40歳になってスケートボードをはじめたラッパーDel The Funky Homosapien。彼から学ぶ「別の業界で存在感を示すキャリアパス」

 

 

ヒップホップと関連深い

業界と言ったらどの業界を思い浮かぶだろうか?ファッションなどを思い浮かべる方が多いと思うが、実際にヒップホップアーティストでファッション業界に進出している人は多い。そのなかで、個人的には構図が非常に似ていて、カルチャーを守ることを重視している業界がスケートボード業界であると感じる。

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スケートボード文化は元々ヴェニスのサーファーたちから生まれた文化であるが、現在では非常に多様性に富んだものとなっている。正直ここまで多様性に寛容で、結束が強いカルチャーは他ではあまり見ないようにも感じる。

今回紹介するエピソードは「アンダーグラウンド」のベテラン「Del The Funky Homosapien(デル・ザ・ファンキー・ホモサピエン)」である。実際には多くの作品に参加しているので、知っている方も多いと思うのだが、2000年代以降ではGorillazの「Clint Eastwood」や「Rock the House」で知った方も多いだろう。彼はIce Cubeの従兄弟でもあり、1991年から活動しているベテランだ。Hieroglyphicsのメンバーでもある。

 

そんな彼は実はヒップホップ業界以外でもスケートボード業界でリスペクトを得ている。もちろんリアルタイムで当時のヒップホップを聞いていて、彼のファンであった人も多いと思うが、彼の楽曲をスケートボードのビデオやゲームで知ったという方も多いだろう。「Tony Hawks Pro Skater3」や「Skate 3」などの有名スケートボードゲームに楽曲がフィーチャリングされたり、1992年にはデッキブランド「Plan B」のQuestionableのビデオに使用されているのだ。彼の楽曲は何故スケートボード業界で評価されているのだろうか?

そんな彼は40歳になってスケートボードを始めたらしいのだが、そのことについて語っているNoiseyのインタビューを紹介したい。

 

Del:俺は元々スケーターたちと一緒に育ったんだ。でも小さいときにスケートして怪我したから、そこからスケートしていなかった。皆が思うようにスケートは「ある特定の人」しかできないことだと思っていた。でもRazorからキャスターボードというアニメの剣みたいなボードが出て、それに乗れるようになったことがきっかけで、本格的にスケートを始めるようになったんだ。

➖ あなたの楽曲は頻繁にスケートビデオやゲームに使用されており、スケート業界で評価されています。それは何故だと思いますか?

昔からスケーターやロック界隈のやつらと一緒につるんでたからだろうな。いわゆる「学校で嫌われてた奴ら」と一緒につるんでいたからだな。俺もその「学校で嫌われていた奴ら」の一人だったから、ジャンルに関係なくそういう「変な奴」と仲良かったんだ。俺はそいつらを変だとは思わなかったけどな。俺はそういうやつらに影響されているから、俺のオーディエンスがスケートカルチャーに属しているやつだってことは理解できるよ。

 

元々スケートは「とある特定の人」にしかできないことだと思っていたと語るDel。これはスケートに限らず、多くの分野にも共通することであろう。「ラップがやりたいけど、自分にはできない」と思う人もいるかもしれないが、何かを始めるにおいて遅すぎるということはないのだろう(もちろん90歳になってスケートを始めてプロを目指すのは遅すぎるが)。

そして彼のキャリアのポイントとしては、少年時代、青年時代の経験がにじみ出ていることだろう。スケーターたちやロック界隈の奴らとつるんでいたと語る彼であるが、このように「他の分野」の人たちと一緒に生活し、カルチャーの温度感を理解するだけでも相当キャリアにおいて有利になると感じる。元々どっぷりスケートカルチャーに浸かっていたわけではなかった彼であるが、肌感覚で理解していたカルチャーが彼の楽曲からにじみ出ていたのだろう。実際に彼はこちらのインタビュー動画などでもパンクやハードコアなどの音楽を愛しているということ語っている。彼の2000年代以降の活動を見ていると、他の業界を理解することの強さを学ぶことができる。

 

音楽業界の現状?他の業界?

彼は実際にこちらのスケートボードマガジンSlapのインタビューでは、音楽業界についてこのように語っていた。

 

Del:現在のヒップホップ業界はビジネスを意識するあまり、ワックなアーティストが多くなってしまった。もちろんカッコいいアーティストも多いが、リスナーを「何にでもついて行く羊」として見て「こういうのが欲しいんだろ?」という感じで音楽ビジネスが進んでしまったからワックなものも増えた。そしてそれをやり続けた結果、最終的には誰も音楽を「買わなく」なったんだ。不運なのは、それが俺が元々属していた業界であったことだ。俺はその「業界」に流されないから別に良いんだけど。

 

彼は音楽業界の現状について語った。この現状で、彼のようなアンダーグラウンドアーティストがリスペクトされるのは、スケートボード業界であった。実際に彼は数々のビデオやゲームに楽曲提供するだけではなく、スケートゲームのスコアリング、Plan Bとのコラボデッキなどもリリースしている。そしてサンフランシスコのスケートブランドFTCやPlan Bのイベントなどでも、MCとしてライブ出演をしている。彼は確かにアンダーグラウンドなラッパーかもしれないが、Gorillazなどの「音楽業界」の仕事に加え、スケートボード業界からの仕事も得ることができているのだ。これは現代のアーティストにとって非常に重要なメンタリティである。

https://www.grindtv.com/skateboarding/plan-b-and-del-collab-o/

 

カルチャーを語り継ぎリスナーの教育というものが行き渡れば、音楽業界だけでアーティストへの分配ができるかもしれないが、実際にこの「他の分野でリスペクトを得る」というメンタリティは非常に重要であり、多くのアーティストが実践しているものである。実際に日本で大成功しているバンドSuchmosも、アパレル業界から攻めたとの内容がこちらのインタビューにて語られている。もちろんアパレル業界もスケート業界も、「音楽ファン」という観点で言えば、音楽と相関性の強い分野のステークホルダーなので、親和性も強いだろう。親和性がない例で成功している例としてはデーモン閣下と相撲業界かもしれない。

このように上辺だけではなく、他のカルチャーを「Embrace」し、そちらの分野でもプロップスを得る活動は現代のアーティストにとって重要なオプションの一つとなっている。それがハリボテなものにならないように、少年時代や青年時代の経験が非常に重要になってきていると感じる。Del The Funky Homosapienのこのエピソードを見ていると、「何歳になっても新しい活動ができる」ということ、そして他の分野でもプロップスを得る重要性を学ぶことができるのだ。

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