【代表ブログ】Playatuner代表が選ぶBest of 2018!【30作品】 #booze813
2018を振り返り
今年はPlayatuner的にも、会社的にも色々変動した年となりました。会社を運営していく上での事業形態もガラッと変わったこともあり、夏頃から記事の更新が滞ってしまったことをお詫びいたします。10月にはJ-WaveにてPlayatunerのラジオ番組「Booze House」(毎週木曜日26:00〜)が始まり、今までとは違う媒体でヒップホップについて語る機会が増えました。自分が2年前に作ったメディアがきっかけで、結果的に多くの機会に恵まれた年となりました。今まで私が記事を書いてきたようなヒップホップアーティストの活動が、前に進む糧とインスピレーションとなり、改めて自分は音楽/ヒップホップ/スケートなどの文化に救われた人だと実感した一年でした。来年も文化の当事者として、何かしらの形で貢献できると嬉しいです。2019年には週1本ぐらいのペースで記事を書くことを目標にします。
そんな私が選んだ2018年の30作品はこちらとなりました。一応順位はつけてありますが、気分によって変動すると思うので、なんとなくで見ていただけると幸いです。(バタバタしていたら31日になってしまったので、コメントは短めです。)Kaz Skellington
30. Anderson .Paak – Oxnard
Anderson .Paak待望のニュー・アルバム「Oxnard」。期待が高すぎたため、少し予想を下回った感は否めないがランクイン。サウンド・クオリティという点では、2018年のベストであろう。
・Flying LotusとAnderson .Paakのインタビューからアーティストとして学べる点を解説/考察
・自分が今持っているものを最大限に活用する「イノベーションとヒップホップ」Steve LacyやAnderson .Paakから学ぶ。
29. CZARFACE – MF Doom – Czarface Meets Metal Face
7L & EsotericとWu-Tang ClanのInspectah DeckによるグループCzarface。そんな彼らとMF Doomのコラボアルバムは近年のアンダーグラウンドヒップホップに多いグライミーなサウンドでありつつも、シングルカットされた「Bomb Thrown」のような一度聞いたら忘れられないビートもあり、ランクイン。
・MF Doomがマスクをつけている理由を語る。その理由から考える「悪役キャラ」とは?
28. Planet Asia – The Golden Buddha
カリフォルニア州フレズノ出身のアンダーグラウンド・レジェンドPlanet Asia。今年も含め、多くの作品をリリースしてきたベテランであるが、「The Golden Buddha」はMCとして刺激を与えてくれる作品であった。
27. Joey Purp – QUARTERTHING
チャンス・ザ・ラッパーも所属するシカゴのSavemoneyクルーの一員。そんな彼のデビュー・アルバムは次世代のシカゴヒップホップを感じさせるものであった。
26. J. Cole – KOD
もはや説明は不要であろうJ. Cole。Best of 2016には彼の「4 Your Eyez Only」を1位に選んだのもあり、自分のなかで相当期待が高まっていた作品。特にアルバムのラスト・トラックに込められたメッセージは必聴。
・J. Coleの「KOD」制作秘話から見るインスピレーションの源泉。ケンドリックからの受けた影響と「瞬間の熱」を捉えること
・J. Coleのドキュメンタリー「4 Your Eyez Only」が素晴らしい。様々な地域をフィーチャーした「現実」を紹介
25. Denzel Curry – TA13OO
「Ultimate」の頃も好きであったが、アーティストとして大きく成長をしていることが伝わってきたアルバムであった。自分の人生のネガティブや恐怖を作品に昇華させるスタイルは好みであり、ラップのスタイルも少しケンドリックを意識しているようにも聞こえる。
・ライブではラッパーの生の声を聞きたい?「ライブで曲を流すだけでラップをしなくてもいい風潮」についてDenzel Curryの発言から考える
24. Kali Uchis – Isolation
フジロックにてパフォーマンスも見ることができたKali Uchis。ボーカル、キーボード、ベース、ドラムというシンプルな編成にも関わらず非常にパワフルなステージが印象的であった。
23. Atmosphere – Mi Vida Local
ミネアポリスのベテランヒップホップ・デュオAtmosphereの新作。今作はバンドサウンドを取り入れたものが多く、90年代のグランジやニュー・メタルを彷彿とさせる作品となっていた。ベテランならではの人生経験をラップしたものが多く、ランクイン。
22. Earl Sweatshirt – Some Rap Songs
Tyler, the Creatorの弟でもあるEarl Sweatshirtの待望の新アルバム。全曲短いため、詩集のような流れで聞くことができる。
21. Curren$y & Freddie Gibbs & The Alchemist – Fetti
ニューオーリンズのインディペンデントアーティストのCurren$yと、ディープな声が印象的なギャングスタ・ラッパーのFreddie Gibbs。その二人のアルバムとThe Alchemistがプロデュースしたとなると、それは良いアルバムになるであろう。
・凄腕プロデューサーAlchemistの発言がインスピレーショナル。彼の理念から見る「スランプ」の正体
・「メジャーレーベルから呼び出されたと思ったら◯◯だった」Freddie Gibbsとマネージャーのインスピレーショナルなお話
20. Black Thought – Streams of Thought. Vol. 1
自分的にはNo. 1リリシストの座に君臨するThe RootsのBlack Thought。EPなので入れるか迷ったが、ランクイン。楽曲にサビを持たせず、ひたすらワードプレイと、大人ならではのリリックを披露するMCとしての姿勢に感服しランクイン。
・46歳ベテランになっても最強のラッパー。多くのことを証明したBlack Thoughtのフリースタイルの一部を解説
19. Mac Miller – Swimming
今年亡くなってしまったMac Miller。この才能を失った悲しみもあり、一時期はこのアルバムを聞くことができなかった。以前「ドラッグ漬けのイケてるラッパーより、ダサい白人ラッパーであることを選ぶ」という発言とともに、ドラッグから抜け出したと宣言していたが、まさかこの若さで他界してしまうとは。
・Mac Miller「自分に言い訳をするのを辞めた」ドラッグの闇から抜け出した彼の成長2017年
・Wiz KhalifaやMac Millerを発掘したID Labsが若手プロデューサーたちにアドバイス。音楽業界と未来のワクワクへ投資する力。
18. Khruangbin – Con Todo El Mundo
テキサスのバンドでありつつも、70年代のタイの音楽などに影響されているバンド、クルアンビン。タイ語で「飛行機」という意味であるが、そんな名前にふさわしく世界中の音楽に影響されていることがひしひしと伝わってきたアルバムであった。この「Con Todo El Mundo」とは「世界の全て」という意味であり、「私のことをどれぐらい愛している?」と祖父に聞かれたメンバーLaura Leeが「おじいちゃんが私の世界の全てだよ」と答えたことが由来となっている。
17. Nao – Saturn
2015年ぐらいから注目していたNaoであるが、彼女の新アルバムSaturnは素晴らしい内容であった。インディペンデントアーティストとして、自分のレーベルも運営するなか、今年はWWWXにて来日公演を行った。その際にインタビューをすることができたので、近々公開をしたいと思う。
16. Royce Da 5’9 – Book of Ryan
デトロイトのベテランRoyce Da 5’9のアルバム「Book of Ryan」。小さい頃から今までの自分の成長、それに伴う感情の変化、父親との関係、自分が父親となった経験などを赤裸々に語ったこのアルバムは、彼の集大成とも言えるだろう。エッセイのように書かれたアルバムでありつつも、上記Caterpillarのようにアグレッシブなサウンドもあり、バランスの取れた作品となっている。
・米ヒップホップ業界における「Trash(ゴミ)」という表現。Royce Da 5’9″とDJ Premierが批判する時の言葉遣いの重要性について語る。
・Royce Da 5’9″が「Sheeple」という言葉について語る。「群れから外れないように馴染むということが最も重要になってしまっている」
15. Brandon Coleman – Resistance
Brainfeederに所属するLAの新世代キーボーディストBrandon Coleman。そんな彼のブギーな新作は今年何度も聞いた作品であった。
14. Kids See Ghosts
カニエ・ウェストとKid CudiによるKids See Ghosts。色々実験的でありつつも、さすがカニエ・ウェストと言いたくなるようなアイディアとビートもあり、Kid Cudiのメロディセンスも光っている作品。
・9th Wonderが語るカニエ・ウェストのエピソードから学べること。「観客からは拍手もなかった」
13. Clown Core – Toilet
Twitterにて流れてきたことにより知ったピエロの二人組。全然ヒップホップではないので恐縮だが、メタルからジャズまで全部ごちゃまぜのカオス感が衝撃すぎてかなり聞いた作品であった。中の人物が誰なのかは内緒である。
12. deM atlaS – Bad Actress
Rhymesayersの若手であるdeM atlaS。日本だとまだあまり名前を聞かないが、この作品も衝撃を受けた。ロックやブルースにヒップホップのビート感をもたせた雰囲気を纏っており、その上で披露するラップも非常に上手い。アルバム全体的にオススメできる作品である。
11. Phonte – No News is Good News
ノース・カロライナのベテランであり、Little Brotherの一員であるPhonte。このアルバムは大人になった自分と向き合いつつも、自分の脆弱性を惜しみなく表現として昇華している。「自分の父親が正しかったと気がつく頃には、自分のことを間違えていると指摘する息子がいる」というフレーズが非常に印象に残っている。
・自分の「脆弱性」を表現し、人生に大きな影響を与えるリリシストPhonte。リスナーとリリックの共鳴から考える彼の「仕事」
10. Nipsey Hussle – Victory Lap
今まで数々のミックステープをリリースしてきたが、2018年に待望のデビュー・アルバムをリリースしたNipsey Hussle。もちろん彼の声やフローも好きであるが、このアルバムにて彼が披露する「人生を前に進む糧」となるエピソードにグッときた。自分の人生が上手くいってないときに、彼がのし上がってきた「ゲーム」を聞いて救われた人は多いだろう。彼の「インディペンデント・ハッスル」を紹介した記事もオススメである。
・Nipsey Hussle「俺らはストリートのサンリオになる」彼のビジネスセンスとコンテンツ・クリエイターとしての戦略から学ぶ
・ミックステープとアルバムの違い?Nipsey Hussleが今までアルバムではなくミックステープをリリースし続けた理由を語る。
9. Jorja Smith – Lost & Found
今年のサマーソニックで見ることができたJorja Smith。なんとなくライブにまだ慣れていない感じもありながらも、素晴らしい歌声を披露してくれた。彼女のデビュー・アルバムとなるこのアルバムであるが、10代の頃に書いたであろう等身大の曲がグッときたのでランクイン。80年のポップス、そして90年代後半のR&Bを彷彿とさせるようなキャッチーなメロディは、一度聞いたら耳から離れないものが多く、個人的にも好みであった。特に「Teenage Fantasy」にて彼女が歌う、10代の頃の「恋に恋をしている未熟さ」には共感する人は多いだろう。「将来を覗いたときに、あの青年と一緒にいる自分が想像できているのか?」と父親に言われた、というリリックが印象深い。
8. Lil Wayne – Tha Carter V
Birdmanとの確執により長年リリースされてこなかったLil Wayneの「Tha Carter V」。7年ぶりのリリースとなった今作品であるが、正直「あまり良くなかったらどうしよう」という不安もあった。しかしいざリリースされてみたら、Wayneのワードプレイも炸裂で安心する内容となっていた。アルバムの前半にハイライトが詰まっており、正直後半はあまり好みではなかったが、2018年かなり聞いたアルバムであったので上位にランクイン。
・Lil Wayneが地元ニューオーリンズの子供たちのためにやっていることが素晴らしい
・Tyler, the CreatorのドキュメンタリーにてLil Wayneが語ったことが超インスパイアリング
7. JID – Dicaprio 2
Best of 2017にもJIDの1stアルバムを入れたのもあり、非常に楽しみにしていたJIDの2ndアルバム「Dicaprio 2」。前作のほうが全体的な雰囲気も含め好みであったが、今作はJIDのアーティスト/MCとしての成長を見ることができた作品であった。リリシストとしても、考えないと理解ができないようなコンプレックスなワードプレイを得意としつつも、6lackやElla Maiをフィーチャリングした「Tiiied」のようなメロディアスな曲もやってのける彼のスキルの多様性は素晴らしい。声もフローもオリジナルであり、今最も好きな若手ラッパーのうちの一人である。
・Playatuner代表が選ぶ2017年のベストプロジェクト10位〜1位!
6. Mitski – Be the Cowboy
ヒップホップではないが、このアルバムは衝撃を受けたのでランクイン。Mitskiは小さい頃に母親が持っていた70年代の日本のポップスを聞いていたこともあり、彼女の歌声やメロディからはその影響も伝わってくる。その哀愁感のある歌声に夢中になっていたら、アグレッシブなギター/ベースの音が入り、ロックファンでもある自分の感性にグッと刺さる。そんなアルバムであった。
5. Leon Bridges – Good Thing
2019年のグラミーにもノミネートされたこのアルバム。ソウル/ファンク、そして60’sのブルース色も伝わってくる素晴らしいアルバムであり、新世代のネオ・ソウルアーティストとも言えるLeon Bridges。ネオ・ソウルと言いつつも、ソウル/ジャズをヒップホップとして昇華したソウルクエリアンズやJ Dillaとは違い、昔のソウル・ミュージックをそのまま現代に復活させたような作風であった。お気に入り曲は「If It Feels Good」であり、こちらのメインとなるギター・カッティングのリフは、The Whispersの「It’s a Love Thing」を彷彿とさせるダンサブルなものとなっていた。また、James Brownもジョージ・クリントンのようなファンク・パイオニアにも共通することではあるが、歌にも言葉遊びやウィットに富んだ韻の踏み方が組み込まれており、その辺も含めて昔のファンク・ミュージックのようなヴァイブスを感じることができた。
4. Louis Cole – Time
Louis Coleはプライベートでも自分にとっては兄貴のような存在であり、彼の助言には何度も助けられた。会って話す度に、常にポジティブな気持ちにさせてくれる彼であるが、実は私が人生ではじめてインタビューしたのも、彼とGenevieveが組むKNOWERである。以前からBrainfeederとの関わりや、当アルバムに収録されている楽曲も聞いていたため、やっとBrainfeederからリリースされたこのアルバムの世界的な反響を見て、改めて感動をした。音楽的にも素晴らしく、Louis Coleという天才と共演できたことを誇りに思う。
・KNOWER来日スペシャルインタビュー【LA発超絶エレクトロ×ジャズファンク】
・水面下で帝国を築き上げるアーティストたち。「自分で全部やる」というパワーと美学
3. Travis Scott – Astroworld
今年最も話題になっていたアルバムの一つである「Astroworld」。各方面の素晴らしいミュージシャンが参加しているのもあり、ヒップホップの新しい形を見せてくれたアルバムでもある。「前衛的なことをやっているヒップホップ」というと、音色だけ攻めていて、他は極めて普通なものが多いなか、このアルバムは今後のヒップホップサウンドの方向性を提示してくれたようにも感じる。
2. Pusha-T – Daytona
恐らく多くの人のベスト・アルバムとなっているだろうPusha-TのDaytona。個人的にはカニエ・ウェストのG.O.O.D. Musicの連続リリースのなかでは最もクオリティが高かったと感じている。Drakeとのビーフも盛り上がり、Pusha-Tは今年のMVPの一人と言っても過言ではないだろう。ドラッグディーラーからレーベルのCEOになった彼の「ラッパーからトラッパーになったやつらはもう俺らになれない。でもトラッパーからラッパーになったやつはPuffになれる」という台詞は真理である。レーベルのCEOとしての彼の記事もおすすめである。
・カニエ・ウェスト創業のレーベル「G.O.O.D. Music」CEO、Pusha Tが語る「アーティストレーベル」の素晴らしさ
1. Evidence – Weather or Not
Playatunerを読んで頂いている方であればおなじみのEvidence。自分の経験と心を、音源というグラスに血を注ぐかのように赤裸々に語ったこのアルバムは、私自身の表現スタイルにも大きく影響している。自分の弱みや痛みを隠しがちなこんな世の中だが、そんな弱みを「表現」へと昇華させることによって、前に進むことができるということを教えてくれた作品である。「自分の弱みを見せることは恥ずかしい」という価値観もあるかもしれないが、それを素直に語ることにより、同じ弱みに悩んでいる人々の痛みを和らげることができるEvidenceは、本当にかっこいい「アーティスト」だと感じた。彼についてはPlayatunerのラジオ「Booze House」でも語ったので、そのリキャップ記事も是非読んでほしい。
・LAのアンダーグラウンド・ベテランEvidenceの「人生と愛と死」
2018年の30枚はこのような結果となりました!来年もPlayatunerを何卒よろしくお願います。
ボーナス・トラック:HIP HOP DNAさんにて2018年の総括記事を書かせて頂きました!
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