ケンドリック・ラマーとリック・ルービンのインタビューからわかる10のこと

Writer: Kaz Skellington


 

2010年代のラッパーで、最も偉大と言っても過言ではないKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)と、ヒップホップビジネスにおいて最も世界を影響したと言っても過言ではない凄腕プロデューサーRick Rubin(リック・ルービン)の少し前のインタビューがとても面白い。公開されたときに取り上げているメディアもいたが、英語を聞き取れない人のためにも、このインタビューから重要なポイントを簡潔に10個要約したので、是非ケンドリックのことを知る情報にしてほしい。

 

1. 常にノートをとっている


リリックに落とし込むため、日々のインスピレーションをノートに書いているとのこと。外に出て、いろいろな人たちに会うことによって湧いてきた感情を書き留めることが、ケンドリックのリリシズムを前に進めている。OutKastのBig Boiの幼少期と通じるものがある。

 

2. リリックに後悔することがある


自分の書いたリリックに後悔をすることがあるとのこと。しかしそれは「これは書かないほうが良かったな」という後悔ではなく、「もっと深く、鋭く刺さるリリックにしておけば良かった」という後悔らしい。ケンドリックの言葉の重さならではの悩みであろう。常に社会問題について考え、人々をリードする立場のケンドリックには「伝えない」という選択肢はないようだ。2016年にケンドリック・ラマーがフィーチャーされた曲からお気に入りのヴァースを5つ解説

 

3. テラスマーティンに自分がジャズ好きだということを自覚させられた


自分の好きなタイプのコード感などの共通点がわからなかったケンドリック。昔のミックステープからEPまで聴き込んだテラス・マーティンが「ケンドリックが選ぶビートはジャズのコードやメソッドが多いね」と言われ、はじめて「俺が好きだったのはジャズなのか!」と気がついた。その後テラス・マーティンとハービー・ハンコックなどを一緒に聞いてテンションを上げたとのこと。

 

 

4. 色々なスタイルをやるのはプリンスの影響


ケンドリックのラップといえば、曲によってかなりスタイルが違う。アグレッシブにかすれた声から、呟くような優しい声まで、デリバリーに多様性がある。そのようなスタイルチェンジは、小さい頃から聞いていたプリンスの影響とのこと。父親がプリンスの大ファンで常に家では流れていたらしい。

 

5. 一番大きいインスピレーションは「子供」


リリックを書く上で一番のインスピレーションになるのは子供だと語る。何故かというと、子供は今世界で起きている問題やシリアスなシチュエーションを理解していないので、「怖いものなんて知らない」と言わんばかりの態度や勇気を見せてくれるからとのこと。特に2歳の姪と話すとインスピレーションが湧いてくるらしい。

6. リリックの明快さはエミネムを研究して得た


エミネムの「Marshall Mathers LP」を聞いているうちに「ここはどうなっているんだろう?」「この言葉の韻はどういう配置になっているのだろう?」と気になり、徹底的に研究した。そしてその研究結果が頭で理解できるとスタジオに入り実践してみた。

関連記事

辞書「Orangeでライムするのは不可能」エミネム「そんなことない」単語Orangeで踏んでいる彼のライム解説

/themify_box]

7. 毎日30分瞑想している


ケンドリックはこの世代の「声」を代表していると言っても過言ではない。そのようなカオスな生活を送っている彼は毎日30分自分の時間を作るらしい。目を閉じ、今自分の周りで起こっていることを考える。音楽をやっていると一年が制作とツアーであっという間に過ぎていき、気がついたら年を取ってしまう。そのため毎日自分の身の回りと今後を考える時間を作るとのこと。

8.「Alright」に納得いくリリックを当てはめるまでに6ヶ月かかった


黒人として、さらにはアメリカに生きるこの時代に生きる若者には「Alright」の存在は欠かせない。混沌、差別、不安が渦巻く世の中を「大丈夫だ」という一言で安心させるこの曲であるが、ケンドリックの心にある気持ちを上手く落とし込むのに6ヶ月もかかったという。あのトラックをプロデュースしたファレル・ウィリアムスには毎回「いつやるの?ラップのせないの?」と聞かれたらしい。エミネムがLose Yourselfにかかった時間よりは短い。

関連記事

2016年にリリースされたプロテスト曲を5曲厳選し、解説。

 

9. ラップをしないアルバムをつくることに抵抗はない


ケンドリックのファンであれば、彼がただのラッパーではないことは知っているだろう。彼自身は自分をラッパーと分析しているが、ミュージシャンとして幅広いことができるということも自覚をしている。しかし私達が実際に彼のラップなしの作品を聞くことの可能性は低いそう。

 

10. 次のアルバムのアイディアはある


常にハードワーキングなケンドリック、既に次のアルバムのアイディアがあるらしい。今年の頭にリリースした「untitled unmasterd」も充分すぎる作品だったが、次のマスターピースを聞けるのが楽しみだ。「アイディアとアプローチの方法は考えてあるんだけど、それが何を世界に提示するのかはもう少し考えたい」とのこと

 

上記の10個の点を読むだけでもいかにケンドリックがアーティストとして頭ひとつ抜けているかがわかる。彼は2pacのようにラッパーの粋を出て、世界に多大な影響を与えるインスピレーションの塊となっている。ちなみにケンドリックは最近さりげなく鼻にピアスをあけたっぽいが、これももしかしたら2Pacの影響なのかも知れない。

いいね!して、ちょっと「濃い」
ヒップホップ記事をチェック!