Joey Bada$$の「All-AmeriKKKan Bada$$」のリリックから彼が辿った「大人の階段」を考える【1聴レビュー】

 

 

4月7日

ヒップホップにとって重要な日になるかもしれないと以前記事を書いたが、ケンドリックのアルバムをリリースされなかった。ケンドリックのアルバムはどうやら4月14日にリリースされるのだが、Joey Bada$$の「All-AmeriKKKan Bada$$」はリリースされた。最初は「1stより良くなかったらどうしよう」という不安を持ちながら恐る恐る聞いてみたが、このアルバムが素晴らしかったので、是非チェックしてみてほしい。

以前彼の音楽的な「成長」と「ファン」の反応について語ったが、このアルバムを一聴した率直な印象を語りたい。

 

大人になる


まずこのアルバムをサウンドとコンテンツを聞いたときに感じたのは「2年前に比べて大人になったな」ということであった。実際Joey Bada$$は作品を出す度に「大人」として成長していると感じる。Joey Bada$$の2ndミックステープ「Summer Knights(2013年)」に収録されているDJ Premierプロデュースの曲「Unorthodox」では「金は重要なものではない、持っていても使いはしない。俺にはPro Eraがいるから他の友達なんていらない」と語っている。

その2年後の同じくDJ Premierプロデュースの「Paper Trail$」では同じラインをサンプルし、「金が周りの全てを台無しにした」と語りながらも「俺には$と夢がある。俺が母を貧民街から出れるようにしないと。皆は金が諸悪のルート(根源)だと言うが、俺には金が人々のルート(道)に見える。誰もが支払いを済ませるために金の道を辿るんだ。」と現実を受け止めている。ここで注目すべきなのは「Unorthodox」がリリースされたとき、彼は18歳で「自分と仲間」がコンテンツ中心になっていたが、「Paper Trail$」では社会のシステムと自分が属するコミュニティ全体を見渡し、それを受け止めつつも葛藤していることが見える。楽曲「Like Me」などもまさにそれが垣間見える。

 

All-AmeriKKKan Bada$$


それをふまえた上で、このアルバムはさらに彼の視野が外の世界に向いた作品だと言える。「Devastated」のように自分のカムアップから成功を祝うような曲もあるが、アルバムとしては現代社会にたいする彼のメッセージが詰まっている。その一番わかりやすい例が以前解説した「Land of the Free」であろう。自分たちが置かれている「黒人」としての社会的シチュエーションを観察し、その上で自分の意見を主張しており、まさに「社会人」としてリリックのコンテンツが成長したと感じる。

このアルバムは2Pacの「Me Against the World」に通じるものがある。社会をアグレッシブに批判することもあるが、全体的には「ブルース」のように自分たちの状況を落ち着いた様子で説明をし、主張をしているのだ。楽曲が全体的に落ち着いているのはそのためであろう。「黒人たちが社会的に押さえつけられている!」と解決策のない主張するだけではなく、彼は自分の言葉に責任を持つようになっていると感じる。それはアルバム最後の曲「AmeriKKKan Idol」にてよくわかる。

They want us to rebel, so that it makes easier for them to kill us and put us in jails
Alton Sterlings are happenin’ every day in this country and around the world
The scary part, boys and girls
Is most of these stories don’t make it to the news and reach mass consciousness
I just want everyone to be cautious about how they go about it
Because this is all part of the government’s plan and what they been plottin’

彼らは俺らを刑務所に入れるのを簡単にするために、俺ら反乱してほしがっている
アルトンスターリングのような事件は毎日のように起こっている
怖いのはそれがニュースにはならないから、皆が問題視しないんだ。
行動を起こす皆には気をつけてほしい。
これは政府のプランで全部仕掛けてあることだ。

We have to work together, not only rattlin’ them on a physical plane
But to outsmart them on an intellectual mental level the same
As black men, I think our gangs need to do a better job at protectin’ us
The people, our communities and not assistin’ in destroyin’ them brutally
‘Cause who do we call when the police break the law?
We are so quick to pick up a gun and kill one another
But not quick enough to pick it up and protect each other

皆で協力しないと、物理的に行動を起こすだけでは駄目だ。
知的なメンタリティを持って、彼らを出し抜かないと
黒人に関しては、ギャングは人々やコミュニティを破壊するのではなく、手助けしてアシストする方向で努力する必要がある。
警察が法律を破ったら俺らは誰に頼ればいいんだ?
俺らはすぐに銃を取ってお互いを殺すけど、それを「守る」ために使うことはない。

And I’m tired of singin’ the same old song
People actin’ like this shit isn’t happenin’, it’s downright wrong
Justice won’t be served by a hashtag, and that’s the very reason I ask that
Time to wake the fuck up and do our own research
And not form opinions based on just what we’ve heard
Ameri-K-K-K-a is force feedin’ you lies down your throats

俺はもう同じような曲を歌うのは疲れたよ
人々はこんな問題は起こってないと言うけど、それは間違いだ
正義はハッシュタグで作られるものではない。だから俺は皆に頼む
聞いたことだけで一方的な意見を生成するのではなく、
自分でリサーチをして、「起きる」んだ。
AmeriKKKaは嘘で皆を餌付けをしている。もしそれに気が付かないと俺らは全員終わりだ。

曲のなかで論理的な展開をすることを好まないアーティストが多いなか、Joeyの場合は「聞いたことだけで一方的な意見を生成するのではなく、自分でリサーチをして、起きるんだ。」というメッセージが彼の言いたいことのコアになっていると感じる。実際にリリックとして論理的な展開を提示するのは難しいので、彼は「結論」と「提案」までは深く入っていないが、メッセージの展開の仕方がとても上手いアルバムだと感じた。やはりJoeyは2Pacに影響を受けた「フォロワー」なのである。

メッセージはさておき、個人的には「Rockabye Baby」のScHoolboy Qヴァースと「Ring the Alarm」が好みである。特にこのアルバムではアグレッシブなラップがないので「Ring the Alarm」のNyck CautionとMeechy Darkoの声はとても貴重である。Meechy Darkoの声が入った瞬間、全員をリングの外にぶん投げるかのような迫力がある。その後のNyck Cautionのヴァースはアルバムいちアグレッシブであろう。

ケンドリックのアルバムは4/7に発売されなかったが、このアルバムがとても良かったので、是非聞いてみてほしい。

既存のファンを満足させることが大切?それか新しい試みが大切?Joey Bada$$の活動から教わる

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