【後半】読んで楽しむプレイリスト!?STOKED!×Playatunerのコラボプレイリストに込められた連想ゲーム的選曲を解説
前半に引き続き、この度Filtr Japanが展開するSTOKED!とのコラボプレイリストの「連想ゲーム」的な意図を解説したい。こちらのプレイリストの反響を、今後「ウィークリー・プレイリスト」をPlayatunerのコンテンツの一つとしてガッツリ導入するかどうかの検証材料にしようと思っているので、Playatuner読者の皆様には是非フォローを頂きたい次第だ。また、今後のコラボの可能性も含め、フォローすると音楽をディスカバーできることは間違い無しだ。(プレイリスト前半⬇)
音楽メディアのプレイリストというと、その週に話題になったアーティストや、リリースされた曲が選曲されている印象が強いが、新しい試みとして「読みながら聞くプレイリスト」に挑戦してみた。前半でも説明したが、もう一度STOKED!×Playatunerコラボで勝手に作った2つのルールをおさらいしよう。
① 「最新」だけではなく新旧アーティストを含める。
② 連想ゲーム的な発想で、順番に聞く楽しみを増やす。しかしずっと同じ界隈や雰囲気の曲が続かないように、「連想」は緩めで、仕切り直し、こじつけもあり。
その結果、このようなプレイリストとなった。
前半では宇宙繋がりで、宇宙的センスを持っているぶっ飛んだバンドKNOWERの「Overtime」を選曲した。実際にKNOWERのライブは素晴らしく、演奏のレベルも高い。彼らは今年の5月に来日し、ブルーノート東京を含むツアーを実行するのだが、今までブルー・ノート東京では多くの素晴らしいバンドを見てきた。そのなかでも非常に印象に残っているのが、最強のヒップホップバンドThe Rootsである。
先進国の問題
The Rootsのライブで最も印象に残っているのが「The Next Movement「と、レッド・ツェッペリンの「Immigrant Song」やガンズ・アンド・ローゼズの「Sweet Child of Mine」を含むカバーセッションだったのだが、あえて過小評価されていると感じるアルバム「The Tipping Point」から一番好きな曲「Guns Are Drawn」を選曲。
「銃が取り出されたら、あなたはどうする?」というフレーズではじまるこの曲は、「問題から逃げることができない。生き残るのがまるでロシアンルーレットで決められているようだ。彼らは俺らが棺桶に入ってるのを見たい。子供を失って母親が泣く事件が頻繁に起こる」とこの世の中で起こっている問題を語っている。この曲はThe Rootsのなかでもトップ3に入るぐらい好きな曲なのだが、ギターの後ろノリのリズムと絡み合うバスドラが感情を揺さぶる。この曲は「アメリカという”先進国”で起こる問題」という意味でも次に連想した曲がBrent Faiyazの「First World Problems/Nobody Carez」を選曲した。Brent FaiyazはBest of 2017にも選出したアーティストなのだが、この曲はタイトル通り先進国で起こる問題を非常に日常的な切り口で語っている。「毎日遅く帰宅し、シンクで洗濯をする。人に色々言われるけど、家賃さえ払えればいい」という”等身大”の問題について歌う。
R&Bからラブソング
この後はかなりざっくりなのだが、Brent Faiyazは久しぶりに現行の男性のR&Bアーティストでハマった存在だった。特に近年は女性のR&Bアーティストや昔のアーティストを聞くことが多かったので、その中でも男性でR&Bの世界を変えた存在を考えたときに思い浮かんだのが、ニュー・ジャック・スウィングの祖でもあるTeddy RileyのグループGuyであった。Guyの一番好きな曲「You Can Call Me Crazy」を選曲。
こちらの曲は「多くの女の子と遊んでいたが、あなたに出会って世界が変わった。クレイジーだと思うかも知れないが、これは本当だ」と「恋に落ちた遊び人」の曲である。前半で出てきた普遍的な愛と違う「恋愛」について歌ったラブソングということで、ここからラブソングの流れになる。私はよくよく考えると、普段あまりラブソングを聞かないのだが、男性から女性に向けたラブソングのお気に入りの曲として、Princeの1stアルバム「For You」に収録されている「In Love」を選曲。そして現代のラブソングで、非常にピュアだと感じたRussの「Wife You Up」も選曲。こちらの「今は常に注目されているけど、俺の曲の7再生しかない時からあなたは愛してくれていた」というフレーズが非常に印象的だ。また、アルバム「2001」にてDr. Dreの右腕を努めたScott Storchがプロデュースしているのもあり、シンプルだが耳に残る。
その後、私の好きなプロデューサーであるGramatikの「So Much For Love」を選曲。こちらはDee Edwardsの名ラブソング「Why Can’t There Be Love」をサンプリングしたトラックであり、MVも何とも言えない感情になる。こちらの曲はTyler, the Creatorの「Deathcamp」でもおなじみのサンプルである。
そして近年のラブソングの「リアル」なフィーリングを非常に上手く表現しているアーティストがSZAであろう。PrinceとRussのラブソングと比べても非常に生々しい「あなたは私の存在に気がついているの?」という題材の「Anything」を選曲した。
この次の流れが個人的には気に入っているのだが、SZAは多くの感情を抱えている人だ。それを音楽という形で発散することにより、多くの人の共感を得ている。しかし時に抱えている感情が多すぎると、生きづらくなることもあるだろう。そこで登場するのがErykah Baduの「Bag Lady」である。この曲は「感情」を「バッグ/荷物」に例え、新しい出会いや関係を求めているが、多くの荷物を抱えすぎて上手く動けない女性を描いているのだ。「そんなに荷物を持っていると、いつか背中を痛めるよ。常に持っていないといけないものは”自分”だけ」というリリックに胸が軽くなる人も多いのではないだろうか。
グラインドとハッスル
この曲はDr. Dreの「Xxplosive」と同じくSoul Mann & The Brothersの「Bumpy’s Lament」をサンプルしているのだが、このサンプルを聞く度に思い出すことがある。それは韓国アメリカンであり、LAを拠点に世界で活躍するラッパーDumbfoundeadのライブである。まだこの演出をやっているかわからないのだが、昔のライブでは彼の人気曲「Are We There Yet」の途中に「Xxplosive」のビートを挿入する演出をしていたのだ。また彼の近年のサウンドの変化も紹介したかったのもあり、Dumbfoundeadの「Every Last Drop」を選曲。この曲は、アメリカで活動するアジア人として、最後の一滴まで「グラインド」し続けると意思表明をする内容となっている。
そして「最後の一滴を搾り取るまで頑張ろう」と思わせてくれる楽曲と言えば、Nasの「One Mic」である。以前も紹介したように、Nasは言い訳を言わないのだ。彼は一つのマイクさえあれば、自分の目的を成し遂げることができる。この曲に勇気づけられた人は多いのではないだろうか?そして個人的に「やる気が出る曲」という繋がりで入れたのがRedmanの「Brick City Mashin’」である。「Take money money! Stolen cars, Counterfeit bills, freak that shit out」という「なんでもありだけど金稼ぐぜ」というメンタリティでハチャメチャにテンションを上げる。
そしてThe Beatnutsの「Duck Season」は単純にセルフボーストの曲として好きであり、「オレ最強だから」という気分になれるので、ここで選曲。Mos Def、Pharoahe Monch、Nate Doggの「Oh No」は間違いなくクラシックであるが、Mos Defの「俺はインディペンデントに自分のゲームをプレイした、お前らが許可が欲しがっている間に勝手に踏み込んで掴んだ」というリリック、そしてNate Doggの「ハッスルするのを恐れていない。7日間同じ服を着つづけている」というリリックが、自分の人生の理念のうちの一つとなっていると言っても過言ではない。「誰かの許可がないと動けない」ではなく「自分が動いて何かを変える」という意味でも、この曲は私の活力である。
コンプレックスの裏返しとジャズとヒップホップ
ここで一旦セルフボーストや、自信をアップするリリックと逆の方向に行ってみようと思う。自分に自信を持つことと、自分を実際の中身以上に強く見せることは違うのだ。自分に自信を持つことは良いことであるが、認められたいがために自分を強く見せるのは精神的にも健全ではない。そんな曲がケンドリック・ラマーの「You Aint Gotta Lie」である。「皆を感心させるために、強がったり悪ぶったりしなくてもいいんだよ」と言った曲で、「最も声が大きい人は、逆にコンプレックスを抱えている」という内容も語られている。
以前もPlayatunerにて書いたが、ケンドリック・ラマーのTPABは、ジャズ・ミュージシャンとヒップホップアーティストのコラボサイクルを促進した作品になったと感じている。そんなヒップホップの貢献してきたジャズ・ミュージシャンと言えばPlayatunerでも取り上げた凄腕ドラマーのChris Daveであろう。Chris Daveが叩いており、数々のソウル/ヒップホップアーティストのベースを演奏しているPino Palladinoが参加しているJose Jamesの定番曲「Vanguard」を選曲。そして彼らにとって非常に大きな影響となったプロデューサー、J DillaがプロデュースするSlum Villageの「What It’s All About」も、ジャズとヒップホップのサイクル繋がりで選曲。その後はJay-Zの「Rock Boys」に参加し、ヒップホップに貢献してきたジャズ・ミュージシャンであり、J Dillaの影響で「アーティスト」になったトランペッター、Keyon Harroldである。彼はPlayatunerでもインタビューしているのもあり、ヒップホップに貢献したジャズ・ミュージシャンという括りですぐに思いついた。
種を植える
実は私はKeyon Harroldをインタビューする以前は、彼についてそこまで詳しくなかったのだが、彼のインタビューはかなり印象に残っている。彼の「種を植える」という話しは常に頭に残っている。そんな「成功哲学」とも言える話だが、若くしていつも私をインスパイアしてくれる「クリエイター」がTyler, the Creatorである。彼のアルバム「Flower Boy」は、独自の世界観でコアなファンを獲得しており、彼の「ブランディング」というものには感銘を受ける。
さらにインタビュー繋がりであり、Odd Future繋がりで、以前インタビューしたグラミー・ノミネートバンドThe Internetを選曲。こちらの「Famous」はボーナス・トラックであり、「あなたのマネージャーにはなりたくないけど、才能あるあなたを有名にしてあげたい」という曲になっている。そのような人が現れたら素敵であるが、実際には自分で「種を植えている」人にしかこのような機会はこないだろう。現れても少し怪しいかもしれない。
Playatunerの意味
最後の曲は今後Playatunerにて始まるプロジェクトに関連するものであり、Playatunerにとって重要なメッセージが込められている曲である。「Playatunerにはどういう意味が込められているの?」という質問を多く頂くが、この曲のラスト8小節では、その名前の意味が明かされている。こちらは別途「スタッフブログ」という形で解説をしたいのだが、今のところはリリックだけ紹介しておこうと思う。
This is art music and bars and hopes / So we start moving with stars and dope Rhymes / Tryin’ to tell a “Message” like Flash Furious Five / And gain knowledge with curious vibes / Empower the artists and be a student / But we still real playas fucking with different types of music / And we tune in to this culture movement / That’s why we call ourselves the “playatuner”
というわけで、全36曲の流れを解説した。是非今後のコラボの可能性も含め、プレイリストをフォローして頂けると幸いです!
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