Googleトップページの「ヒップホップ誕生記念日」プロジェクトに込められた想い。プロジェクトメンバーたちが語る文化
ヒップホップが誕生して
44年経った。1973年8月11日に18歳のジャマイカンアメリカンのKool Hercという名前のDJがとあるパーティーを開催した。その場所はニューヨークのブロンクスにあるSedgwick通りにある建物であり、彼は誰もやったことがないスタイルでDJをしたのである。それは曲の「ブレイク部分」を繋げ合わせ、ビートを繋げ続けるスタイルであった。
そんなヒップホップの誕生を祝おうと企画したのがGoogleのチームである。Googleのトップページがブレイクを繋げ、ヒップホップDJ気分を味わえるWEBアプリになっていたのは既にご存知だと思うが、製作者たちが込めた想いをインタビューにて語っているので、紹介をしたい。日付が変わったら見ることができなくなる可能性がある。)
このプロジェクトはグーグル社員のKevin Burke、Ryan Germick、Perla Camposの3人に加え、番組「Yo! MTV Raps」の元ホストのFab 5 Freddyと、Def Jamの元祖クリエイティブ・ディレクターのCey Adamsによって遂行された。彼らがグーグルのインタビューページにて語った、ヒップホップと今回のプロジェクトに対する想いが面白かったので、一部抜粋をして紹介をしたい。
Kevin:ヒップホップを高校の吹奏楽で演奏したり、大学のラジオでヒップホップを選曲したり、新卒でOutKastのMs. JacksonのMVの仕事をしたり、ヒップホップは常に自分の人生の一部であった。だからその愛をGoogleのトップページにて、Doodleとして発信したかった。このインタラクティブなターンテーブルのコンセプトを発案して、マネージャーRyanに見せたんだ。そしたら彼が「明日作ろう!」と言ってくれた。
Perla:最初から私たちは大きく考えていた。ヒップホップは世の中の様々なカルチャーを影響してきたにも関わらず、オリジンを知らない人が意外と多い。だから私たちはその誕生にフォーカスをし、パイオニアとなった人たちを紹介して、祝おうと思ったの。GoogleのトップページのDoodleのコンセプトは、もっと世間に認識されるべき偉大な人たちに声を与えること。
Fab:ヒップホップのエッセンスの根底はアルゴリズムのようだ。どの言語でも、どの国籍でも、正しくやれれば指数関数的に成長をする。始まった70年代でも、このカルチャーはあまり多くのものを持っていない人たちから始まった。そのような人たちが「私はここにいる。私は重要だ。」と言ったんだ。
Perla:トップページのDoodleからは「自分」を感じて欲しいと思っている。自分を象徴して、自分に語りかけるものを感じて欲しい。
Kevin:この「パーティー」自体を祝えることが嬉しい。人々が踊って、パフォーマンスをする。とてもポジティブな空間を祝っているんだ。
本来はもっと濃く、長いインタビューであったが、そのなかでも印象深かった内容を抜粋した。彼らのヒップホップに対する想い、そしてGoogleという巨大なアウトレットを使用し、文化の一員として何かを還元したいという想い… Googleという会社がここまで人々の生活に溶け込んているのも、このようにカルチャーに対する理念を持った人々が多いからなのかもしれない。日付が変わったらページも変わってしまうが、何かしらの形で残してほしいと願う。
そしてこのプロジェクトに欠かせない人物がもう一人いる。それはGoogleが所有するYouTubeのグローバルヘッドであり、元Def Jamの代表のLyor Cohenである。彼が綴った文章が面白かったので、一部抜粋をして紹介をしたい。
ヒップホップは手に届くものだった。多くのリソースを持っていない、努力家の子供たちはターンテーブルを強い表現力をもった楽器に変えることができたんだ。DJ Kool Herc、DJ Hollywood、Grandmaster Flashのような人たちの活動が、NYの5つの地区とその外に音楽/アート/ダンスのカルチャーを与えた。
初期ヒップホップはバイオレンスやドラッグカルチャーに立ち向かったものでもあった。私の大切な友人であり、最初のクライアントのKurtis Blowがこのようにいっていた。「通りの片方では、大きな建物が燃え落ちていた…その反対側では子供たちが【Hope(希望)と舞い上がる。Dope(ドラッグ)と堕ちる】というグラフィティメッセージを掲げていた。」ネガティブを跳ね返すメッセージがコミュニティを団結させた。
ヒップホップは創設者たちが考えていた効果を発揮した。それが意図的であったとしても、違ったとしても。どこからでも手が届き、この区切られた世界の誰もが共感ができるカルチャーと居場所を、音楽の最前線に提供したんだ。その精神で、何十億もの人のたちにこの合言葉を伝えたい。「Yes, yes Y’all! And it WON’T Stop」この精神は今後も止まらない。
彼が綴った文章は素晴らしいものであった。1992年生まれの私はKool Hercのパーティーにいたわけではない。Run DMCやPublic Enemyもリアルタイムで見てきたわけでもない。実際にその場にいた人たちが個々で何を感じ、一人ひとりがどのような想いでヒップホップに携わってきたかはわからない。しかしその個人が感じていたことが積み重なり、大きな精神が現代まで受け継がれてきたのは伝わってくる。そして巡り巡って私のような者の人生にも入ってくる。
文化というものは、まるで意志がある生物のようだと感じる。意志のある生物は1人では生きていけない場合が多い。周りの人たちと意志を共有し、常に新しい栄養分を与えないと止まり、死んでしまう。しかし生物と大きく違うのは、新しい栄養分/役割/目的が形成され続ける限り、文化は止まらずに前に進み続けるということだ。そしてその栄養分を私たち人間の「前に進む原動力」として還元してくれる。「Yes, yes Y’all! And it WON’T Stop」というフレーズは、言葉通り「止まらない」ための原動力を相互的に補完し合う歯車として、私たちに働きかけてくれているのかもしれない。
ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのアーティスト兼Playatunerの代表。
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