リスクを抱え「人材」を獲得する重要さ。50 Centとエミネムの関係から考える。

 

 

音楽レーベルにとって

最も重要なことは「人材獲得」であると感じる。この場合の「人材」といえばアーティストやプロデューサーのことである。今まで歴史を作ってきたレーベルにはもちろんスターアクトが所属しており、レーベルとアーティストたちは二人三脚で歩んできた。(アーティストが一方的に搾取される場合もあるが)

ケンドリック・ラマーがTDEのメンバーとの関係について語る。一緒にのし上がった「ファミリー」

 

そんななか、アーティストを獲得するに当たって様々な葛藤やドラマが繰り広げられる場合もある。Dr. Dreがエミネムと契約したときの話は、まさに「ドラマ」であろう。そんなドラマチックなエピソードであるが、契約されたおかげもあり、エミネムは一役スターになれたのだ。それではエミネムが50 Centを仲間に入れたときはどうか?エミネムの行動からレーベルの本質を読み解きたい。

エミネムが50 Centを彼のShady Recordsに契約したのは周知の事実である。当時50 Centが契約されたときは、今の「バズ」とは比べ物にならないぐらいの話題であったと感じる。そんなエミネムと50 Centの関係を紐解いたインタビュー動画をまずは紹介をしたい。

 

Sha Money:この男(50 Cent)は当時、病院のベッドに寝ていた男だ。レーベルは彼との契約を解除したし、パブリッシングとも契約したばっかだったけど、「あなたとはビジネスはできない」と言われてなかったことにされたんだ。

 

50 Centとの長年のコラボレーターでありプロデューサーのSha Moneyは病室にいた50 Centの状態を語った。この「病室にいた期間」というのは以前Playatunerでも書いた「9発撃たれた事件」のことである。この事件に関してはこちらを読んでほしい。さらにこのドキュメントはこのように続く。

 

エミネム:俺のマネージャーが50 Centの「Guess Who’s Back」を聞かせてくれたんだ。最初の数曲で「Yo He’s Back(彼は帰ってきた)」って思ったんだ。

Paul Rosenberg(エミネムのマネージャー):俺は50 Centの弁護士から音源をもらったんだ。その弁護士がたまたまエミネムの弁護士でもあったんだ。当時エミネムにも聞かせようと思ったんだけど、エミネムは8 Mileの撮影と「The Eminem Show」の制作をしていたから、自分のことにフォーカスをしていたんだ。その後、「Guess Who’s Back」をその弁護士からもらったときに、彼に「これは絶対に聞かないと!」って伝えたんだ。

エミネム:当時そのCDを聞いて、彼がまだどことも契約していないことを知ったんだ。「もしかしたら一緒に何かできるかもしれない」と思って、彼の話を聞こうと思ったんだ。

 

50 Centの音源を聞いた経緯を説明したエミネムと彼のマネージャーのポール。なんと同じ弁護士を雇っており、その奇跡的な共通点が50 Centとエミネムを巡りあわせたのだ。さらにこの記事の本質となる発言をピックアップする。

 

Tony Yayo:何が凄いって、他の人たちやレーベルは、あの事件もあり50 Centを怖がっていたんだ。でもエミネムとDr. Dreはそのなかでも立ち上がったんだ。

Paul Rosenberg:俺らが最初にDr. Dreに「50 Centと契約したい」って話したとき、彼は「その心の準備はできてるのか?」と聞いてきた。俺らは「できてる。でもあなたの手助けも必要なんだ。」と言ったんだ。

DJ Whoo Kid:エミネムは「俺の責任でやる。”Shady Records”にて俺の下に加入してもらう。Aftermathに入らなくてもいい。今後何があったとしても、俺が全部の責任をとる。」って言ったんだ。

 

9発撃たれた事件がきっかけで、レーベルからドロップされた50 Centの前に現れ、契約したのがエミネムとDr. Dreであった。Dr. Dreは様々なアーティストを発掘し、世に出してきたプロデューサーとしても、アーティストのお世話をすることの大変さを知っているのだろう。しかしエミネムは、50 Centという「リスキーだから降ろされた存在」を迎え入れ、自分で彼の人生を背負ったのである。そう、Dr. Dreが自分の人生を背負ってくれたように。当時の50 Centにとって、「今後何があっても俺が責任をとる」という言葉は非常に大きかっただろう。

もちろん世の中には、ここまでアーティストの人生に干渉するレーベルばかりではなく、アーティストのなかには「あまり干渉しないでほしい」というアーティストももちろんいる。しかしこのようなレーベルの例も世の中に必要なのではないか?とも感じる。Cash Moneyの例などを見ていると「レーベルとはアーティストから搾取をするもの」というイメージを抱くアーティストもいるだろう。そんななかで、このような例は世の中に出す必要があると感じる。

その人のためにリスクをとり、人材の信頼を確保していくことの重要さを教えてくれるエミネムとDr. Dreであった。これはもしかしたらレーベルに限らない話かもしれない。会社でも、仕事でも、上司でも…もしくは国でもそうなのかもしれない。「リスク」とその結果の度合にもよるが、「ネガティブ」を要していない人なんて世の中にいないだろう。その「ネガティブ」を受け入れた上で、恐れずに機会を与えてくれる人が、大きなレガシーを後世に残す人たちなのかもしれない。

Dr. Dreとエミネムが出会ったときのことを語る。HBO新ドキュメンタリーから有名なエピソードを紹介

ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼Playatunerの代表。umber session tribeのMCとしても活動をしている。

いいね!して、ちょっと「濃い」
ヒップホップ記事をチェック!