トークボックスのメロディが最高なヒップホップ曲【Booze House番組リキャップ】
2018年10月から2019年3月末までJ-Waveにて放送された、Playatuner代表Kaz Skellingtonがナビゲーターを務める番組「Booze House」。毎週木曜日26:00〜の30分間となっており、ブラックミュージックをはじめとする洋楽を掘り下げる番組だ。その放送の内容のリキャップを記事化し、実際にどのような内容を話していたのかを紹介したい。今回は2019年3月7日に放送された「トークボックスのメロディが最高なヒップホップ曲」の内容を紹介する。
TALKBOX
この回は、以前Playatunerにて書いた記事「トークボックスのメロディが最高なヒップホップ曲10選!」を元に話した。こちらの記事では10曲紹介したが、放送では時間の都合上4曲を紹介し、トークボックスに対する個人的な感想を語った。
トークボックスとは、楽器の音に、人が喋っているような発音を宿らせるファンキーな手法である。トークボックスはボコーダーと混同されることが多いが、簡単に原理を説明をすると、楽器から出た音を専用のエフェクターとチューブに通し、そのチューブを口に加えることによって、チューブから出ているサウンドに「発音」を宿らせることができるのだ。1970年代から使用され始め、スティービー・ワンダーや「Zapp」のRoger Troutman(California Loveのサビ)に代表される。特にG-FunkはZappからの影響が大きく、今回紹介した2曲目も彼と縁が深い楽曲である。
ヒップホップにおけるトークボックスというと、2PacとDr. Dreの「California Love」を思い浮かべる人も多いだろう。こちらの楽曲もRoger Troutmanが演奏しているメロディであり、彼がいかに後世のブラック・ミュージックに影響を及ぼしたかがわかる。代表例として紹介したので、オンエア曲としては「California Love」は流さなかった。
① Kool G Rap – My Life
リリカルなラッパーとして君臨しているKool G Rapが2002年にリリースした「The Giancana Story」からシングルカットされたこの曲。トークボックスにはG-Wiseが参加しており、ビルボードラップシングルチャートで6位を記録している。注意して聞くと、トークボックスを演奏するときのキーボードの鍵盤の音が聞こえる箇所も含め、好きな楽曲となっている。サンプルの元ネタはFania All StarsのCha Cha Chaであり、こちらの楽曲も名曲なのでチェックしてみてほしい。特に一連の流れから、2:10のトランペットのオクターブが上がる箇所では、説明し難いが何かを懐かしむような感情が浮かんできて涙が出てくる。
② Erick Sermon – Focus feat. DJ Quik & Xzibit
EPMDのErick Sermonと、西海岸OGであるDJ Quikによってプロデュースされた楽曲。2000年にリリースされた「Def Squad Presents: Erick Onasis」に収録されており、サビのメロディはZapp & Rogerの「It Doesn’t Really Matter」の一部分0:48〜をサンプリングしている。
Roger Troutmanがいなければトークボックスはここまで広まっていなかったであろう。DJ QuikはRoger Troutmanが亡くなったときに、自身でトークボックスを演奏した「Rogers Groove」をトリビュートソングとしてリリースしている。こちらの楽曲ではZapp & Rogerの代表曲「More Bounce to the Ounce」のメロディを使用したり、彼のRogerへの想いが伝わってくるので是非そちらもチェックしてみてほしい。DJ Quikはこの曲以外にも多数トークボックスを使用している。
③ Roscoe – I Love Cali (in the Summertime)
Kuruptの弟であり、DPGCのメンバーであるRoscoeの代表曲である。夏にぴったりなトークボックス曲となっており、全体的にカリフォルニアへの愛が伝わってくる。今ではトークボックス界の定番アーティストとなったFingazzがサビを演奏している。
④ DJ AK – Party All Night feat. Tha Dogg Pound
フランスを代表するトークボックス奏者であり、フランスでG-Funkや、モダンファンクな楽曲を作っているDJ AKがプロデュースするコンピレーション・アルバム「Gangsta Zone Party」。このコンピには西海岸のアーティストも多く参加しており、Tha Dogg PoundのDaz DillingerとKuruptやWestside ConnectionのWCなどのベテランも参加している。彼はどちらかというと、ソロの楽曲のほうがトークボックススキルが目立っており、Apple MusicやSpotifyでも聞くことができるので興味を持った方は是非聞いてみてほしい。
今回の感想
Kaz:私はトークボックスが好きなんですけど、楽器の音に人間の発音が宿るとここまで感情が乗るようになるんだな、とトークボックスを聞くと思います。楽器のプレイで魅せる感情と、「人間の発音」という耳に馴染んでいる要素が掛け合わさると、よりエモーショナルになれる。また、発音の仕方、そして言葉の発し方というものが、感情を伝える上でいかに重要か?ということも実感しました。
次回は「プロデューサーにフォーカス!2000年代のサウンドを作り上げたThe Neptunes」の記事を公開する予定だ。
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