スヌープ・ドッグがどのように過去を乗り越え、皆に慕われる人になったか。2PacやEazy-Eとの関係から考察
Writer: 渡邉航光(Kaz Skellington)
Uncle Snoop
すっかりベテランとなり、スヌープおじさんと呼ばれるようになったSnoop Dogg(スヌープ・ドッグ)。若手ラッパーを含め皆に慕われている彼であるが、若い頃の彼はキレッキレであった。そんな彼がどのような経験を乗り越え、今のような人格者になったのかを考察したいと思う。
以前書いた「ストレイト・アウタ・コンプトンにて描かれなかったビーフ」という記事を読んで頂きたい。スヌープ・ドッグのキャリアは“Deep Cover”という曲から始まっているのだが、アルバムとしてはじめて参加したのはDr. Dre(ドクター・ドレー)の「The Chronic」である。その「The Chronic」ではいきなり1曲目からEazy-Eをディスり、さらには2曲目の「Fuck Wit Dre Day」でもEazy-Eを含めさまざまなアーティストをディスっている。
しかしスヌープは本当はEazy-Eのことをリスペクトしていたらしい。
➖俺は自分がラップスターになる前はN.W.A.になりたかったんだ。デビュー当時は俺も若かったし、Dr. Dreのサイドを取らないといけなかったから、Eazy-Eをディスったりはしたけど、本当は俺は彼をリスペクトしていたし、憧れていたんだ。
スヌープは実はEazy-Eに憧れていたこと、そしてこの確執を抱えたままEazy-Eが亡くなってしまったことを後悔していると語った。若気の至りもあり、自分にとって憧れの存在を、レーベル同士の政治に巻き込まれてディスったことを後悔し、成長したのである。
2Pac V.S. Notorious B.I.G.でのスタンス
その後の彼のスタンスを見ると、彼はEazyとのできごとから学んだと感じる。デスロウ V.S. バッドボーイのときも彼は、デスロウやシュグ・ナイトの都合に巻き込まれなかった。確かにTha Dogg Poundの「New York, New York」のMVではNYの建物を壊したり、1995年のSourceアワードではNYの観客にたいして「お前らは西海岸にたいして愛はないのか!?」と叫んだりしたが、実際にビギーやP. Diddyにたいしてディスを飛ばしたりはしなかった。むしろ彼はビギーと友達だったと語っている。
しかしこの中立的な立場が2Pacやシュグ・ナイトとの関係性を悪化させたのだ。2Pacはスヌープがビギーと仲良くしていることを良く思っていなかったと語っている。
➖俺はビギーと仲が良かった。
当時ビーフの最中にデスロウでNYに行ったとき、ラジオの生放送で「ビギーとディディーについてどう思う?」って聞かれたから、俺は正直に「あいつらは俺のダチだし大好きだよ」と答えたんだ。それがきっかけで2Pacとの関係が変になった。
その日にデスロウのプライベートジェットでLAに帰るとき、俺は妙な空気を感じたんだ。2Pacに話しかけても彼は俺のことをずっと無視しつづけた。飛行機から降りて、「このあとベガスにいくのか?」と聞いても、「あっちいけ」というようなジェスチャーをされたりしたんだ。
そこから2Pacはベガスに行き、俺はウォーレンGの家にいたら突然「ニュースを見ろ!」と電話がきたんだ。そしたらテレビでは2Pacが撃たれたというニュースが流れていて、急いでラスベガスに向かったんだ。
2Pacとの最後の思い出がこのような悲しいものだったとスヌープはインタビューにて語った。
➖2Pacが病室で寝ているのをみて、俺は泣き、しまいには吐いたり自分でもわけがわからなくなってしまった。最後に謝ることもできなかったし、自分の発言を説明することもできなかった。このような関係で終わってしまったことを後悔するばかりだった。
このようにスヌープは2Pacが亡くなったときも、彼に自分の意思を伝えられなくて後悔したと語っている。Eazy-Eと2Pac、この2人とのできごとから、彼は自分の人生からネガティブを排除すると決めたのかもしれない。その後シュグ・ナイトとビーフすることがあったが、「俺らのようないい大人がネガティブを世間に出すのは良くない」としてストップしている。
スヌープがさまざまなものを許容し、若い世代からもUncle Snoopと呼ばれているのには、このような経験があるからだと感じる。自分の想いを伝えられずに後悔をする、ということがないように、全てを許容する力をつけ、ポジティブを広めることの大切さを悟ったのだと感じる。落ち着いてからのスヌープの行動を見るとそう感じることができる。
ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのアーティスト兼Playatunerの代表。
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