読んで楽しむプレイリスト!?STOKED!×Playatunerのコラボプレイリストに込められた連想ゲーム的選曲を解説【前半】

 

 

後半はこちら!

 

プレイリスト

は現代では音楽をディスカバーするのに重要なファクターとなった。日本ではYouTube以外では、CDショップの店頭の展開であったり、ラジオ/テレビがメインの「発見」媒体となっているだろう。しかし海外では主にSpotifyのプレイリストがメインの発見媒体となっており、プレイリストビジネスが成り立っているというのが現状だ。多くのアーティストがプレイリストがきっかけでバズったりしている。Blackbearはまさにその一例であろう。

水面下で「麻薬王」的な存在となったBlackbear。新世代アーティストの面白い売れ方を分析、Spotifyの存在

 

Playatunerでもプレイリストを正式に、定期的に作り続けたい、と感じていたところ、この度Filtr Japanが展開するSTOKED!とのコラボプレイリストのお誘いを頂き、選曲をすることになった。こちらのプレイリストの反響を、今後「ウィークリー・プレイリスト」をPlayatunerのコンテンツの一つとしてガッツリ導入するかどうかの検証材料にしようと思っているので、Playatuner読者の皆様には是非フォローを頂きたい次第だ。また、今後のコラボの可能性も含め、フォローすると音楽をディスカバーできることは間違い無しだ。

音楽メディアのプレイリストというと、その週に話題になったアーティストや、リリースされた曲が選曲されている印象が強いが、新しい試みとして「読みながら聞くプレイリスト」に挑戦してみた。そのため、この度のSTOKED!×Playatunerコラボでは勝手に2つのルールを作った。

① 「最新」だけではなく新旧アーティストを含める。
② 連想ゲーム的な発想で、順番に聞く楽しみを増やす。しかしずっと同じ界隈や雰囲気の曲が続かないように、「連想」は緩めで、仕切り直し、こじつけもあり。

その結果、このようなプレイリストとなった。

 

2Pac→Lil Xan→2Pacの流れ

最初はインパクトが強い選曲をしたいという想いがあり、とあるストーリーを作ろうと思った。近年は若手ラッパーがレジェンドたちを軽視し、ベテランたちが怒るという構図が頻繁に起こっていた。その構図にたいしてN.O.R.E.が素晴らしい回答をしていたのだが、最近その分野で話題になったのがLil Xanである。Lil XanはXanax中毒から抜け出し、Xanax反対ムーブメントをやっていたのもあり、結構好きだったのだが、彼は2Pacの音楽を「つまらない」と評価したことがきっかけでヒップホップ業界で炎上していた。「アーティスト」として成長するために音楽をディグってきた経験が少ないアーティストだと、「昔のサウンド」というだけで、その素晴らしさを探して認識する前に「つまらない」と強気になってしまうのはよくあることだろう。恐らく彼も将来的に「え、久しぶりに聞いたら2Pacも、昔の音楽も良いじゃん!」と感じると思うが、少し有名になるタイミングが悪かったのかもしれない。

また2Pacがまだ生きていたら、確実にこのようなことは言わなかったであろう。そこで「怒った2PacがLil Xanに懸賞金をかける」というストーリーを勝手に脳内で作った。2Pacの死後にリリースされたスヌープとの楽曲「Wanted Dead or Alive」と、彼の痛烈なディストラック「Hit Em Up」でLil Xanを挟み撃ちにするストーリーでこのプレイリストは始まる。Lil Xanが「つまらない」と言っていたアーティストと、彼の曲を連続で聞いて、時代によっていかにサウンドの基盤が変わるか?ということを意識するのも面白いであろう。特に「Wanted Dead or Alive」のスヌープのヴァースの出だしのフローが個人的には秀逸すぎて、スヌープのかっこよさを再認識する曲でもある。

 

2Pac→Eddie Hazel→LoopTroop→OutKastから始まるアトランタ→Blitz the Ambassador

緩い連想として、その次に考えたのが「2Pacの代表曲とは?」という質問である。南カリフォルニア育ちのわたし的にもDr. Dreプロデュースの「California Love」は確実に外せない。カリフォルニアへの愛を語ったこちらの楽曲であるが、「カリフォルニア愛」と言ったとき、私のなかで絶対に思い浮かぶアンセムがある。それはEddie Hazelの「California Dreamin’」である。

Eddie HazelはファンクパイオニアP-Funkのギタリストであり、1992年に亡くなっている。彼の「California Dreamin’」は「寒い場所からカリフォルニアの夢を見ている」という楽曲であり、「落ち葉が茶色く、空が灰色な場所で、冬の日を歩いている。もしLAにいたら暖かく安全だったであろう。カリフォルニアを夢見ている」という歌詞に非常に共感をするのだ。他の場所から感じる「カリフォルニア愛」というものが伝わってくる。

ヒップホップにおけるカリフォルニアを考えたとき、思い出すのがIce Cubeが語った「ヒップホップと地域性」ということだ。彼は「様々な地域から、様々な人が表に出てきてる状態は美しい」と語っていたので、他の国で最も好きなヒップホップグループについて考えてみた。そこで真っ先に思いついたのがスウェーデンのLoopTroopというヒップホップ・グループであった。以前LoopTroopのメンバーPromoeのグラフィティに対する想いを紹介したが、彼らはスウェーデンにてヒップホップの精神を引き継いできたグループであるように感じており、最初の3枚のアルバムは非常に好みだ。プレイリストにいれた「Fort Europa」という曲は「ベルリンの壁が崩壊された後も、ヨーロッパは格差の壁をつくった」と語っており、ヨーロッパならではのヒップホップを展開している。

「地域ならでは」という言葉を考えたとき、アメリカ内で頭角を表しているのはアトランタの存在である。アトランタを世に紹介したパイオニアと言ったら私が敬愛してやまないデュオOutKastである。ここではアトランタ出身という、ヒップホップ業界では「エイリアン」的な存在を表現した「ATLiens」という曲を選曲した。OutKastのAndre 3000は音楽活動を休止してしまったかも知れないが、Big Boiは今でもソロアルバムだけではなく、頻繁にコラボをしている。そんな彼とPhantogramのコラボEPからの楽曲「Put it On Her」も選曲した。こちらのEPもおすすめである。さらにOutKastと言ったら、近年のアトランタのイメージとは別のアトランタのヒップホップの流れを思い浮かべる。その流れの「新時代」と言ったらJ.I.D.とEarthgangであろう。特にJ.I.D.は素晴らしいリリシストであるが、歌ものもイケるので、「Hereditary」を選曲。その後は「地域性」と「外国出身」というキーワードのまま、ガーナ出身のラッパーBlitz the Ambassadorの最もアグレッシブな曲「B-Boy Massacre」を選曲。

 

Evidence→De La Soul→The Friends of Distinction→George Clinton

先程は「B-Boy Massacre」というアグレッシブなヒップホップであったので、逆に「自分のVulnerability」を表現し、自分の人生の痛みによって他人の痛みを緩和するヒップホップの「優しい」側面について考えてみた。その「優しさ」を感じるのがEvidenceである。彼の「By My Side Too」は、彼のパートナーの乳癌の治療中に書いた楽曲である。母親を癌で亡くし、息子が生まれた。息子が生まれたことがきっかけでパートナーが乳癌に気がつき、現在も治療中であるが、今も生きることができている。母の「死」と息子の「生」とパートナーの癌が隣あわせになり、彼は生まれたばかりの息子の目をみて「俺たちは生きている」ということを改めて感じる。詳しくはこちらで読んでほしい。その後は「痛み」ということをにフォーカスし、「痛みが良くしてくれる」という、痛みを乗り越える試練として捉えたDe La Soulの楽曲「Pain」を選曲した。

この次は非常にざっくりなのだが、上記の楽曲を聞いていると人間としての「愛」を感じるようにも思う。それは「恋愛」というよりは人間として持っている「共感」という愛である。恋愛的な愛はまたあとで出て来るのだが、そのような普遍的な愛を考えたとき、いつも思い受かべるのがThe Friends of Distinctionの「When a Little Love Began to Die」である。The Friends of Distinctionは以前Playatunerでも紹介している60年代〜70年代のボーカルグループなのだが、この楽曲の「もしあなたの涙を全て私が流せたら、もし全ての恐怖をあなたと共感できたら」と「この愛を繋ぎ止めないと、ここで死なせるわけにはいかない」というフレーズが印象的である。どちらかと言うと、これは恋愛的な楽曲であるが、このフレーズが普遍的な愛として印象に残っている。

The Friends of Distinctionを思い浮かべたとき、思い出すのがオリジナルメンバーのジェシカがジョージ・クリントンの「Computer Games」「R&B Skeletons in the Closet」「Dope Dogs」にボーカルとして参加していることだ。P-Funkではなく、ジョージ・クリントン名義の楽曲で私が最も好きなのが「If Anybody gets Funked Up (It’s Gonna Be You) Colin Wolf mix」である。Eric Sermonのミックスもアルバムに入っているのだが、Dr. Dreの「The Chronic」でも活躍したColin Wolfeのミックスのほうがファンクを感じる。

 

George Clintonからはじまる宇宙

この楽曲が含まれている「T.A.P.O.A.F.O.M.」は「The Awesome Power of a Fully Operational Mothership(全操縦型マザーシップの最高のパワー)」という意味なのだが、ファンク・ミュージックの「宇宙」の世界観を作ったのはジョージ・クリントンとP-Funkであろう。そんな宇宙にフォーカスを当て、宇宙的なMVで、「これあり?」と言いたくなるような音楽/MVをつくるKNOWERを選曲した。そして「3030年に宇宙を支配する巨大企業と戦うDel the Funky Homosapien」というコンセプト・アルバム「Deltron 3030」から同名曲を「宇宙」という繋がりで選曲。

ここで一旦仕切り直しということで、プレイリストをフォロー!後半はこちら!

【後半】読んで楽しむプレイリスト!?STOKED!×Playatunerのコラボプレイリストに込められた連想ゲーム的選曲を解説

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