ケンドリック・ラマーが「ワック」の定義について語る。彼の発言から見る「Integrity」という単語

 

 

ドープ or ワック

ドープなのかワックなのか?このような議論は世界中のバーバーショップで常に行われている。ドープやワックは個々の定義があると思うのだが、例えばVince Staplesが言っていたように聞いていた時の年齢によっても変わってくるであろう。

リアルタイムで聞いて育った音楽がもたらす効果と「自然な音楽」。Vince Staplesのインタビューから考える。

恐らく自分がどのような理念で生きているかによってこのような「主観」というものは変わってくると思うのだが、様々なアーティストに聞いてみたいことではある。そのアーティストがどのような理念で活動をしていて、何を世の中に対して表現しようとしているのか?アーティストの「ドープorワック」の定義を聞くとなんとなく分かってくる可能性がある。

そんな「ワック感」についてインタビューにて語ったのがケンドリック・ラマーである。楽曲「ELEMENT.」では「ブラックアーティストとワックアーティストには違いがある」と語っている彼であるが、彼のワックの定義とはどのようなものなのだろうか?彼はローリングストーン誌でこのように語った。

 

➖ ELEMENT.では”Black Artists”と”Wack Artists”は違うって語っていますよね?あなたにとってのワックアーティストとはなんですか?

ケンドリック:その質問良いね。俺のワックアーティストの定義か。ワックアーティストは、他人の音を自分の承認欲求のために使う人のことだ。「自分の声」を使うことを恐れて、他人の成功を追いかけるが、自分が持っているものから逃げる人。それがラップゲームの水準を下げるんだ。皆がケンドリック・ラマーになるわけではない。俺みたいにラップしろって言ってるわけではない。単に「自分であれ」って言っているんだ。単純なことだ。

他人の売上枚数やスタイルが気になりすぎて、多くの素晴らしいアーティストたちが堕ちていったり、クリエイティビティを抑制するのを見てきた。結果的にそれはリスナーを抑制することに繋がるんだ。最終的には、これは俺らのためのものではない。朝起きて仕事に行きたくないと思って毎日働いている人たちのためなんだ。

 

「自分が承認されるために、他人の音を使用する人」がワックだと語ったケンドリック。常に自分の声で発信をし、自分が持っているものを向き合う。常に「自分のなかの新しい何か」を探すことを意識している彼らしい解答である。そしてそのクリエイティビティの抑制が業界の水準を下げることになり、リスナーや人々の抑制にも繋がるのだ。さらに人々が抑制することにより、社会全体の水準が下がるということまで繋がっているのかもしれない。さらに彼はこのように語った。

 

ラッパーがゴーストライターを雇うのはどう思いますか?Dr. Dreのゴーストライターをやった経験もあるケンドリック的には。

ケンドリック:実際どの分野に自分を入れているかによるかな。俺は自分を「ベストラッパー」と呼んでいる。もし自分でラップを書いていないのであれば、自分をベストラッパーとは呼べない。もし自分が違うタイプのアーティストで、ベストラッパーになるためのアートに興味がないのであれば、それはそれでいいと思う。素晴らしい音楽を作っていれば。でもベストラッパーというタイトルは、そこにはない。

 

この「ゴーストライター」の件でも、先程のワックアーティストの件でも、共通していることがあると感じる。それは「Integrity(誠実さ/真摯さ)」だ。自分の心、文化、作品に対してIntegrityを持っており、常に自分の「クラフト」に色々な意味で手を抜かない。Alchemistも言っていたことであるが、「こんな感じでいいっしょ」という考えを持たず、きちんと社会/自分/文化に向き合う人なのであろう。様々な方法で他人を出し抜けるこの時代は、彼のような「Integrity」を持った人々が必要なのかもしれない。

さらに「他人の音を自分の承認欲求のために使う人」ということは、先日「アーティストとメディアとリスナーの関係性」という記事で書いた「カルチャーヴァルチャー」という単語にも通じると感じる。「カルチャーヴァルチャー」のようなメディアは実際に世の中に蔓延っている。是非下記も読んで頂きたい。

アーティストとメディアとリスナーの関係について考える。Vic MensaとユーチューバーDJ Akademiksの確執からわかる「恐ろしさ」

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