくない。アンディには俺が彼をリスペクトしているってことを知っていてほしい。彼が苦しんでいることを理解しているってことを知ってほしい」という台詞で2ndヴァースが締めくくられる。

 

3rdヴァースとエンディング

ある日、アンディは始業時間にクラスにこなかった。彼がこなかったことにより、2人のイジメっ子は静かにしていた。授業が始まった20分後、アンディはクラスルームに入室した。彼は泣きながら、銃を取り出した。誰も予想していなかった出来事にクラス全体が叫んだが、誰もがその理由と原因を理解していた。アンディはイジメっ子2人を撃ったのだ。Tokenはアンディの「唯一の味方」として何か言わないといけないと感じた。Tokenが「アンディ、もう止めるんだ!それで満足か?」と言った瞬間、アンディはTokenに銃を向けてこのように返答した。

「君が3番目に殺したかった人だ」

そしてMVは、アンディがイジメられているところをただ見ているTokenの姿を回想シーンとして映す。Tokenからしたらアンディの「味方」のつもりであったが、アンディからしたら「見てみぬふりをしていた人」なのだ。イジメられている最中のアンディと目が合いつつも、知らんぷりして歩き続けたTokenは、いくら心の中でアンディをリスペクトしていても、アンディからしたら同罪なのだ。まさにアインシュタインの「世界を破壊するのは邪悪な者ではなく、それを見て何も行動を起こさない人たちだ」という内容の名言のようなメッセージなのかもしれない。心のなかで思っている言葉を一度でもアンディに伝えることができたら、もしかしたら少しだけでも状況が変わっていたのかもしれない。

 

感じたこと

私は教育/子育て/カウンセリングに関しては全くの素人なので、自分が言っていることが正しいかどうかはわからないが、この曲から個人的に感じたことを率直に書かせていただく。この曲で重要だと感じたラインを③つ挙げるとしたら、「①自分が一番上に立ちたくて、注目されたい”子供”たちなんだ」、「②”俺はお前の味方だからな”って言うつもりだ」、「③誰も予想していなかった出来事にクラスが叫んだが、誰もがその理由と原因を理解していた」の③つであろう。

①に関して、そのような子供たちは「注目のされかたを教わったことがない」とTokenは語っている。「イジメる側になる子供は注目がほしいが、どのような活動が注目に繋がるのかわからないため、簡単に人の上に立った気分になれる”イジメ”という行動を起こす」という意味なのだろう。スポーツやホビーなどのポジティブな活動で自尊心を持ち、注目される方法はいくらでもある。しかしそのような子供たちは、ポジティブな活動による自尊心の保ち方へガイドしてくれる大人の存在がなかったのか、自尊心を保つために他人を傷付ける場合も多いのだろう。「問題の根源の一つとして、そのような存在の少なさが挙げられる」というメッセージでもあるのかもしれない。自尊心の低下に関しては、大なり小なり誰にでもある気持ちであり、人間は満足していないときに他人に厳しくなってしまうと感じている。自分が他人にキツく当たってしまったときはは「自分の自尊心が保たれていない」と考えるように心がけようと思う。

②に関しては「味方の存在」の重要性をTokenは語っている。実際にそのイジメられている子供が「味方」がいると感じられるかどうかが、非常に重要なのだろう。この話自体はフィクションではあるが、もしTokenが実際に口に出して、一つでも行動を起こしていれば、この曲のエンディングは違ったかもしれない。それはクラス内であっても、学校外であっても、どこかに帰属意識/安心感があるというのが好ましいのだろう。それは友達であったり、親であったり、話を聞いてくれるおじさんであったり、スポーツであったり、音楽であったり、様々な形で世の中に存在している。クラスという狭い範囲が「世界の全て」だと思わせずに、その「安心感」を見つけることができる機会/思考力を与えるのが重要なのかもしれない。そのような話は、Lil Wayneのスケートボードの事例でも見ることができる。

実はこの曲は後半であり、前半には「Happiness」という曲がある。「Happiness」の1stヴァースではアンディの家庭環境が描かれており、MVでも居場所がないことを見ることができる。それを見ても上記のことを感じた。

 

③ これは等身大のメッセージであり、世の中で日常的に起こっている問題である。イジメが原因で銃乱射事件が起きたり、自殺事件があったりするとき、外の世の中からは「結果」しか見ることができない。しかしTokenはこの曲で「私たち全員が必ずしも無実なわけではない」と語っている。この事件は一つの出来事により起こったというより、様々な感情が交差して起ったことなのだろう。特に学校やクラスという狭いコミュニティでは、非常に難しい問題だ。この年代の子供たちの多くにとっては、「クラス」という狭い世界が「全て」であるため、そこで「敵」を作ってしまうと全てが上手くいかなくなってしまう。そのため、声を挙げたり少数派になることが異常に恐れられる。恐らく多くの人間がその心理で行動ができなかったりするのだろう。そして自分も無実ではないその一部として「Exception(例外)」ではないというのが、Tokenのメッセージなのだ。もちろんスーパーマンのような人は滅多に存在しないが、少なからず自分が後悔しないような行動は起こしたいと考えさせられる。

TokenはこのMVを公開すると決めるのに時間がかかったと語っている。彼自身が年齢的にも高校生であったのもあるのだろうが、実は彼自身も普通の人のように喋ることが苦手だったのだ。彼の公式サイトでは幼い頃に「喋るときに、脳が言葉をプロセスして繋げることができない」と医者に診断された語っている。そのような経験からきたリリック/ストーリーなため、考えさせられるのだろう。

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