Dr. Dreとエミネムの名曲「Forgot About Dre」のMV制作ドキュメンタリー。彼のプロフェッショナル意識

 

 

ヒップホップMV

の世界にはリリックの世界観を出すためにプロットに凝っているMVが多く存在する。もちろん近年はインディペンデントアーティストにもプラットフォームが与えられるようになったため、歩きながらラップをする系のMVであれば低予算で製作できるようになった。しかし個人的には2000年代初頭のMVが一番凝っていて面白かったようにも思える。

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そんななか、ヒップホップサウンドを2000年代へと誘ったアルバムがDr. Dreの「2001」であろう。1999年にリリースされたこちらのアルバムはまるで映画のように鮮明で、サウンドとしても今聞いても全く色あせないクオリティである。そんなマスターピース「2001」の2ndシングルとなったのがエミネムをフィーチャリングした「Forgot About Dre」だ。

こちらは「今までDreのことを忘れていた人たち」へ書いた曲であり、まだDreが第一線で活躍できることを証明した曲である。そんな「Forgot About Dre」のMV製作ドキュメンタリーが面白いので紹介をしたい。

 

Dr. Dreはかなりプロフェッショナル意識が高く、完璧主義者であることが知られているが、このドキュメンタリーからもそのことが伝わってくる。彼はディレクターとのミーティングも毎回出席し、人に丸投げすることはなく、全ての意思決定プロセスにて自分の頭で考える。

 

Dre:俺は自分が出すエンターテインメントについてはかなり真剣だし、熱意がある。俺の仕事は「プロデューサー」だ。俺はパフォーマーではないが、色々整理して「実現」をさせるのが俺の仕事だ。

 

実際に出演するキャストのオーディションも自らが出席し、その人の演技がコンセプトに合うかをその目で判断するのだ。そして撮影は1999年12月26という、2000年に変わる直前の1000年に1度のホリデーシーズンに開始された。Dr. Dreはセットに朝8時入りしており、なんと撮影クルーよりも前に現場入りをするときもあるらしい。夜に活動することが多いアーティストとしては「俺にとってはかなり早い時間だ。朝8時の外ってこんな感じの景色なんだな」と語っている。そして夜まで撮影した後、次の日27日の夕方に集合し、夜のシーンを撮影する。27日の夜21時23分にエミネムが合流し、ロケを何度か移動し、朝6時まで撮影を続ける。この間Dr. Dreはずっと現場にて撮影しっぱなしである。この日の最後のロケ地が「NYC Street Corner」と書いてあるのだが、位置的にも恐らくハリウッドのパラマウントスタジオにあるニューヨークの街を再現したスタジオであることが予想できる。

そして次の撮影は28日の16時からであり、朝6時まで撮影をした後に少し睡眠をとっての集合となった。かの有名な「お婆さんの家に車でツッコむシーン」を繰り返し撮影をする。撮影した映像を見て非常に楽しそうに皆で笑っているのが印象的だ。そしてまた朝6時頃まで撮影をし続ける。ここでクランクアップとなったこのMVの完成品は、MTV VMAにて「ベスト・ラップ・ビデオ」に選出されている。

このビデオは1999年の12月22日にディレクターと打ち合わせをし、29日の朝には撮影が終わっていたのである。元々のコンセプトを考えていた期間はかなり長かったらしいが、このビデオからも、Dr. Dreの「ものづくり」へのこだわりと、作品に注いでいる愛情を見ることができる。単純に「やっぱエンターテイナーは体力あるな」と感じることもあるが、彼は全てのプロセスに携わっており、完成品が絶対に自分のクオリティに見合うように逐一チェックしているのだ。皆が休んでいるホリデーシーズンにも関わらず撮影をする彼の姿からは、自身を「ワーカホリック」と呼んでいる理由が見えてくる。もちろん充分に休むのは非常に重要だが、このように「やらないといけないときは、やる」という精神があるからこそ、「瞬間」を凝縮させた作品が出来上がるのだろう。しかし体力的に大変そうに見えても、皆で楽しそうに撮影している「一丸となって作品をつくる濃縮された経験」はいつの時代もプライスレスである。

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