【Blog】Royce Da 5’9″が「Sheeple」という言葉について語る。「群れから外れないように馴染むということが最も重要になってしまっている」

 

 

ソーシャル時代

は音楽やエンターテインメントに限らず、多くの人たちが「表現」をするプラットフォームを与えてきた。アーティストのなかにはソーシャル/ITを上手く活用し、ファンベースを増やす者もいれば、ソーシャルのネガティブな面に影響されてしまう者もいる。「諸刃の剣」とプリンスが言ったように、ソーシャル/ITはどのようにして使うかによってそのシグニフィカンスも変わってくる。

どのようにして使い、自分の「Behavior/行い」どのような影響を与えるか?という点に関しては、アーティストだけでなく「ユーザー」としても考えたいところである。そんなソーシャル時代の「人々のインタラクション」について、以前はRoyceの発言を元に考えた。

米ヒップホップ業界における「Trash(ゴミ)」という表現。Royce Da 5’9″とDJ Premierが批判する時の言葉遣いの重要性について語る。

 

上記のRoyceの発言は、個人的にも共感できるエピソードであったが、今回はまたRoyce Da 5’9″の発言を紹介したい。DJ PremierとのPRhymeと、最新のソロ・アルバム「The Book of Ryan」を立て続けにリリースしたのもあり、彼の話題がどうしても多くなってしまうが、この2つのアルバムはどちらもおすすめできる内容になっているので、要チェックだ。

 

「Sheeple」

そんな2つの作品をリリースしたばかりの彼であるが、Billboardのインタビューにてソーシャル時代の「Sheeple」について語っている。「Sheeple」とは「Sheep(羊)」と「People(人々)」を組み合わせた造語であり、考え抜いた自分の意見ではなく、他人の意見に簡単に「羊」のようについていく人々のことを表す。羊のように周りを見て、多数に紛れ込む方向に進むというニュアンスを含んでいる。そんな「Sheeple」という表現を使い、Royceはこのように語る。

 

Billboard:2018年現代で、リリシズムが今だに「重要」なのは何故ですか?

Royce:リリシズムはいつの時代も「重要」だよ。ただ社会の会話の内容が動いただけだ。「Sheeple」たちの存在感が最高域に達している。ツイッターなどのソーシャルメディアでは、そのような「Sheeple」は非常に大きな声を持っている。俺たちは「自分自身の意見」ではない意見を発信している人たちが言っていることを聞かないといけない世の中になっている。自分自身がそもそも何が好きなのかわかってない人たちの意見を聞いているかもしれないんだ。「自分が何を好きになるべきなのか?」ということをわざわざネットで検索している人がどれだけいるかも想像できる。

そして自分が嫌いなものを「嫌いだ」と言うことが大丈夫なことか?クールなことか?ということを確認しないで意見を言えたらいいのに…と思ってる人も多いだろう。裏で俺が現代のベストラッパーだと言ってきたけど、表立っては言わない人の数は計り知れない。世の中の人たちは誰かが先に言うのを待ってるんだ。最終的には、お前らはイケてない。世の中では「群れから外れないように馴染む」ということが最も重要なことになっている。

 

実際にはビルボードが聞いた質問の趣旨とRoyceの回答の趣旨は違うようにも思えるが、この「Sheeple」の声が今まで以上に大きくなっていると語った。恐らく「本当はリリシズムは今でも重要だけど、皆が流行りから承認されることを求める」というニュアンスでリリシズムに繋げたのだろう。そして、これはそのような人たちに「意見を言うな」と言っているのではなく、自分が本質的にやりたいことを無視し、自分自身がどうしたいのかもわからない人たちからの承認を得るために「寄せる」行動を取るのが本当に正しいのか?ということを説いているように思える。特に多くの意見を受け取るアーティストという立場では、上記の考えは非常に重要である。

ソーシャルメディアは「イノベーション」の一つである。イノベーションというと、ハイテクノロジーというイメージがあると思うが、以前「イノベーションとヒップホップ」という記事で書いたように、私の個人的な考えとしては「今まで特別な人にしか提供されていなかったことが、アイディアや技術の恩恵によって人々に一般化される」ことをイノベーションだと考えている。そういう意味ではソーシャルメディアは、誰でも大勢の人に声を届けることを可能にしたイノベーションである。そのため、大勢の人たちが意見を言うことができる場は素晴らしい。しかし、全員の意見を見ることができる場所ができた結果として、「はみ出る恐れ」によって逆に「自分自身」の論理的な意見を見失ってしまう人も多いだろう。自分自身が理解していないものでさえも、「インターネットで話題になっているから、これは事実/素晴らしい」「これを好きじゃない人は遅れてる」となる例はいくつか見てきた。

 

ヒップホップと情報収集?

これは以前取り上げた「ヒップホップとフェイクニュース」にも共通する話題かもしれない。以前Rakimが全く関与していないEric B. & Rakimのツイッターが「若い世代がヒップホップを破壊している」とツイートしたときも、実際にRakimが関与していないという声明をリサーチすることもせずに「Rakimがツイートした!」と報道したメディアは非常に多かった。そしてそのツイートにたいして、「Rakimがそう言ってるからそうなんだ!」というコメントをしていた人も多かったのだ。さらにはRakimが一言もそう言っていないにも関わらず、TMZが「Rakimはミレニアル世代がヒップホップを破壊している」と報道したときも、コメント欄は恐らくインタビューを全編見ていない人たちの「そうだそうだ!」という旨で溢れていた。このように、メディアのヘッドラインもアクセス数を稼ぐために偏ったものになっている時代で、「そう書いてあったから正しい」という考えは「Sheeple」への第一歩なのかもしれない。

音楽業界でもそうだが、プラットフォームが圧倒的な力を得たときに、共通して起こることがある。リスナー/消費者に平等に情報を与え、自分自身で判断させるのではなく、自分たちの尺度で「これは良い/これは悪い」と目に触れるものをコントロールしはじめる。もちろんプラットフォームにそれぞれカラーがあるので、それは当たり前であり、むしろそれがプラットフォームを立ち上げるという果てしなく長い行動を経て、成長させた者の特殊能力なのかもしれない。そのようなプラットフォームがありつつも、全員の意見を見ることができる時代で、アーティストが自分自身を持つことは今まで以上に重要になってくる。

読んだものを論理的な意見を持つための情報収集として使うのか、意見そのものにしてしまうのか?Royceの発言はそんなことを今一度考えるきっかけとなった。

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